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34 魔工と迷宮
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こちらでも週に一度は仕事休みの日。まあ、私達にはあまり関係はないのだけど。色々なお店が閉まっているのが困るぐらい?
そんなわけで、ケヴェスンさんの工房に来ている。店と工房が一体化しているような造りだ。今日はお店が休みなので、工房見学プラス魔工について教えてもらいに来ているわけだ。まあ、来店するのは特別な物を頼みに来る人だけなので、普段いる店番も暇らしい。たまにくる注文を店番が受けて、休日にそれをケヴェスンさんが開発すると。普通の日はギルドにいなければならないので(実際はギルドでも書類整理の合間に魔工のアイデアを考えているらしいけど)。
ちなみにお邪魔しているのは、私とフレアだけだ。アルスとイルダは二人仲良くデート、じゃなくて町の外へ魔物退治に行っている。ギルドの依頼を受けたらしい。
「一度『設計』出来れば、あとは他の技師が作成可能ですから」
魔石を弄りながらケヴェスンさんは言う。ちなみに、今ケヴェスンさんが作っているのは、私の提案した白鳥型ボートの推進装置だ。
魔工は、呪文を刻んだ魔石同士をたくさん繋げて、色々な処理をさせるのが基本。小さな魔石には単純な呪文しか刻めないので、複雑な処理をするにはたくさんの魔石が必要だという。大きな魔石には複雑な呪文が刻めるけど、それにはそれ相応の魔力が必要になるし、魔石も高価だ。いかに単純な処理をうまく組み合わせて目的となる処理を実現するか、それが魔工技師の腕の見せ所らしい。
…なんかコンピュータのプログラムか電子回路みたいな話?小さなサブルーチンを組み合わせて大きなプログラムを作るとか、単純な部品を組み合わせて複雑な回路を作るみたいな…。
「私は一つの曲を作るようなものだと習いましたよ。単純な音を組み合わせて大きな曲を作るというような…」
「でも音と対応する魔法は無関係で人によって違うし、呪文もイメージを得るだけって話でしょ?それで魔石に音や呪文を刻んで、他の人が使っても思ったとおりの魔法が動作するって変じゃないの」
「…ああ、その話ですか。要するに刻むのは結局『イメージ』なんですよ。魔石にはイメージと魔力の両方を込めることができます。一番単純なのは灯りですかね。魔石に『ルーメン』をイメージで刻み、さらに魔力を込めます。手で触れて起動すれば光が灯りますし、魔力を補充することも出来ます」
やっぱりイメージか…。結局魔法って何なんだろう。イメージを魔力で具現化する、って以外何もわかっていないような。
「うーん、今度魔石を買って色々やってみようかしら」
今までの依頼で手に入れたお金は結構溜まってるし。
「練習だけなら買わなくても良いでしょう?」
「え?だって、魔物を倒した後に出た魔石って、結構高く売れたと思うけど…」
「ああ、ああいう大きくて純度が高いものは値段も結構しますが」
「ユウカさん、ご存じなかったのですか?ごく小さい魔石は地面に普通に落ちていますよ。特に透明なのは大体魔石ですね」
「…マジ?石英とかじゃないの?」
フレアに言われてびっくりだ。もしかして、この世界でいう魔石って、ただの鉱物の結晶なんじゃ…。
「セキエイ?呪文を刻むと色が変わるので、最初は無色の魔石を使うと分かりやすいですね。ちなみに、魔力を込めすぎると破裂したりするので、大きなものは危なくて優秀な魔工技師でないと、あまり使わないんですよ」
「ユウカさんは特に気を付けた方が良さそうですね…」
「ここにいたか!」
声と共に突然店に飛び込んできたのはアルス。イルダも後ろに見える。
「何なの、びっくりするじゃない」
「…あ、ああ、すまない。ケヴェスンさん、いやギルドマスターに緊急の用事だよ」
アルスの言葉に全員が緊張する。ギルドマスターへの緊急の用事なんて、ろくなことではないに決まっている。
「…それでどうしました?」
「新しい迷宮が見つかった。しかも街道沿い、入り口の大きさから見るに規模も大きいらしい」
