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結「お姉ちゃんがイメージビデオ出したらミリオンセラーになると思うんだけどなあ……」
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難題にぶち当たると自分一人で解決しようとして延々と悩み続ける癖がある――というのは、ゆでだこを通り越して溺死寸前まで風呂場にて追い込んだことからも察せられます。
結ちゃんに文字通りの冷水をシャワーで浴びせかけられてなければ、月島家が事故物件になってた可能性すらあります。
何十年ローンの新築をただの考え事で人が住めない状況に置けば、さすがの私も申し訳なさで化けて出そうです――じゃあ事故物件の原因が君では無いかと指摘されてしまいそう。
「はい、レモン果汁入りのお水」
火にかけられたヤカンみたいだった私が、母をふくめた皆の必死の介抱により体調不良レベルまで回復してからしばらく。
心配げに(5分前以来通算4回目)来訪した妹ちゃんが飲み物を差し出してくれました。
コップを傾けて口に当て両手で落とさないように慎重に、まるで優勝したお相撲さんが杯でお酒をいただくような感じです。
「はぁ……五臓六腑にしみわたりますね」
「そんな晩酌しているお父さんじゃあるまいし」
苦笑いをしながら結ちゃんが返答しますが、少しでも茶化さないと罪悪感で押しつぶされてしまいそうになります。
しかも考え事の原因が話をごまかすためにひねり出した色気を出す練習というモノ、お風呂場で赤くなって出てくるとか色気のかけらも無い私が練習したところで身につけられるか否か。
というより、お色気なんてモノがどうやれば身につけられるモノなのか想像すらつきません。
しなを作りながら「ルパ~ン」と言えばできるかと言えばそうでは無いでしょう、大泥棒だって「オメーに不二子は無理」としらけた顔で言われるに違いありません。
「とてもおいしく頂きました……ですがなぜレモン水を?」
「だってお姉ちゃん妊娠してるんでしょ?」
コップが空になってなければベッドの上が大惨事になっていたことでしょう。
涙目になるくらいに咳き込んでから、嗚咽のように「な、な」と繰り返し、背中をさするように胸元を触ってくる妹ちゃんにツッコミを入れることすらかなわない。
「私にそんな相手がいるとお思いで!?」
「初ちゃんに、覇王様に、今日来たミホノブルボンさん」
「ブルボンさんでは無いですよ、本人も乗っかってましたが!」
結ちゃんが「ブルボンさん」って呼んだら「調整モードに移行します」って景気よく返していましたからね? 声色もちゃんと似通わせていましたからね? なにげに芸達者で私びっくらぽんでしたよ?
「まあ冗談はともかく、すごい悩み事はあるんだよね?」
「心臓に杭でも刺さったみたいな衝撃でしたが、その通りです」
すごいかどうかはさておいて、悩み事があるのは確かです――考え事のしすぎで湯あたりを起こしたんですから、何も無いけど溺死寸前まで行ったとごまかせやしません。
「実はですね……」
買い物の最中に私の発言から色気を付ける練習をするとなったことを説明すると、結ちゃんは口を半開きにしたまま驚きの表情を見せます。
タピオカを飲むストローくらいなら差し込めそうな小さく開いた口元をじろりと見やるのもなんだかおかしい気がしたので。
「何か驚くようなことでも……?」
「や、お姉ちゃんは世界一って言うか、痴女レベルの色気持ちだと思ってたから」
「褒め言葉なんですかそれ」
声色やイントネーションからして褒められているかとは思うんですが、一般的に痴女というのはさげすんで言われる言葉かと。
私は私服も若干地味で部屋着は全身1980円(税込み)なので、歩くインモラルって感じの人間とはほど遠いと思ってましたが、結ちゃんの目から見るとお姉ちゃんは色気ムンムンみたいです。
「お姉ちゃんはね、確かに服はデバフになってると思うよ。お姉ちゃんが眠り姫だったら王子様もないわーって言って帰ってると思う」
「おとぎ話でもバッドエンドになるくらい地味ですかこの服!?」
