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代償
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翔は、満身創痍の望に近寄り「今度、俺たち家族に手を出したら……ただじゃおかねぇー…分かったか?」そう言うと望は頷いた。
「ボスの温情に感謝しろよ?じゃないと、お前らここですぐにジ・エンドだったぜ」
皮肉を込めた笑みを浮かべそう告げる。
「あ、それと……俺だけが、お前のライバルと思っていただけなのか……?」
疑問に思っていたことを質問した。
望は手を強く握り締めながら「違う。俺の絶対に超えられない壁だったんだ。背がちっこいくせに…」そう言う彼に、翔は心のどこかで"ライバル"と言って欲しかったと期待していたのもあり、少し寂しそうな表情で「そうか……」と呟いた。
「……それなら、仕方ないか…。一番やりたくなかったが、記者にリークするな。あと、今までの損害賠償請求も申請しとくぜ…」
悲しそうに、だけど決心した目つきでそう告げた。
「私たちだって…、さ…………っ」
スタッフが言い訳をしようとして口を開いたが、睨まれてしまい言葉に詰まった。
「……お前らにも、ちゃんと請求するから安心しろよ?俺に対する誹謗中傷…偽垢に便乗してたんだからさ」
ニコリと笑う翔に、表情が強ばる役者たち。
翔は、望に向き合い「……元気でな…」力なく笑いかけその場を後にした。
いつの間にか、謎の少年を含めた三人もいなくなっていた。
「幸の所に行かなきゃ……」
ふとショーウィンドウに写る自身を見た。
所々、服に飛び血や埃が着いていたりと見るに堪えない格好だった。
「……この格好じゃ…病院の先生からもなんか言われるな…。
病院行く前に、家でシャワーを浴びるか」
そう呟き、帰ることにしたのだった。
家に着くと、結衣たちから「どうしたの!?その格好!!」と質問攻めにされ、「なんでもない。転んだだけ」気だるそうに答えた。
「お姉ちゃんはまだ、起きてないよ」
ハヤノを抱っこしながらそう伝える結衣に「知ってる……取り敢えず風呂入る」とだけ伝えて脱衣所に向かう。
暫くして、お風呂から上がった翔は新しい服に着替えた後「行ってきます」と言う。
「え?今度はどこに行くの?」不思議そうに結衣が聞いてきたので、短く「病院」と答え自宅を出て病院に向かった。
峰崎総合病院につき、ナースステーションにて幸がいる部屋を聞くと、一人の医者から声をかけられた。
「あれ?君は…もしかして、廣世一家の長男、翔くんかな?」
「あ、はい…そうですけど……」
声をかけられ戸惑っている翔に、その医者は豪快に笑う。
更に困惑していると、「大きくなったな~!翔くんが小さい頃に来た以来かな?私を覚えてるかね?」と言われたが、翔は首を傾げながら記憶を辿るが思い出せなかった。
「まぁ、ムリもないか…翔くんと出会ったのは、まだ君が幼いときだったからね。
改めて自己紹介をしようか。
私は、ここの病院長をやっている峰崎 裕一郎。幼い翔くんの執刀医だ」
「えーと、よろしくお願いします?」
疑問符を浮かべながらもお辞儀をする翔に笑う峰崎。
「翔くんの妹、幸ちゃんの所に案内するよ。ついてきなさい」
「ありがとうございます」
峰崎に幸がいる場所に案内された翔。
集中治療室(HCU)の扉を開けると、そこには点滴など数多く繋がれており、彼女はまだ生きている事をつげる音が鳴っていた。
それに安堵しながら、「ごめんな…こんな事になってしまって。もっと、俺が早く手を打っていれば……」そうポツリと呟く。
少しして、ノックが聞こえたので「はい」と返事をすると一人の医師が入って来て幸の状態を説明した。
「お母様方には先に説明をしましたが…彼女は頭を強くうち出血がひどく、脳を損傷しているかもしれませんが最善の手を尽くしました。後遺症が残らないとも言いきれません」
「意識は戻るのか…?」
「身体の方はゆっくりながら治ってきています。意識が戻るのは彼女次第ですね。今は、祈るのみしか…。
足の方は幸い、切除までには至りませんでしたので、リハビリ次第ではまた歩くことも可能になります」
