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冬の温かなモノ

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帰宅についた幸たちは、「ただいまー」と台所にいる薫子たちに言った。


「おかえり幸、結衣に翔、薫」

「おかえり…て、雪まみれじゃない~」
菊梨はそう言って雪を払った。

「遊んできちゃったの?」
クスクスと笑いながらそう聞いた。

「帰ってくるうちに、雪がひどくなってた…」
幸はハヤノを降ろして言う。

ハヤノは徹に体を拭いてもらう。

「お風呂沸かしているから体温めてきなさい」

幸と結衣は頷きお風呂入りに行く。

「翔、薫も雪まみれ…」

「ん~、傘の譲り合いで」

「僕も、翔ちゃんと同じ~」

ポカンとなり「どうしてそうなるの?」と呟く菊梨。

薫子たちの会話に起きた翔夜は「どうしたんだー?」と寝ぼけつつ聞いた。

ハヤノを拭き終わった徹が、「お義理兄さん、おはようございます。
翔くんらが雪まみれで帰ってきたんです」
説明しながら答える。

「そうか、幸と結衣は?」

「それなら、お風呂に入ってますよ。
風邪引くと大変ですから」

「そうか…俺、結構寝てたみたいだな」

「仕方ないよ、車の運転までしてくれたんだら」
お風呂から上がった幸が苦笑いしながらそう言う。

「あ!お父さん、おはようー!運転お疲れさま!」

「ありがとう、2人とも」

「兄ちゃんたちもお風呂入ってきなよ~。
冷えた体が温まるよ~」

結衣からそう言われお風呂に入りに行く。

「お義理兄さんが寝ている時に雪すごかったんですよ!
外でタオルをぶん回したら北海道のやつみたいに凍るんじゃないですか?!」

「しないでね!?」

徹を注意する菊梨たちに苦笑いする。

そして、翔と薫がお風呂からあがりご飯にした。

テーブルには、お裾分けされた野菜や買ってきたお肉などが並べられていた。

「今日は、チゲスープと薫子お手製のオリジナルスープを1つの鍋にしました!」

思わず拍手をする翔夜たち。
幸は、ハヤノ用のお皿にキャットフードを入れ「おいでハヤノ」と呼んだ。
暖をとっていたハヤノは起き上がり幸の所に行った。

ハヤノが来たのを確認してお皿を置いた。
「ゆっくり食べてね」
ハヤノの頭を撫でて、ちゃんと食べているのを確認し私も食べることにした。

薫子はそれぞれの小皿に、鍋の具をよそい置いていく。

「で、4人とも東京でうまくやれている?」
菊梨は、野菜やお肉を食べている翔たちに聞いた。

「んー、そこそこ?」

「そこそこって何よ、そこそこって…もっと具体的に言ってよ翔…」

「帰省する前は、忙しかったし…遊ぶ暇もねぇよ」

「もう!あんた高校生なんだから遊びなさいよ」

「まぁまぁ、翔くんも色々あるみたいだし、責めないであげよう?」
菊梨を宥める徹はそう言った。

「分かってるわよ…薫は、どうなの?」
気を取り直して薫に振った菊梨は聞いた。

「僕は、テストで忙しかったかな?成績落ちるのはいやだから」

「確かにね、頑張りなさいよ」

「ありがとう」

「幸ちゃんと結衣ちゃんは東京なれた?」

「私はそれなりに…」

「わかんない事があったら、姉さんに聞くのよ?」

その言葉に頷く2人。

「そう言えば、姉さんから聞いたけど、高校の学園長から直接スカウトされたんでしょう?」

「え…スカウト?誰が?」

“スカウト”という言葉に反応した翔は聞いた。

「兄ちゃん、前に言ったじゃん…今の高校に入った理由」
私は、呆れてそう答えた。

?を浮かべた翔は「聞いてねぇ…かも?」と答えた。

二人のやり取りを聞いた菊梨が慌てだしたので、「スカウトと言っても、幸も私もちゃんと受験したよ」と助け舟を出した。

この双子の姉妹は、持ち前の知識欲旺盛な事もあってか、同年代よりも頭がよく、それ故に同級生からは気味悪がられていた。

スカウトされたのは、彼女らが中学生の頃、現在の高校の学園長から、「ぜひ、お二人がよければ、私の学園に来ませんか?」と、そういう話が来たのだという。

姉妹は、翔と薫が学費がそこそこ高い学校に行ってるのもあり辞退しようとしていた。
しかし、義両親から心配ないと言われた事と通いたいという意思があり受験することにしたのであった。
そして、無事受験に合格して通っているのだった。

