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クリスマス合宿 side足立

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クリスマスに陸上部と合宿だと聞いて、すぐにオレの頭の中は、七瀬へのプレゼントの事でいっぱいになった。
何を送ればいいのか、悩む事がこんなにも楽しいなんて。恋人へのプレゼント選びなんて面倒臭いとばかり思っていたのに。今までは、贈りたいとかじゃなく、何となくの義理で、贈っていただけだと気付く。

スマホで検索しながら、色々と思案していたら…
彼のしなやかな脚、その足首にオレの物だという印になるような物が欲しいという強烈な思いが湧き上がる。
ネット検索すると、コードタイプのアンクレットを見つけた。これだと思った。
走る彼の足にたなびく、1本のアンクレット、想像しただけで、カッコ可愛い。
濃い藍色の1本をカートに入れた。
そして、勝手にお揃いにする名案も出てくる。これは、買うしかない!
淡い水色のも1本追加した。
彼の足首に着けるのを想像しては、ニヤニヤしてしまう。

合宿が始まってから…しまったと思った。プレゼントを渡そうにも、サプライズにしたかったから、どこかの時間帯で待ち合わせもしていないし、スマホは合宿中は使用禁止で持ってきて無いから。
困ったなぁ、クリスマスに渡したかったんだけど…
日中に、みんなが居る中で渡す訳にはいかない。オレは良いけど、七瀬は絶対に引くから。
そんな事を考えて、ぼんやりと陸上部の方を見ると、七瀬が居た。
滴る汗がマジでエロいよなぁ…と思っていたら、彼は顎の汗をTシャツの裾で拭いていて、思いっきりお腹が見えていた。
チラリどころか、見せてるとしか…これは、けしからん。
そして、その脇腹にはオレの付けた赤い吸引性皮下出血が…いや、ふざけてる場合じゃねぇ。
みんなに七瀬はオレのだって見せつけたいけど、見せたくない!相反する気持ちに困惑する。

いやらしい七瀬のお腹をずっと眺めていたかったけど、彼と目が合ったから、腹を指さした。
彼の視線が赤い場所に辿り着くと、気付いたようで、慌てて服は下ろされた。
その焦る顔は本当に可愛かった。
指のバッテンと口パクで、他の誰にも見せたく無いって事が何となく伝わったみたいで。
「見せれないよ」
って真っ赤な顔で返され、ホッとしつつ、満足だった。

夜になって…疲労困憊のみんなが次々に寝た後、そっと外に出た。
もしかして、会えないかなって思いながら、コートのポケットにプレゼントを忍ばせていた。
思ったよりも寒くて震えたけど、でも、今日のクリスマスイブに渡したくて、結局30分くらいそこに居ただろうか…
夜空に光る月と輝く星に、七瀬に合わせて欲しいと願いつつ…
こんな乙女チックな行動をするなんて事が、我が身に起こるとは…なんて思いながら、オレは、ただそこに立っていた。

ジャリと、砂を踏む音が聞こえた。
音のした方を見ると…七瀬が立っている。
七瀬?嘘だろ?ほんとに?俺の願いが強すぎての幻かと思った。
駆け寄る彼は不思議そうにオレを見ると、いつから居たのか問うてきた。

「会えないかなぁ…って待ってた」
いつからここに?の問いには答えず、会いたかった想いだけ伝える、彼の顔が泣きそうに歪んで、思わず抱きしめそうになったけど、ここではダメだから。誰が見てるか、もしくは、現れるか…分からない。

抱きしめる代わりに自分のマフラーを彼に巻き付けた。
遠慮する七瀬に、オレは七瀬に会えて体温が上がったから大丈夫だからと言うと、照れた彼がオレのマフラーに顔を埋めるのを見つめた。
散歩へと誘い、2人で満天の星空の中を歩き始めた。

繋いだ彼の手は暖かくて、思わずしがみつきたくなった。
カサカサという音で、目的を思い出す。
出してみて欲しいと言う言葉に彼が頷き、取り出すと
「コレは何?」
と首を傾げながら聞いてきた。

行動で示そうと、しゃがみ込み、七瀬の細い足首にアンクレットを装着した。
「オレのモノって印な」
そんなセリフを吐きながら、我ながら独占欲ヤバいなぁ…引かれないか?と思った。
思わず舐め上げたくなるような足首に、舌の代わりに指を這わせると、彼から甘い声が漏れた。
思わず「エロい声」って言葉にしていた。

プレゼントだと言うとすごい申し訳なさそうに全力で謝って来られた。
単純に喜んで貰えると思っていたオレは、逆に驚いた。
彼は、してもらう事に慣れていないのか?沢山の友人がいる彼だから、そういうのは慣れてるかと思っていたのに。
お返しはキスで良いと言うと、恥ずかしそうにギュッと目を瞑り、ゆっくりと近付いて来てくれる、その懸命な姿を心から愛おしいと思った。

合わさる唇はとても暖かく、オレの冷たい唇までも熱くした。
しゃがんだまま、隠れる事の出来ない、田んぼの広がる道の、ど真ん中で…月に照らされ影が重なる。

「目を開いて」
こんな外でしては、イケナイコトだと分かりながら、見つめたままで唇を合わせてみたかった。
可愛い彼の丸い瞳を見つめ、七瀬を感じたかったから。
もっと欲しい…彼を飲み込んでしまいたい。舌先で何度もつつくと、彼の固く閉じた唇がゆっくり開き、オレを受け入れてくれた。
外での恋人同士の行為を恐れる彼が、ここまでしてくれる事に驚きつつ、止められなかった。困らせてるかもしれない思いと、彼を離したくない気持ちがせめぎ合う。
更に、俺の独占欲の鎖が付いたばかりの足首に触れると、もう、何も考えられなくなった。

どれくらい貪ったか分からない…
離れた七瀬の唇が、少し腫れたように紅くなってるのを月灯りの下で見て、相当だな…オレと、少し反省する。

「ズルい。経験値の差。俺ばっか、結局…フワフワしてる」
そんな嬉しいセリフを聞くと、言わずにはいられない、経験値なんか関係ない、オレが七瀬を求めてる愛の重さが、行為に現れるだけだと。

月華を浴びながら温かな笑み浮かべる彼を見つめた。

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