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回復
友人に連れられて
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何をするでもなく、ただゲームをしながらぼーっとしていたら、いつの間にかお母さんが帰ってきてたらしい。言われるがままに料理を作って二人で食べた後、今日のことを考える間もなく寝入ってしまった。久しぶりに泣いたのが疲れを催したのかもしれない。
「だからって、こうなるとは思わないじゃん!」
昨日の自分を叱りながら、私は学校へ行くための支度をしている。今更のように課題を見てみても何一つ終わっていないし、もはや受け取っていない問題集の課題もあったけど、それはまだよかった。
まだ午前五時で、こんな時間帯に集合住宅で洗濯機を回すのは非常識だということは理解している。それでも回しているのは、ほかでもない今日の制服が足りなかったからだ。私は夏服への衣替えの季節になる前に不登校になってしまったので、勝ったままの夏服を洗濯してなかったので、まだ糊が付いているようだった。
お母さんが起きないか心配したけど、昨日の仕事の疲れで寝入ってる。おかげで私は自分の支度に集中することができた。
高校に必要なものを二人にチャットで聞いてみたけど返信がない。思いつく限りに必要なものをリュックに詰め込む。そのほとんどが埃をかぶっていたので、いちいちティッシュで拭いたが、カップ麺の汁か何かの汚れが付いているのもあった
。掃除ついでに、手当たり次第に教科書を詰め込む。
そもそも夏休み明けの学校って何をするんだろう。中学の頃は、大体ただの全校集会の後に課題を提出するだけで、授業自体はないことが多かった。けど、高校になってからは、夏休み明けを経験していないので想像もできない。
「はぁ」
ふと高校の夏休み前にテストがあったことを思い出して気が重くなった。一学区の中間テストは受けたけど、あまりにひどい点数で先生から叱られていた。期末で挽回しないと成績が足りなくなるといわれていたのに、期末テストを受けることさえしなかった。こんな状況で先生に会いに行ったらどんな顔をされるだろう。
ぴーぴーぴー
気の抜けるような音で、洗濯機が乾燥の終わりを告げた。ただ、気体はいずれというか、案の定というか、安物の洗濯機の乾燥は不十分で、軽くドライヤーまだ全然湿っぽかった。時間がないので、ハンガーにかけてドライヤを当てて水気を飛ばしてみる。
時計を見るともう六時過ぎだった。もう三か月も前だから、学校に行く日の時間感覚が失われてしまっているので、遅刻だけしないように少しでも急ぐしかない。その考えに突き動かされるままに、朝食のパンにハムを乗せて口に突っ込む。
まだお母さんは起きてこない。さすがにそろそろ起こさないと仕事に遅刻するだろう。我が家の唯一の収入源なので、遅刻で減給や懲戒されたらたまったもんじゃない。鬱屈ではあったけど、お母さんをたたき起こすと、案の定怒声を浴びせられる。
「今何時だと思ってんの」
「もう六時過ぎてるよ」
あきれたように声をかけて、布団をはがす。無理やりにリビングに連れてきて、朝食を皿にのせておく。食い意地だけはあるから、放っておけば勝手にご飯を食べるだろう。
私は自分の部屋に戻って、もう少しセーラー服を乾かしながらスマホを眺める。ちょうどその時、美雪から連絡があった。
「今日は授業はないし、あなたは課題もいらないから、筆記用具さえ持ってくれば十分。」
たったそれだけでいいんだ。セーラー服付きのハンガーを窓際にかけると、リュックの中身を整理する。せっかく詰め込んだ教科書や白紙の課題を取り出してちゃぶ台に乗せる。埃がふわっと巻き上がってむせそうになった。
言われたとおりに筆記用具だけ入れたリュックは予想以上に軽かった。ほかの人はきっともっとたくさんの荷物を持ってきているのに、不登校の私がと思うと申し訳なくなる。とはいえ、何か入れていこうと思うものもない。