ケヴェスンさんの問いに、今度はイルダが答える。私とフレアは顔を見合わせた。
**********
私達は、五人で冒険者ギルドに向かっていた。良く考えると、私はこの町のギルドに行くのは初めてだ。ケヴェスンさんに呼ばれて初めて会ったのは湖の畔だったし。
「既に、事情を知っている他の冒険者はギルドに行っているはずだ。非常時の職員の招集や会議の準備もされていると思う。俺達は、手分けしてギルドマスターを呼びに来る役目を買って出たって訳だ。ユーカとフレアは、今日はギルドマスターのところに行くと聞いてたからな」
「あたしらは、最近街道沿いに魔物が出るというので、その退治の依頼で行ってたんだけど、他の冒険者が迷宮を見つけてね。おかげで魔物と殆ど戦闘も出来ないうちに戻る羽目になったよ、ったく」
イルダは、魔物と戦えなかった事が残念らしい。
「迷宮?」
「…ああ、ユーカはそこからか。自然に地下に発生する迷路だよ。中は階層に分かれていて、下層に行くほど強い魔物がいる」
「本に載ってたわ。迷宮の核というものがあって、その核が魔物を発生させながら迷宮を成長させるんでしょ?核を破壊すれば、魔物は発生しなくなるし、迷宮の成長も止まるとか」
「下層に行くほど、より強力な魔物がいるけど、色々な素材や、高価なアイテムの入った宝箱もある。冒険者にとってはありがたいものとも言えるな。あたしも別の場所で入ったことがあるよ」
「何で宝箱なんかがあるの?」
誰がそんなものを置いているんだか。
「核の成長のためには、動物や人間を呼び込んで、その魔力や生命力を吸収する必要がある。そのため、希少なアイテムを用意するらしいぜ」
「高価なアイテムを餌に冒険者を下層まで呼び込んで、強力な魔物で迎えるって、まるっきり罠じゃないの。何でそんなところに行くんだか」
「いや、ユーカ、そういうもんなんだって」
私の言葉に、イルダが苦笑する。
「呼び込まれている人間も含めて迷宮を形成しているということでしょうね」
フレアが言う。
「確かに、中で力尽きた冒険者なんかは迷宮側から見れば美味しい素材と言えるよな」
「あー」
浅い層には弱い魔物しかいなくて、下層に行くほど強い魔物がいるっていうのは、ゲームじゃあるまいし都合が良すぎるみたいだけど、一応理屈はあるらしい。
つまり、出来たばかりの小さな核は、弱い魔物しか発生させられない。核が成長すると、新しい階層を作りながらどんどん地下に潜っていく。成長した核は、より強い魔物を発生させることが出来るけど、その力は核からの距離が離れるほど弱くなる。結果として、どんなに迷宮が深くなっても、浅い階には弱い魔物しか出ないわけだ。
「核って何なのかしら」
「魔石ですよ。迷宮を作る呪文の込められた魔石です。魔石が周囲の魔力を吸収して、自然に暴走した物と考えられています。正直なところ良く分かってないのですが。ただ…」
ケヴェスンさんが言い淀む。
「ただ?」
「ただ、ある程度大きくなった迷宮なら、外部からの素材で成長できますが、最初の発生には周囲の環境に暴走するための魔力が必要なはずです。この辺りの地域は、魔力が少なく、魔物も滅多に見ないぐらいですから、迷宮が発生するのは些か不自然ですね…」
「成長するのにも時間が掛かるはずだから、いきなり大きなものが見つかるってのも変なんだよな」
アルスが言う。面倒くさい話にならなければいいけど…。
**********
ギルドに着くと、受付嬢が黙って頷くので、こちらも頭を下げてケヴェスンさんに続いて二階に上がっていく。ここの受付嬢も、他所で見た人と同じ人に見えたけど、今はそんなことを気にしている場合ではない。
二階の手前のドアをケヴェスンさんが開けると、そこは会議室のようだった。私達が部屋に入ると、部屋にいた皆が一斉にこちらを見て、私に視線が留まった。机は口の字形に並んでいて、奥にはこちら向きに座っている男の人が一人。ギルドの関係者だろう。右側に隣り合って座っている男女は同じパーティーだろう。左側に一人で座っている若い男の人はソロの冒険者か。耳が尖っていて中性的な整った顔。エルフ?
