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8.極道ということ
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「とりあえず小恋をお願いします」
アキラさんに、深く頭を下げた。
「ああ、わかった。心配するな」
「すみません。やつらに小恋の声を聞かれてしまいました」
「顔は?」
「見られていません」
「そうか。とにかく体を大事にしろ。小恋は俺が守るから」
言いたいことは山ほどあっただろうに、アキラさんは言葉を飲み込んだようだった。
あの時もし、俺がいなかったら。疑いもせずに小恋が玄関を開けてしまっていたら。
そう考えただけでゾッとするが、それはアキラさんも同じだろう。
波立つ気持ちのままため息をついた時、寝室の扉がノックされた。
東雲が顔を出す。
「少しわかってきました」
マンションの周辺には防犯カメラが随所に設置してある。管理会社のカメラだけではなく、こんな時のために俺たちがつけたものだ。
車には見張りがひとり、襲ったやつらはふたり。計三人。そこまではすぐにわかった。
「探ってみましたがどこの組にも所属はしていないですね。やはり素人の仕業でしょう。車は盗難車、乗り換えた先以降は調査中です」
「そうか」
明日一日だけ会社を休む。
幸いそのまま土日を迎えるからなんとかなるだろう。主治医は最低でも五日は休んだほうがいいと言ったが、三日も休めば十分だ。あまり動かなければ傷口が開いたりはしない。
「パーティまでには、とっ捕まえたいな」
「ええ」
創立記念パーティの妨害が目的かもしれませんねと言ったのは東雲だが、俺もそう思っている。
一週間後、開催する会社の創立二十周年の記念パーティで、俺が副社長に就任する発表をする予定になっている。
恐らくはそれを阻止したい何者かの仕業。
そう考えるのが妥当だ。
ただ、プロの仕業ではないだろう。
油断したせいで切られはしたが、動きも鈍かったしナイフの使い方もやり口からみても中途半端だった。
白竜の若頭、渡利が言っていたカタギのクズだろうか。
だとしたらそれは誰だ。社長の座を狙う常務? それとも同業他社のやつ?
また扉がノックされて八雲が顔を出した。
「櫻子さんとアカリさん、とりあえず変わった様子はないそうです」
あのふたりは、俺の女だと思われている。狙われる可能性は小さくない。
「そうか。とりあえず護衛は強化しておくことにして、あとは……」
脳裏に浮かぶのは小恋。
「森村さんについてはアキラさんにお任せするとして」
さらりと東雲にかわされた。
まあ実際その通り、アキラさんに任せるのが最良の選択に違いないが……。
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