俺が死なない理由

わかばひいらぎ

文字の大きさ
上 下
2 / 8

その1

しおりを挟む
 昨日、ヤクザもんみたいなハゲにぶつかった事をズルズルと引きずりながら一日をすごした。そして今日はちくわパーティーをやろうと友人に誘われているのでお昼には家を出ることになっている。ちくわパーティーが何かはよくわからないが、少しだけ聞いたところ「ちくわコーラ山手線ゲーム」というものがあるらしい。正直意味がわからない。
 そんなことを思いながらさっさとスニーカーを履き外に出る。天気は快晴、まさに雲ひとつない青空だ。ただ、快い晴れと書いて快晴だが、暑いという文句しか出てこないのであまり快くはない。
 暫く歩き、飲み物を忘れてきてしまったとこに気づく。この暑さで飲み物無しは致命傷だ。この辺りに自販機はないので、近くのコンビニ「ファミリーイレブンソン」、いわゆる「ファイソン」に行くしかないため、コンビニの方に足を向けた。
 コンビニ前、交通量は無いくせに無駄に長い信号がある。体感で二分くらいに感じるほど長い。無視していくという手もあるが、コンビニの隣が交番という手前そんなことは出来ない。
 体感で二分、やっと青信号に変わったので歩き出す。すると、トラックが向こうから走ってきた。珍しいこともあるもんだなと若干感心したがしかし、どうもそのトラックの様子がおかしい。左右にゆらゆらと蛇行しながらこちらに向かってきているのだ。酒帯び運転だろうか。だが、数歩歩いたところであることに気づく。どうもあのトラックは自分の方目がけてグングンとスピードを上げている。気づけばトラックが視界のほとんどを埋め尽くす。
(え、俺ここで死ぬの?)
 そう思い、目を瞑ろうとした直後。耳をつんざくような音がした。壊れたアンプから出そうな、酷く音割れをしたギターの音のようだ。その音を聞いてから、世界が白と黒の二色になり、止まった。鳥も、葉っぱも、トラックも静止して動かない。
「これは…?」
 自分の体も、口と眼球を覗いて動かない。まるでコンクリートに埋められたかのように。混乱していると、横から声が聞こえた。
「やったー!大成功!」
 無邪気に喜ぶ声と共に横から白黒に彩られた少女がひょっこりと姿を現した。瞳が淡く青色なこと以外は普通の女子高生に見える。髪の毛はミディアムヘアーで黒(景色全部が白黒だからわからん)に、白い肌(本当はどうかわからん)、どこのものかは分からないが黒で統一された制服(これもまた分からん)。その子は俺のことをじっくりと舐めるように見ると、こう言った。
「私がこれからあなたが死にそうになった時に助けてあげる係になりました、リペラです!」
 そう言うと彼女は満面の笑みを浮かべた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

調香師少女と元神青年 涙の香水

有坂有花子
キャラ文芸
「君を妻として迎えに来たよ」 仮想明治時代。調香師の春子は見知らぬ洋装の青年・子槻から告げられる。 幼いころ、子槻は『春子を妻として迎えに行く』という約束をしたという。まったく覚えのない春子だったが、子槻の屋敷へ連れてこられてしまう。 話すうちに、春子は『自分の香水店をひらきたい』という夢を子槻が知っていることに驚く。屋敷に店を出してよいと言う子槻だったが、両親の苛烈な反対にあい、『両親を納得させる香水を作ること』という勝負をすることになってしまった。 調香師少女とねずみ元神青年の香水と涙のお話。 ※話数は多いですが、一話あたりは短めです

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

別に要りませんけど?

ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」 そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。 「……別に要りませんけど?」 ※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。 ※なろうでも掲載中

処理中です...