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フライング…の宣言

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恋人同士になってしまった…ついに。
あれだけ躊躇していたのに。
堂々と恋人です!って言える日なんて来るはずもないのに…
るい君は、それでも良いんだろうか…

そんな事を思う俺とは違い、嬉しそうに笑顔100%のるい君は、今日も俺の隣にピッタリとくっ付いてくる。
とおる君とミナミ君の2人が居るのに、全くのお構い無しだ。

「なぁ…るい、晴れて恋人なったのが嬉しいのは分かったけど、事務所でイチャつくのは禁止な!ウザイから!」
とおる君に注意され、るい君は、ハイハイって軽く返事をしていた。

「え?えっ?!ちょ、ちょっと待って!なん…で…知ってるの?」

「は?オイ、まさか…るい!!お前、リヒトには、言ってないのか??!」
何のことだ?何もるい君からは聞いてないんだけど…
とおる君が、スマホをチョイチョイと触り、こちらに画面を向けてきた。

「ほら、コレ…」

見せてくれたのは、数時間前に更新されたばかりらしい、るい君の公式SNSのページ。
画面には、緊急!重大発表!と書いてあった。

恐る恐るスライドすると…
『リヒトと僕は、リアル恋人になりました!これからも変わらず、るいリヒも、スタドリも応援して欲しいな♡』
そんなコメントと共に、ハートマーク付きで、ウインクを決めた、るい君の写真が…
呆然として、そのまま固まってしまった。
俺が、めちゃくちゃ悩んで、悶々としてる時に、彼は、サラリとファンへのメッセージを流してしまったというのか… 

「社長からは、OK貰ったもん。それに、ファンに黙ってるなんて、逆に失礼だよ。別れるとかも100%無いから…炎上の心配も無しだよ?」
るい君は堂々と言った。

ファンに対してもだけど、フワッと浮かんだのは、両親の顔。 
え、でも…うちの親には…なんて説明したら…
いきなり、こんなの見たら…卒倒しちゃうんじゃないかって思うと、凄く重たい気持ちになっていく。

「あ、ついでに。これこれ、見て~」
るい君は、自分のスマホを見せてくる。
そこには…
なんと、うちの両親と笑顔のるい君。
三人で、和やかな食事風景が…彼のスライドする指と共に、次々とめくられる。

「まぁ、リヒトのご両親は、まだ仕事として、商売的にそうやってるんだと思ってる感じだったけど、反対は、されなかったよ?」

信じられない…あの、真面目なうちの両親が?
そうだ…一つ忘れてた。
うちの両親とは俺も含めて、何回も食事をしていて、何故か、息子の俺よりも大事に思われてるんじゃないかって位に、うちの親は2人して、なんと、るい推し。
実際のところ、るい君って、めっちゃくちゃ、ヒトタラシな人なんだよなぁ。
老若男女問わず、虜にする彼は、メンバーの中でも一番ファンの層が厚い。

「完全に、周りから固められたな…リヒト」
とおる君が、可哀想な奴を見る目を向けてくる。

「いいじゃん!もう、2人はそれでガンガンいっちゃいなよ!」
ミナミ君は、とても嬉しそうだった。

本当にいいの?
ファンは怒ってないの?
怖くて投稿のコメント欄すら見れない俺。

「まぁ、アンチは、一定数居るけど、大方が祝福のコメだから、心配するなよ、リヒト」
とおる君は、穏やかに笑ってくれた。

「でもさ、でもさ、やっぱりダメだよ!るい君の仕事の幅が…狭まっちゃうよ!せっかく、ドラマの主演だってやったのに…やっぱり消して!削除!!絶対に削除!」
俺は、涙目で必死に、るい君に訴えた。

絶対絶対ダメ!と言い張る俺に、しぶしぶ、るい君は投稿を削除してくれた。

「ごめん…発表するのが嫌…とかじゃ無いんだ。俺はまだ、るい君の隣にいる自分に自信が持てないし、足枷にはなりたくないんだ!」


「分かった…待つよ」
るい君は、少しだけ寂しそうに笑った。

それから、一度上げた投稿が消えた事で、かなり、ネットで憶測は飛んだが、事務所から改めて、正式に発表する事は無かった。
結局は、頑なな俺に、るい君が折れてくれた形。

しばらくは、話題に昇ったが、徐々に落ち着いてくれ、かなりホッとしたのは俺。
今度は、何かの前宣伝?というネットでの憶測が多数見られるようになってきた。
そのタイミングを狙ってたみたいに、新曲の発表をしたから、事務所の社長は、本当にやり手だと思う。
元からそれを分かってやってたみたいにして、上手いこと着地させてくれた。

しかも、新曲は、友達以上恋人未満な関係を題材にした曲だったから、ファンは、余計にフライングの宣伝だったのだと納得してくれたみたいだ。


今日は、久しぶりに、るい君の家に来ていた。
ソファに座りながら。
ツアーの最中、どうしても多忙に勝てず、見逃した話題作、映画館には行けなくて、DVDが出たら観ようと約束していた作品を観ている。
俺を抱えるみたいにして、後ろに居る彼に、ボソッと言葉を伝えた。

「るい君…ごめん。本当は、オープンにしたかったんだろうけど…」
「いいよ、まだまだ先は長いし、そのうち、結婚しました!って、僕はまた、フライングしちゃうかもよ?」
本気か冗談か分からない事を言ってきた。
るい君と完全なる恋人になる日は、近いのか遠いのか…
俺にはまだ分からない。

でも、るい君と2人で居るのは本当に楽しいし、イチャイチャするのも好きだ。
恋人になってからは、意識しまくってしまい、全然2人きりには慣れない俺は、いつも身体を硬くしてしまう。
初めてのエッチから、まだ2回目には至っていない。
多分俺の身体を心配してくれてるんだろうけど、少しだけ残念で、かと言って、自分からなんて、とても言えない。
とりあえずは、抱きしめて貰えると、凄く安心出来て、時々する深いキスにドキドキしちゃうのが、新鮮で。
恋人成り立てっぽくて、嬉しい。
こんな俺に、一切急かしたりしない彼は、本当に気が長いというか、忍耐というか。
それとも、そこまで俺に魅力が無いのか…

そろそろ、2回目がしたいなぁ…
凄く気持ち良かったのだけは覚えてる。あとは、夢中過ぎて、半分記憶が無い…それでも、るい君の息づかいや、汗の滴る綺麗な顔を、つい思い出してしまい。
度々赤面してしまう。
今も、後ろを向けれない位に、顔が赤いだろう。

「今日は、泊まってく?」
低いその声に、ビクリとした俺は、コクリと頷いたのだった。
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