むしろヘンゼルとグレーテルみたいに凄惨な物語が多い童話ですし、某王子様はネクロフィリアだったとか暗黒要素がありますが、ジャージを着ているから王子様も逃げ出すのは斬新すぎます。
「ただね! お姉ちゃんのバフ! 脱ぐとすごいは色気大爆発だよ! 世界崩壊を望む魔王だってお姉ちゃんの脱ぐとすごいをみたら改心して従順な下僕になると思うね!」
「世界崩壊を望むような魔王は違う世界でおとなしくして欲しいんですが……」
どのようなつらい境遇であろうとも世界崩壊を望むとかそんなのはエゴですし、おもちゃ箱をひっくり返して中身に当たるレベルのわがままと幼児性です。
まあ、私の言葉でその人がいい方向に向かうのならば納得ですが……ともあれ、そのような人でもイエスマンになっちゃうのが私の……恥ずかしいですね、カラダとかの表現を使うのは。
「ちっちっち、お姉ちゃんのカラダはね、言語の通じない相手でも通じるくらい素晴らしいんだよ! ところで何の話だっけ」
「私に色気があるか否かの話で、今度、愛さんと練習をするという話ですね」
「じゃあ私も同伴するね」
サイコロで6が出たから6マス進みますね、くらいの気軽さで同行を提案されましたが、この場においては愛さんの返答待ちにさせてもらいました。
なお、彼女には「もちろんかまいません」とあっけなく了承をされ、さらには「余も」「私も」と初ちゃんや悠ちゃんまで一緒に行くことになりました。
や、せっかくのお休みを私のお色気を付けるための練習に利用していいんですかと言ったんですが、二人して「世界が崩壊しても行く」と仰るので……。
行けたら行くという文句は何度か聞いた覚えはありますが、世界が崩壊しても行くとかは初耳です。
むしろ世界が崩壊したら私もろともみんな死んでしまうのでは? とも考えましたが、そもそも世界はそんな簡単に崩壊しないので無駄な考えでしょう。
結ちゃんに文字通りの冷水をシャワーで浴びせかけられてなければ、月島家が事故物件になってた可能性すらあります。
何十年ローンの新築をただの考え事で人が住めない状況に置けば、さすがの私も申し訳なさで化けて出そうです――じゃあ事故物件の原因が君では無いかと指摘されてしまいそう。
「はい、レモン果汁入りのお水」
火にかけられたヤカンみたいだった私が、母をふくめた皆の必死の介抱により体調不良レベルまで回復してからしばらく。
心配げに(5分前以来通算4回目)来訪した妹ちゃんが飲み物を差し出してくれました。
コップを傾けて口に当て両手で落とさないように慎重に、まるで優勝したお相撲さんが杯でお酒をいただくような感じです。
「はぁ……五臓六腑にしみわたりますね」
「そんな晩酌しているお父さんじゃあるまいし」
苦笑いをしながら結ちゃんが返答しますが、少しでも茶化さないと罪悪感で押しつぶされてしまいそうになります。
しかも考え事の原因が話をごまかすためにひねり出した色気を出す練習というモノ、お風呂場で赤くなって出てくるとか色気のかけらも無い私が練習したところで身につけられるか否か。
というより、お色気なんてモノがどうやれば身につけられるモノなのか想像すらつきません。
しなを作りながら「ルパ~ン」と言えばできるかと言えばそうでは無いでしょう、大泥棒だって「オメーに不二子は無理」としらけた顔で言われるに違いありません。
「とてもおいしく頂きました……ですがなぜレモン水を?」
「だってお姉ちゃん妊娠してるんでしょ?」
コップが空になってなければベッドの上が大惨事になっていたことでしょう。
涙目になるくらいに咳き込んでから、嗚咽のように「な、な」と繰り返し、背中をさするように胸元を触ってくる妹ちゃんにツッコミを入れることすらかなわない。
「私にそんな相手がいるとお思いで!?」
「初ちゃんに、覇王様に、今日来たミホノブルボンさん」
「ブルボンさんでは無いですよ、本人も乗っかってましたが!」
結ちゃんが「ブルボンさん」って呼んだら「調整モードに移行します」って景気よく返していましたからね? 声色もちゃんと似通わせていましたからね? なにげに芸達者で私びっくらぽんでしたよ?