制服を確認すると少し湿っぽいけれど、気にならないぐらいになっていたので、ハンガーから外す。夏物のセーラー服にそでを通そうとして、ふっと高校受験のころが思い起こされた。この制服を着るために人生で最も努力したんだった。
スカートも履いて、初めての夏服を身にまとう。思った以上にセーラー服は軽くて、少し不安になった。半袖だから腕があまり隠せていないこともあってちょっと恥ずかしくなった。気持ちを落ち着かせるために、家を出るまでは手近にあったパーカーを羽織っておくことにした。
リュックを背負って見ると、本当に女子高生らしくなっている。昨日までランカーの人たちと一緒にネットゲームにのめりこんでいたとは思えない豹変ぶりに驚く。
はたと気が付いて机の引き出しを開けると、数月近く使っていないメイク道具が出てきた。時間的にはメイクする時間はあるけれど、ずっと使ってないから少し不安になる。それに、メイクの腕も落ちているはずだ。けど、すっぴんで高校に通えるほどに自信なんてない。まあ、引きこもりにはそのほうがお似合いかもしれないけども。
迷った挙句私は化粧下地とファンデーションだけ軽くして、せめてきれいな肌に見えるようにだけした。メイクをしてみて思ったのは、意外にも私の肌が荒れていないことだ。あれだけカップラーメンとお菓子ばかりの生活をしていたのに、ニキビとかはない。おかげでメイクがしやすかった。
ついでに、中学時代の残りの日焼け止めを全身に塗ると、少しだけ自身が出てきた。鏡で自分の姿を見て、これなら高校に行っても大丈夫かなと思えた。
ちょうどその時、私の携帯に連絡があった。確認してみると、美雪からのメッセージだった。
「ちゃんと準備できた?私たちはもうすぐ着くから、何か困ってたらいいなさい」
口調こそきついものの、私のことを心配してくれているのがわかる文章にうれしくなる。彼女らがいるから、私も頑張らないとと思って、「大丈夫だよ、ありがとう」と返信した。ついでに、お母さんにも報告する。
「私準備できたからそろそろ行くね」
「あんた夕ご飯はどうすんの?」
久しぶりの登校をほめるでも、応援するでもなく自分のご飯のことしか興味がないらしい。まあ、お母さんだから仕方ないか。
「帰りに買ってくるから」
そういうと、私は自分の部屋をもう一度見まわす。ちゃぶ台に乗っている大量の教科書や課題が目に付くけれど、おいていく。ほかに必要なものがないかを確認して、リュックの中に必要なもの、特に財布と学生証が入った定期入れ、そして筆記用具が入っているか確認する。
「これで大丈夫」
全部入っていることを確認すると、玄関に向かう。ちょうどその時インターホンが慣らされた。私はその相手を確認することもなく、ローファーのかかとを踏み鳴らしながらドアを開けていった。
「お待たせ」
扉の向こうにいる桃花と美雪に声をかけると、美雪は何も言わずに優しく微笑んだ。桃花は私の頭に手を伸ばすとぐしゃぐしゃと髪の毛をかき回して言う。
「ちゃんと準備できてよかった~。本当は二人で準備する予定でこんな朝早く来たんだよ」
「え、そうなの?てか、髪の毛ぐしゃぐしゃになるからやめて」
これが普通の時間だと思っていて気が付かなかった。桃花が髪の毛から手を離したので、私は手櫛で多少髪の毛を整える。私の疑問には、桃花ではなく美雪が答えた。
「あなたは私たちに心配をかけないようにする癖があるから、まだ準備できていないと予想してたのよ。ちゃんと準備できててよかった」
「お母さんよりお母さんらしいこと言うよね」
今日の私のお母さんの言動と比較しながら言う。本当に彼女らのほうが私のお母さんとお父さんをやってくれているようだ。
開けっ放しにしていたドアに向かって
「行ってきます!」
というと、力いっぱいドアを閉めた。美雪から怒られてしまったけど、なんとなく後ろ暗い気持ちは家にしまい込んだような気分がして、気持ちがよかった。