女性の冒険者は、私を見て驚いて声を上げそうになったのか、慌てて口を抑えている。目は真ん丸だ。
ケヴェスンさんは前に行くと、ギルドの関係者と思われる男の人の横に座った。私達も手前側に並んで座る。
「さて、早速会議を始めたいところですが…、まずは自己紹介ですかね」
「ギルドマスターと副長はもちろん、一緒に魔物討伐の依頼に行った面々は知ってるぜ。フレアの嬢ちゃんはこの町じゃ有名人だし…、知らないのはそこのお嬢ちゃんだけだな。まあ見当は付くが」
「お前が分かっても相手は分からないだろうに」
右側の男の人が言うと、ケヴェスンさんの隣の人が突っ込む。なるほど、副長か。
「私が副長のアズノールだ。それで、今話したのがサイラス、隣は同じパーティーのシオン。サイラスは槍が得意だったかな?シオンは魔法使いだ。腕利きのパーティーだな。で、そっちのが…」
「ザクルだよ。見ての通り、エルフさ。でも魔法は苦手で、剣と弓が専門。ソロで活動してるよ」
「俺はサイラス。四人でパーティーを組んでる。ここには二人しかいないがな。よろしく頼む。…おい、どうした?」
シオンと呼ばれた女の魔法使いが、私の顔を見て、驚いた表情で固まったままだ。
「こんな、こんな魔力信じられない…。サイラス、あの子の魔力底なしだよぅ」
「お前から見てもそんなにか?」
「比べ物にならない…。数十倍、数百倍なんてものじゃないよぅ」
「なるほど、噂通りという訳だね。魔力量を見ることが出来ない僕には分からないけど」
ザクルさんが、何やら嬉しそうに言う。
「あ、えっと悠歌っていいます。よろしくお願いします」
「うんうん、よろしく」
「よ、よろしく…」
「じゃあ、迷宮の調査はこのメンバーで良いってことだな」
「いや、サイラスさん、まず報告をお願いしますよ。ここにいる中で、迷宮を実際に見たのはサイラスさん達だけなのでしょう?」
ケヴェスンさんが笑いながら言った。
そんなわけで、ケヴェスンさんの工房に来ている。店と工房が一体化しているような造りだ。今日はお店が休みなので、工房見学プラス魔工について教えてもらいに来ているわけだ。まあ、来店するのは特別な物を頼みに来る人だけなので、普段いる店番も暇らしい。たまにくる注文を店番が受けて、休日にそれをケヴェスンさんが開発すると。普通の日はギルドにいなければならないので(実際はギルドでも書類整理の合間に魔工のアイデアを考えているらしいけど)。
ちなみにお邪魔しているのは、私とフレアだけだ。アルスとイルダは二人仲良くデート、じゃなくて町の外へ魔物退治に行っている。ギルドの依頼を受けたらしい。
「一度『設計』出来れば、あとは他の技師が作成可能ですから」
魔石を弄りながらケヴェスンさんは言う。ちなみに、今ケヴェスンさんが作っているのは、私の提案した白鳥型ボートの推進装置だ。
魔工は、呪文を刻んだ魔石同士をたくさん繋げて、色々な処理をさせるのが基本。小さな魔石には単純な呪文しか刻めないので、複雑な処理をするにはたくさんの魔石が必要だという。大きな魔石には複雑な呪文が刻めるけど、それにはそれ相応の魔力が必要になるし、魔石も高価だ。いかに単純な処理をうまく組み合わせて目的となる処理を実現するか、それが魔工技師の腕の見せ所らしい。
…なんかコンピュータのプログラムか電子回路みたいな話?小さなサブルーチンを組み合わせて大きなプログラムを作るとか、単純な部品を組み合わせて複雑な回路を作るみたいな…。
「私は一つの曲を作るようなものだと習いましたよ。単純な音を組み合わせて大きな曲を作るというような…」
「でも音と対応する魔法は無関係で人によって違うし、呪文もイメージを得るだけって話でしょ?それで魔石に音や呪文を刻んで、他の人が使っても思ったとおりの魔法が動作するって変じゃないの」
「…ああ、その話ですか。要するに刻むのは結局『イメージ』なんですよ。魔石にはイメージと魔力の両方を込めることができます。一番単純なのは灯りですかね。魔石に『ルーメン』をイメージで刻み、さらに魔力を込めます。手で触れて起動すれば光が灯りますし、魔力を補充することも出来ます」
やっぱりイメージか…。結局魔法って何なんだろう。イメージを魔力で具現化する、って以外何もわかっていないような。
「うーん、今度魔石を買って色々やってみようかしら」
今までの依頼で手に入れたお金は結構溜まってるし。
「練習だけなら買わなくても良いでしょう?」
「え?だって、魔物を倒した後に出た魔石って、結構高く売れたと思うけど…」
「ああ、ああいう大きくて純度が高いものは値段も結構しますが」
「ユウカさん、ご存じなかったのですか?ごく小さい魔石は地面に普通に落ちていますよ。特に透明なのは大体魔石ですね」