「まあ冗談はともかく、すごい悩み事はあるんだよね?」
「心臓に杭でも刺さったみたいな衝撃でしたが、その通りです」
すごいかどうかはさておいて、悩み事があるのは確かです――考え事のしすぎで湯あたりを起こしたんですから、何も無いけど溺死寸前まで行ったとごまかせやしません。
「実はですね……」
買い物の最中に私の発言から色気を付ける練習をするとなったことを説明すると、結ちゃんは口を半開きにしたまま驚きの表情を見せます。
タピオカを飲むストローくらいなら差し込めそうな小さく開いた口元をじろりと見やるのもなんだかおかしい気がしたので。
「何か驚くようなことでも……?」
「や、お姉ちゃんは世界一って言うか、痴女レベルの色気持ちだと思ってたから」
「褒め言葉なんですかそれ」
声色やイントネーションからして褒められているかとは思うんですが、一般的に痴女というのはさげすんで言われる言葉かと。
私は私服も若干地味で部屋着は全身1980円(税込み)なので、歩くインモラルって感じの人間とはほど遠いと思ってましたが、結ちゃんの目から見るとお姉ちゃんは色気ムンムンみたいです。
「お姉ちゃんはね、確かに服はデバフになってると思うよ。お姉ちゃんが眠り姫だったら王子様もないわーって言って帰ってると思う」
「おとぎ話でもバッドエンドになるくらい地味ですかこの服!?」
むしろヘンゼルとグレーテルみたいに凄惨な物語が多い童話ですし、某王子様はネクロフィリアだったとか暗黒要素がありますが、ジャージを着ているから王子様も逃げ出すのは斬新すぎます。
「ただね! お姉ちゃんのバフ! 脱ぐとすごいは色気大爆発だよ! 世界崩壊を望む魔王だってお姉ちゃんの脱ぐとすごいをみたら改心して従順な下僕になると思うね!」
「世界崩壊を望むような魔王は違う世界でおとなしくして欲しいんですが……」
どのようなつらい境遇であろうとも世界崩壊を望むとかそんなのはエゴですし、おもちゃ箱をひっくり返して中身に当たるレベルのわがままと幼児性です。
まあ、私の言葉でその人がいい方向に向かうのならば納得ですが……ともあれ、そのような人でもイエスマンになっちゃうのが私の……恥ずかしいですね、カラダとかの表現を使うのは。
「ちっちっち、お姉ちゃんのカラダはね、言語の通じない相手でも通じるくらい素晴らしいんだよ! ところで何の話だっけ」
「私に色気があるか否かの話で、今度、愛さんと練習をするという話ですね」
「じゃあ私も同伴するね」
サイコロで6が出たから6マス進みますね、くらいの気軽さで同行を提案されましたが、この場においては愛さんの返答待ちにさせてもらいました。
なお、彼女には「もちろんかまいません」とあっけなく了承をされ、さらには「余も」「私も」と初ちゃんや悠ちゃんまで一緒に行くことになりました。
や、せっかくのお休みを私のお色気を付けるための練習に利用していいんですかと言ったんですが、二人して「世界が崩壊しても行く」と仰るので……。
行けたら行くという文句は何度か聞いた覚えはありますが、世界が崩壊しても行くとかは初耳です。
むしろ世界が崩壊したら私もろともみんな死んでしまうのでは? とも考えましたが、そもそも世界はそんな簡単に崩壊しないので無駄な考えでしょう。
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