久しく見る朝の太陽はまぶしかったけれど、私が歩く道を照り輝かせてくれている。十人十色の生活が密集している団地特有の埃っぽさは朝日に照らされて多少はきれいに見えるような気がした。
三人で団地を抜けると、急に桃花が言った。
「今日は時間もあるんだし、晴飛が道案内してよ。道を思い出すいい機会になるでしょ」
桃花の提案に、私は即答で無理と答えたけれど、美雪が横から口をはさんだ。
「それいいんじゃないかしら。これまで見えていなかった風景が見えるかもよ」
まさかの美雪の賛成で、私が道案内することになってしまった。もともと歩きなれていない道だから、不安しかない。朧げな記憶と、三人で立ち寄った思い出を頼りにして、道を少しずつ進んで行く。
すると不思議なことに、見たことあるような景色が現れては進み、また見覚えのある街並みに出会うということを繰り返した。だんだん道順を思い出しながらも、これまで気にも留めなかった町のお店にも視点が止まる。
だんだんと普通の街並みを抜けて、学生街と言える風景が現れた。三人で何度も立ち寄った唐揚げ屋さんや、ちょっとおしゃれなカフェに小物屋さん、スポーツ用品店など小さいながらに必要なものが買いそろえられる便利な商店街に着いた。
ここまで来たら大丈夫と思うと、急に肩の力が抜けた。携帯で時間を見ると、もう八時手前になっていて、約一時間近く歩いていたと気づく。そんな私の右肩に誰かの手が置かれた。
「お疲れ様」
優しい美雪の声に続くように、今度は左肩がバシッとたたかれる。
「ちゃんと道覚えてるじゃん。さすが晴飛」
「ありがと」
二人にそう返しながら、歩いていてる最中は二人のことを一切に気にしていなかったことに気が付いた。どこまでも私のことを考えてくれる優しい友人二人がいることが、私にとっての宝だろう。
私がほっとしていると、桃花が焦ったように声を出した。
「って、もうこんな時間じゃん。急ごっか」
と言って駆け出した。確かに周りの生徒たちも小走り気味に校門に向かっている。
「行こっか」
美雪に声をかけると、こくりとうなずいて一緒に小走りする。以前ならこの三人で私が一番体力があったけれど、もう二人に追いつけるのか怪しくなっていた。それでも、三人で学校に向かって急ぐだけでも青春の一コマのような気がした。
「だからって、こうなるとは思わないじゃん!」
昨日の自分を叱りながら、私は学校へ行くための支度をしている。今更のように課題を見てみても何一つ終わっていないし、もはや受け取っていない問題集の課題もあったけど、それはまだよかった。
まだ午前五時で、こんな時間帯に集合住宅で洗濯機を回すのは非常識だということは理解している。それでも回しているのは、ほかでもない今日の制服が足りなかったからだ。私は夏服への衣替えの季節になる前に不登校になってしまったので、勝ったままの夏服を洗濯してなかったので、まだ糊が付いているようだった。
お母さんが起きないか心配したけど、昨日の仕事の疲れで寝入ってる。おかげで私は自分の支度に集中することができた。
高校に必要なものを二人にチャットで聞いてみたけど返信がない。思いつく限りに必要なものをリュックに詰め込む。そのほとんどが埃をかぶっていたので、いちいちティッシュで拭いたが、カップ麺の汁か何かの汚れが付いているのもあった
。掃除ついでに、手当たり次第に教科書を詰め込む。
そもそも夏休み明けの学校って何をするんだろう。中学の頃は、大体ただの全校集会の後に課題を提出するだけで、授業自体はないことが多かった。けど、高校になってからは、夏休み明けを経験していないので想像もできない。
「はぁ」
ふと高校の夏休み前にテストがあったことを思い出して気が重くなった。一学区の中間テストは受けたけど、あまりにひどい点数で先生から叱られていた。期末で挽回しないと成績が足りなくなるといわれていたのに、期末テストを受けることさえしなかった。こんな状況で先生に会いに行ったらどんな顔をされるだろう。
ぴーぴーぴー
