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悪役令嬢、抱きしめられる

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「あの…私思うのですが、セセリア様は
自己評価が低すぎませんか?」

はて?自己評価?

自分を評価したことなどないので、低い
と言われてもピンとこない。

「突然どうしたの…?」

「突然ではありません。私は常々思って
いたんです。セセリア様は、もう少し
ご自分の魅力を自覚なさるべきです。」

「み、魅力!?」

ゲームのヒロインで、男性から好かれる
ようにキャラ設定されている、魅力の塊
のようなアイリスが私にそれを言う?

セセリアの見た目なんて気にしたことなか
ったけど、悪役令嬢なんだから魅力なんて
備わってないでしょう。

「お菓子作りくらいしか取り柄のない私
に魅力なんて…」

謙遜でもなんでもなく、正直な気持ちを
口にした私を見て、アイリスはため息を
ついた。

「はぁ…。セセリア様はなにもわかって
らっしゃらないんですね。アンセル殿下
が、お昼休みを毎日一緒に過ごしていた
のはなぜだと思います?」

「私が弟のカイン殿下の婚約者だから
じゃないの?」

「虫よけですよ。セセリア様に変な虫が
つかないように、アンセル殿下が威嚇し
ていたんです。」

「え!?虫よけって…なんでそんな…」

「セセリア様がそれだけ魅力的だって
ことです。カイン殿下が留学中の今なら
親しくなれるチャンスだって、隙を狙
っていた生徒が結構いたんですよ。」

まだ信じられないといった表情の私に、
畳みかけるようにアイリスが続けた。

「きっとカイン殿下がアンセル殿下に
頼んだんでしょうね。自分の留学中、
セセリア様を守って欲しいって。でも
アンセル殿下はもうすぐ卒業してしま
う。だからその前に戻ってこられるおつ
もりなんでしょう。」

そ、そうなの…?

アンセル殿下や、その側近、アイリス
だって眩しいくらい美しいから、私だけ
十人並みなんだと思ってたけど、実は
結構美人だったの…?

いや、だとしても、聖女様のアイリスには
負けるでしょ。
私なんてただの引き立て役でしょ。

悪役令嬢という役柄上、どうしても卑下
してしまう。

「ところでセセリア様、カイン殿下って
どんな方なんですか?」

ああ、そうか。
アイリスはまだカイン殿下には会ったこと
なかったのね。

「え~と…お菓子が大好きで、見た目は
クマのぬいぐるみみたいな感じかな。
まぁ、私の作ったお菓子を食べ過ぎて
ぽっちゃり体形になっちゃったんだけど
ね。」

そのせいで、ゲームにはなかった留学なん
ていう余計なイベントが発生しちゃったん
ですよ。

「そうなんですね…。それじゃぁ、あちら
にいる方は殿下ではありませんね。」

「え?」

アイリスに言われて後ろを振り返ると、
こちらに向かって歩いて来る人物がいる。

その艶やかな黒髪と、整った顔立ちには
見覚えがある。

「…カイン殿下!?」

いやでも、そこにいるのは、私が太らせて
しまった殿下とは、とても同一人物とは
思えない、引き締まった体形の人だ。

その人は、目の前までやってくると、思い
きり私を抱きしめた。

「セセリア、会いたかった!」

ああ、間違いない。
これはカイン殿下だ。

私を抱きしめている殿下の肩越しに、冷然
とした表情のアイリスが見えた。
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