それを聞いた翔は、胸を撫で下ろした。
暫く、医師から今後の事を説明をされたあと病室から出ていかれた。その先生と入れ違いに二人の警察の人が入ってきた。
「私は、警視庁特別捜査官をしている矢上 歩美と申します」
「同じく、特別捜査官の仙崎 宗太郎です」
「あ、俺は廣世 翔です」
「心よりお見舞い申し上げます」
二人が頭を下げたので、翔は「ありがとうございます」と言いながら頭を下げた。
お互い頭をあげ、翔が先に口を開いた。
「…警視庁特別捜査官……とはなんですか?」
「そうですね…特定の犯罪捜査に必要な専門的知識と能力がある警察官のことです。
その中で、私たちはサイバー犯罪捜査をしております」
「サイバー犯罪捜査官…ネットとかの…?」
「そうです。他にも多々ありますが、その説明は省きますね」
少し雑談をしたあと、幸が彼らに何度か力を貸してくれていた事を伝えられた。
「質問に答えられる範囲内でしたら、お答えいたします」
そう言われたので、まず初めに疑問に思ったことを質問することにした。
※集中治療室(HCU)とは…
High Care Unitの略称。日本では「高度治療室」や「準集中治療室」と呼ばれている。
重症課リスクがある、または大きな手術の後で経過観察が必要とした病棟が特徴。
※サイバー犯罪捜査官とは…
サイバー犯罪の対策と捜査を行う。
「コンピュータシステムの開発」や「インターネットセキュリティ」などの知識を要する。
「ボスの温情に感謝しろよ?じゃないと、お前らここですぐにジ・エンドだったぜ」
皮肉を込めた笑みを浮かべそう告げる。
「あ、それと……俺だけが、お前のライバルと思っていただけなのか……?」
疑問に思っていたことを質問した。
望は手を強く握り締めながら「違う。俺の絶対に超えられない壁だったんだ。背がちっこいくせに…」そう言う彼に、翔は心のどこかで"ライバル"と言って欲しかったと期待していたのもあり、少し寂しそうな表情で「そうか……」と呟いた。
「……それなら、仕方ないか…。一番やりたくなかったが、記者にリークするな。あと、今までの損害賠償請求も申請しとくぜ…」
悲しそうに、だけど決心した目つきでそう告げた。
「私たちだって…、さ…………っ」
スタッフが言い訳をしようとして口を開いたが、睨まれてしまい言葉に詰まった。
「……お前らにも、ちゃんと請求するから安心しろよ?俺に対する誹謗中傷…偽垢に便乗してたんだからさ」
ニコリと笑う翔に、表情が強ばる役者たち。
翔は、望に向き合い「……元気でな…」力なく笑いかけその場を後にした。
いつの間にか、謎の少年を含めた三人もいなくなっていた。
「幸の所に行かなきゃ……」
ふとショーウィンドウに写る自身を見た。
所々、服に飛び血や埃が着いていたりと見るに堪えない格好だった。
「……この格好じゃ…病院の先生からもなんか言われるな…。
病院行く前に、家でシャワーを浴びるか」
そう呟き、帰ることにしたのだった。
家に着くと、結衣たちから「どうしたの!?その格好!!」と質問攻めにされ、「なんでもない。転んだだけ」気だるそうに答えた。
「お姉ちゃんはまだ、起きてないよ」
ハヤノを抱っこしながらそう伝える結衣に「知ってる……取り敢えず風呂入る」とだけ伝えて脱衣所に向かう。
暫くして、お風呂から上がった翔は新しい服に着替えた後「行ってきます」と言う。
「え?今度はどこに行くの?」不思議そうに結衣が聞いてきたので、短く「病院」と答え自宅を出て病院に向かった。
峰崎総合病院につき、ナースステーションにて幸がいる部屋を聞くと、一人の医者から声をかけられた。
「あれ?君は…もしかして、廣世一家の長男、翔くんかな?」
「あ、はい…そうですけど……」
声をかけられ戸惑っている翔に、その医者は豪快に笑う。
更に困惑していると、「大きくなったな~!翔くんが小さい頃に来た以来かな?私を覚えてるかね?」と言われたが、翔は首を傾げながら記憶を辿るが思い出せなかった。
「まぁ、ムリもないか…翔くんと出会ったのは、まだ君が幼いときだったからね。
改めて自己紹介をしようか。
私は、ここの病院長をやっている峰崎 裕一郎。幼い翔くんの執刀医だ」