気の抜けるような音で、洗濯機が乾燥の終わりを告げた。ただ、気体はいずれというか、案の定というか、安物の洗濯機の乾燥は不十分で、軽くドライヤーまだ全然湿っぽかった。時間がないので、ハンガーにかけてドライヤを当てて水気を飛ばしてみる。
時計を見るともう六時過ぎだった。もう三か月も前だから、学校に行く日の時間感覚が失われてしまっているので、遅刻だけしないように少しでも急ぐしかない。その考えに突き動かされるままに、朝食のパンにハムを乗せて口に突っ込む。
まだお母さんは起きてこない。さすがにそろそろ起こさないと仕事に遅刻するだろう。我が家の唯一の収入源なので、遅刻で減給や懲戒されたらたまったもんじゃない。鬱屈ではあったけど、お母さんをたたき起こすと、案の定怒声を浴びせられる。
「今何時だと思ってんの」
「もう六時過ぎてるよ」
あきれたように声をかけて、布団をはがす。無理やりにリビングに連れてきて、朝食を皿にのせておく。食い意地だけはあるから、放っておけば勝手にご飯を食べるだろう。
私は自分の部屋に戻って、もう少しセーラー服を乾かしながらスマホを眺める。ちょうどその時、美雪から連絡があった。
「今日は授業はないし、あなたは課題もいらないから、筆記用具さえ持ってくれば十分。」
たったそれだけでいいんだ。セーラー服付きのハンガーを窓際にかけると、リュックの中身を整理する。せっかく詰め込んだ教科書や白紙の課題を取り出してちゃぶ台に乗せる。埃がふわっと巻き上がってむせそうになった。
言われたとおりに筆記用具だけ入れたリュックは予想以上に軽かった。ほかの人はきっともっとたくさんの荷物を持ってきているのに、不登校の私がと思うと申し訳なくなる。とはいえ、何か入れていこうと思うものもない。
制服を確認すると少し湿っぽいけれど、気にならないぐらいになっていたので、ハンガーから外す。夏物のセーラー服にそでを通そうとして、ふっと高校受験のころが思い起こされた。この制服を着るために人生で最も努力したんだった。
スカートも履いて、初めての夏服を身にまとう。思った以上にセーラー服は軽くて、少し不安になった。半袖だから腕があまり隠せていないこともあってちょっと恥ずかしくなった。気持ちを落ち着かせるために、家を出るまでは手近にあったパーカーを羽織っておくことにした。
リュックを背負って見ると、本当に女子高生らしくなっている。昨日までランカーの人たちと一緒にネットゲームにのめりこんでいたとは思えない豹変ぶりに驚く。
はたと気が付いて机の引き出しを開けると、数月近く使っていないメイク道具が出てきた。時間的にはメイクする時間はあるけれど、ずっと使ってないから少し不安になる。それに、メイクの腕も落ちているはずだ。けど、すっぴんで高校に通えるほどに自信なんてない。まあ、引きこもりにはそのほうがお似合いかもしれないけども。
迷った挙句私は化粧下地とファンデーションだけ軽くして、せめてきれいな肌に見えるようにだけした。メイクをしてみて思ったのは、意外にも私の肌が荒れていないことだ。あれだけカップラーメンとお菓子ばかりの生活をしていたのに、ニキビとかはない。おかげでメイクがしやすかった。
ついでに、中学時代の残りの日焼け止めを全身に塗ると、少しだけ自身が出てきた。鏡で自分の姿を見て、これなら高校に行っても大丈夫かなと思えた。
ちょうどその時、私の携帯に連絡があった。確認してみると、美雪からのメッセージだった。
「ちゃんと準備できた?私たちはもうすぐ着くから、何か困ってたらいいなさい」
口調こそきついものの、私のことを心配してくれているのがわかる文章にうれしくなる。彼女らがいるから、私も頑張らないとと思って、「大丈夫だよ、ありがとう」と返信した。ついでに、お母さんにも報告する。
「私準備できたからそろそろ行くね」
「あんた夕ご飯はどうすんの?」
久しぶりの登校をほめるでも、応援するでもなく自分のご飯のことしか興味がないらしい。まあ、お母さんだから仕方ないか。
「帰りに買ってくるから」