姉妹たちは、翔と薫に話していたつもりだったのらしいが、寝耳に水な状態で今に至る。

「ごめんなさい。話したと思って、そのまま何も言ってなかった……」

申し訳なさそうに謝った結衣に、「まぁまぁ、それはしょうがないよ。
人間は思い込みがある生き物だからね」そうフォーロに入る徹。

「にしても翔くん、なんで"スカウト"の単語に反応したのかい?」
不思議に思った徹は、首を傾げながら聞いた。

「ん~……無理やりかと思って……
それに、芸能とかを目指す奴ばかりだから……」

「でも、幸ちゃん達が通ってる学校は、
芸能関係じゃないんでしょ?」

その菊梨の質問に幸は、「一応、服飾科とかあります」そう答える。

「幸は、選択授業いつも、語学か家庭科か悩んでるもんね」
野菜やらを食べつつ結衣はそう言った。

「仕方ないよ。翔ちゃんは忙しかったみたいだし、幸たちの話聞く暇なかったみたいだし?
だからといって、聞かない翔ちゃんもあれだけど……。だから、謝らなくていいよ?
むしろ、謝るのは翔ちゃんだと思うしね」

「うん……。そうだけど…ちゃんと言わなかった私たちも非があると思ったから」

薫の言葉にそう答えた結衣は、
再度「ごめんね、言わなくて」と謝った。

翔は首を振り大丈夫と答えた。

そのやり取りを聞いた徹は、鍋を続きながら「4人とも大変そうだね」と言った。
その横で食べてるハヤノに「美味しい?」と聞くと短く鳴いて答える。

「本当にハヤノは、食べることが好きだねぇ~」

そう言った結衣に答えるかのように鳴いた。

「そういえば、部活とかは?
何か入る予定とかないのかい?」
徹からそう聞かれ幸たちは首を横に振った。

「特に、気になるものもあまりないし……
それに、ハヤノもいるから」

「後、テストとかで忙しいしね~。
この間の期末テスト、私も幸も英語が上位に入ったんだから」
チゲの方を食べてしまった結衣が答えた後に「カラァ!」と悲鳴をあげてしまった。

近くにいた薫から水を渡されたので、結衣は受け取りコップの水を全部飲みほした。
暫くして、辛さも引きホッとため息をつく。

「結衣、ちゃんと確認して食べないと…今更言っても遅いか」

「あはは~、話し込んじゃうとついね…」
幸の答えに、苦笑いしながら返す。

「話変わるけどさ、あんたら浮いた話とかないの?」

姉妹は首を傾げた。
なんの事が分からない2人のために、薫子が「付き合ってる人とか~気になる人とかを聞いてるんじゃないかしら?」そう付け加えた。

幸と結衣は口を揃えて“いない”と答えた。
そして翔たちを見て、「兄ちゃん達がそういう話が出そうだけど」と言った。

幸の言葉にこの兄弟も“ないない!”と答えた。

それを聞いた菊梨が心配そうな表情をしてこう言った。
「あんたら、それはそれで逆に心配よ…お姉ちゃんは」

幸たちは、その言葉に苦笑いしながら豆腐や野菜などを食べる。

「まぁ、でも2人に彼氏ができたら、お義理兄さん筆頭になんかしでかしそうだし…。
特に翔くんは、幸ちゃんを溺愛レベルだし…翔くんは絶対になんか出しそうだよね?」

翔が顔を真っ赤にしているため徹はニヤニヤしていた。

それを見ていた菊梨は、意味深な表情を浮かべた。

話題を変えようと結衣は、「今は、恋よりも私たちバイトで忙しいし…」そう言ったのだが、それがいけなかったと後から後悔してしまう程菊梨の顔が変わった。

おもむろに立ち上がった菊梨に首、を傾げる7人と1匹を尻目に紙媒体のものなのか、乾いた音を立ててとある新聞を見せ指をさしていた。
薫たちは指を刺している記事を見ると、動物の子に名前募集と書かれてあったので、そこ?と聞くと否定された。
更に、目を凝らす薫たち。
“潰れかけたケーキ屋を建て直した中学生‼︎
※ただし本人たちの希望により取材や写真不可なので店主のご夫妻とケーキのみとなります。”

姉妹は、その見出しを見た時点で嫌そうに顔を歪めていた。
これから聞かれる事を想定してのことだろう。

「これ、幸ちゃんたちでしょ!
というか、2人ともまたスキルが上がったのでは⁉︎」
興奮でなのか肩が震えている。

嫌そうに顔を歪める姉妹を傍目に、徹も新聞を見て「お義理姉さん達も知ってた?」と首を傾げながら聞いてきた。

薫子と翔夜は記憶をさかのぼった。
確か、その時期は暫くキッチンに甘い匂いやケーキに関する材料なども並んでいた事を思い出した。
翔夜も薫子も“全部、このためなのか”と納得していた。
翔と薫は、姉妹から何も聞いていないため首横に振った。

興奮が止まらない菊梨は、顔が紅潮しており徹から水を渡される。
少し落ち着いた後、菊梨が「このテディベア可愛いわね!」そう言った。

姉妹がテディベアが何なのか、ぬいぐるみの型紙はないかと聞いた時を思い出した翔夜は納得していた。

「絶対、聞かれるから取材受けなかったんだよ」
そう呟く幸の所に、おかわりを望んだハヤノが自身のお皿を咥えて持ってきた。
「あんまり食べ過ぎはダメだよ」
頭を撫でて少し多めにお皿に注いだ。

そんな雑談をしたあと、やがてテレビが正月を迎えるカウントダウンをする所だった。

ー3・2・1

『ハッピーニューイヤー‼︎』
8人と1匹は楽しげな声をあげた。
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