龍崎専務が誘惑する

３．飼うならかわいい猫がいい

１１

「なんだ。お前知らないのか。俺の龍みたいのがアキラさんの背中にもあるのに」

　ひぃぃぃ。う、嘘でしょ、嘘だと言って。

　若頭って幹部だよね？
　少なくとも私が見たヤクザ映画ではそうだった。

　そんなの聞いてないよ。実彩子ちゃんが極妻？
　アキラ叔父さんの裸の背中なんて見たことないし！

「そうだ。言い忘れていた。最後に忠告しておく」

　え、な、いったいなに。今度はなんなのよ。

　龍崎専務はにやりと口角をあげて私に近づいてくる。

　まだなにか仰天の告白があるの？

　ドキドキしながらトレイを胸もとにあてて強く抱えると、私の目の前まで来た龍崎専務は、鷹のような鋭い目をして私をジッと見た。

「な、なんでしょう……？」

　思わず一歩下がった。

　まさか、またキスされちゃうの？

　キュッと目を閉じてきつく唇を噛むと、トントンと鼻先を叩かれた。

　そっと瞼を上げると、かち合った専務の目もとが細くなる。

「俺に係わるな。近づくな。わかったな」

「は、はい」

「わかったら行っていいぞ。ほら」

　肩をつかまれてくるりと後ろを向かされ、ポンと扉の外に追い出された。

「え？」

　なんなの、いったいなんなのよぉ！

　じゃあなんでさっきは、キスしたのよお？