そういうと、私は自分の部屋をもう一度見まわす。ちゃぶ台に乗っている大量の教科書や課題が目に付くけれど、おいていく。ほかに必要なものがないかを確認して、リュックの中に必要なもの、特に財布と学生証が入った定期入れ、そして筆記用具が入っているか確認する。
「これで大丈夫」
全部入っていることを確認すると、玄関に向かう。ちょうどその時インターホンが慣らされた。私はその相手を確認することもなく、ローファーのかかとを踏み鳴らしながらドアを開けていった。
「お待たせ」
扉の向こうにいる桃花と美雪に声をかけると、美雪は何も言わずに優しく微笑んだ。桃花は私の頭に手を伸ばすとぐしゃぐしゃと髪の毛をかき回して言う。
「ちゃんと準備できてよかった~。本当は二人で準備する予定でこんな朝早く来たんだよ」
「え、そうなの?てか、髪の毛ぐしゃぐしゃになるからやめて」
これが普通の時間だと思っていて気が付かなかった。桃花が髪の毛から手を離したので、私は手櫛で多少髪の毛を整える。私の疑問には、桃花ではなく美雪が答えた。
「あなたは私たちに心配をかけないようにする癖があるから、まだ準備できていないと予想してたのよ。ちゃんと準備できててよかった」
「お母さんよりお母さんらしいこと言うよね」
今日の私のお母さんの言動と比較しながら言う。本当に彼女らのほうが私のお母さんとお父さんをやってくれているようだ。
開けっ放しにしていたドアに向かって
「行ってきます!」
というと、力いっぱいドアを閉めた。美雪から怒られてしまったけど、なんとなく後ろ暗い気持ちは家にしまい込んだような気分がして、気持ちがよかった。
久しく見る朝の太陽はまぶしかったけれど、私が歩く道を照り輝かせてくれている。十人十色の生活が密集している団地特有の埃っぽさは朝日に照らされて多少はきれいに見えるような気がした。
三人で団地を抜けると、急に桃花が言った。
「今日は時間もあるんだし、晴飛が道案内してよ。道を思い出すいい機会になるでしょ」
桃花の提案に、私は即答で無理と答えたけれど、美雪が横から口をはさんだ。
「それいいんじゃないかしら。これまで見えていなかった風景が見えるかもよ」
まさかの美雪の賛成で、私が道案内することになってしまった。もともと歩きなれていない道だから、不安しかない。朧げな記憶と、三人で立ち寄った思い出を頼りにして、道を少しずつ進んで行く。
すると不思議なことに、見たことあるような景色が現れては進み、また見覚えのある街並みに出会うということを繰り返した。だんだん道順を思い出しながらも、これまで気にも留めなかった町のお店にも視点が止まる。
だんだんと普通の街並みを抜けて、学生街と言える風景が現れた。三人で何度も立ち寄った唐揚げ屋さんや、ちょっとおしゃれなカフェに小物屋さん、スポーツ用品店など小さいながらに必要なものが買いそろえられる便利な商店街に着いた。
ここまで来たら大丈夫と思うと、急に肩の力が抜けた。携帯で時間を見ると、もう八時手前になっていて、約一時間近く歩いていたと気づく。そんな私の右肩に誰かの手が置かれた。
「お疲れ様」
優しい美雪の声に続くように、今度は左肩がバシッとたたかれる。
「ちゃんと道覚えてるじゃん。さすが晴飛」
「ありがと」
二人にそう返しながら、歩いていてる最中は二人のことを一切に気にしていなかったことに気が付いた。どこまでも私のことを考えてくれる優しい友人二人がいることが、私にとっての宝だろう。
私がほっとしていると、桃花が焦ったように声を出した。
「って、もうこんな時間じゃん。急ごっか」
と言って駆け出した。確かに周りの生徒たちも小走り気味に校門に向かっている。
「行こっか」
美雪に声をかけると、こくりとうなずいて一緒に小走りする。以前ならこの三人で私が一番体力があったけれど、もう二人に追いつけるのか怪しくなっていた。それでも、三人で学校に向かって急ぐだけでも青春の一コマのような気がした。
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