「えーと、よろしくお願いします?」
疑問符を浮かべながらもお辞儀をする翔に笑う峰崎。
「翔くんの妹、幸ちゃんの所に案内するよ。ついてきなさい」
「ありがとうございます」
峰崎に幸がいる場所に案内された翔。
集中治療室(HCU)の扉を開けると、そこには点滴など数多く繋がれており、彼女はまだ生きている事をつげる音が鳴っていた。
それに安堵しながら、「ごめんな…こんな事になってしまって。もっと、俺が早く手を打っていれば……」そうポツリと呟く。
少しして、ノックが聞こえたので「はい」と返事をすると一人の医師が入って来て幸の状態を説明した。
「お母様方には先に説明をしましたが…彼女は頭を強くうち出血がひどく、脳を損傷しているかもしれませんが最善の手を尽くしました。後遺症が残らないとも言いきれません」
「意識は戻るのか…?」
「身体の方はゆっくりながら治ってきています。意識が戻るのは彼女次第ですね。今は、祈るのみしか…。
足の方は幸い、切除までには至りませんでしたので、リハビリ次第ではまた歩くことも可能になります」
それを聞いた翔は、胸を撫で下ろした。
暫く、医師から今後の事を説明をされたあと病室から出ていかれた。その先生と入れ違いに二人の警察の人が入ってきた。
「私は、警視庁特別捜査官をしている矢上 歩美と申します」
「同じく、特別捜査官の仙崎 宗太郎です」
「あ、俺は廣世 翔です」
「心よりお見舞い申し上げます」
二人が頭を下げたので、翔は「ありがとうございます」と言いながら頭を下げた。
お互い頭をあげ、翔が先に口を開いた。
「…警視庁特別捜査官……とはなんですか?」
「そうですね…特定の犯罪捜査に必要な専門的知識と能力がある警察官のことです。
その中で、私たちはサイバー犯罪捜査をしております」
「サイバー犯罪捜査官…ネットとかの…?」
「そうです。他にも多々ありますが、その説明は省きますね」
少し雑談をしたあと、幸が彼らに何度か力を貸してくれていた事を伝えられた。
「質問に答えられる範囲内でしたら、お答えいたします」
そう言われたので、まず初めに疑問に思ったことを質問することにした。
※集中治療室(HCU)とは…
High Care Unitの略称。日本では「高度治療室」や「準集中治療室」と呼ばれている。
重症課リスクがある、または大きな手術の後で経過観察が必要とした病棟が特徴。
※サイバー犯罪捜査官とは…
サイバー犯罪の対策と捜査を行う。
「コンピュータシステムの開発」や「インターネットセキュリティ」などの知識を要する。
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今回も楽しく読ませて頂きました☺️
最後に、集中治療室?とかの解説があって分かりやすかったです!
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翔くんの優しさに漬け込んで、悪さするなんて有り得ません!
ましてや、人を刺すなんてもってのほかだー!
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毎回、コメントありがとうございます!
これ、なんの単語だろう?と思われる方もいらっしゃると思いますので、分かりやすく解説してみました(笑)
人間、優しさに漬け込んで悪さする人もいますからね。
それを、自分で制御できるかどうかです。それを学んでいただければ幸いです😌
今回の話も、とても興味深く楽しく読ませて頂きました!
幸さん……無事だといいですね!
それにしても、望さんたち……
許せない(*`Д´)ノ!!!(怒)
翔さんと幸さんのファンになりました!
2人がこれからも出てくるのを楽しみにしてます!
楽しんで読んでくださり、ありがとうございます!
翔と幸は、これからドンドン出てくるので、楽しみにしといてください😊
初コメントになります!
更新を楽しみに待っています!
初コメントありがとうございます!
更新楽しみにして頂けて嬉しい限りです
(๑•̀ㅁ•́ฅ✨
まだ、執筆途中なので待っていただけると嬉しいです!