「…マジ?石英とかじゃないの?」
フレアに言われてびっくりだ。もしかして、この世界でいう魔石って、ただの鉱物の結晶なんじゃ…。
「セキエイ?呪文を刻むと色が変わるので、最初は無色の魔石を使うと分かりやすいですね。ちなみに、魔力を込めすぎると破裂したりするので、大きなものは危なくて優秀な魔工技師でないと、あまり使わないんですよ」
「ユウカさんは特に気を付けた方が良さそうですね…」
「ここにいたか!」
声と共に突然店に飛び込んできたのはアルス。イルダも後ろに見える。
「何なの、びっくりするじゃない」
「…あ、ああ、すまない。ケヴェスンさん、いやギルドマスターに緊急の用事だよ」
アルスの言葉に全員が緊張する。ギルドマスターへの緊急の用事なんて、ろくなことではないに決まっている。
「…それでどうしました?」
「新しい迷宮が見つかった。しかも街道沿い、入り口の大きさから見るに規模も大きいらしい」
ケヴェスンさんの問いに、今度はイルダが答える。私とフレアは顔を見合わせた。
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私達は、五人で冒険者ギルドに向かっていた。良く考えると、私はこの町のギルドに行くのは初めてだ。ケヴェスンさんに呼ばれて初めて会ったのは湖の畔だったし。
「既に、事情を知っている他の冒険者はギルドに行っているはずだ。非常時の職員の招集や会議の準備もされていると思う。俺達は、手分けしてギルドマスターを呼びに来る役目を買って出たって訳だ。ユーカとフレアは、今日はギルドマスターのところに行くと聞いてたからな」
「あたしらは、最近街道沿いに魔物が出るというので、その退治の依頼で行ってたんだけど、他の冒険者が迷宮を見つけてね。おかげで魔物と殆ど戦闘も出来ないうちに戻る羽目になったよ、ったく」
イルダは、魔物と戦えなかった事が残念らしい。
「迷宮?」
「…ああ、ユーカはそこからか。自然に地下に発生する迷路だよ。中は階層に分かれていて、下層に行くほど強い魔物がいる」
「本に載ってたわ。迷宮の核というものがあって、その核が魔物を発生させながら迷宮を成長させるんでしょ?核を破壊すれば、魔物は発生しなくなるし、迷宮の成長も止まるとか」
「下層に行くほど、より強力な魔物がいるけど、色々な素材や、高価なアイテムの入った宝箱もある。冒険者にとってはありがたいものとも言えるな。あたしも別の場所で入ったことがあるよ」
「何で宝箱なんかがあるの?」
誰がそんなものを置いているんだか。
「核の成長のためには、動物や人間を呼び込んで、その魔力や生命力を吸収する必要がある。そのため、希少なアイテムを用意するらしいぜ」
「高価なアイテムを餌に冒険者を下層まで呼び込んで、強力な魔物で迎えるって、まるっきり罠じゃないの。何でそんなところに行くんだか」
「いや、ユーカ、そういうもんなんだって」
私の言葉に、イルダが苦笑する。
「呼び込まれている人間も含めて迷宮を形成しているということでしょうね」
フレアが言う。
「確かに、中で力尽きた冒険者なんかは迷宮側から見れば美味しい素材と言えるよな」
「あー」
浅い層には弱い魔物しかいなくて、下層に行くほど強い魔物がいるっていうのは、ゲームじゃあるまいし都合が良すぎるみたいだけど、一応理屈はあるらしい。
つまり、出来たばかりの小さな核は、弱い魔物しか発生させられない。核が成長すると、新しい階層を作りながらどんどん地下に潜っていく。成長した核は、より強い魔物を発生させることが出来るけど、その力は核からの距離が離れるほど弱くなる。結果として、どんなに迷宮が深くなっても、浅い階には弱い魔物しか出ないわけだ。
「核って何なのかしら」
「魔石ですよ。迷宮を作る呪文の込められた魔石です。魔石が周囲の魔力を吸収して、自然に暴走した物と考えられています。正直なところ良く分かってないのですが。ただ…」
ケヴェスンさんが言い淀む。
「ただ?」
「ただ、ある程度大きくなった迷宮なら、外部からの素材で成長できますが、最初の発生には周囲の環境に暴走するための魔力が必要なはずです。この辺りの地域は、魔力が少なく、魔物も滅多に見ないぐらいですから、迷宮が発生するのは些か不自然ですね…」
「成長するのにも時間が掛かるはずだから、いきなり大きなものが見つかるってのも変なんだよな」
アルスが言う。面倒くさい話にならなければいいけど…。
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ギルドに着くと、受付嬢が黙って頷くので、こちらも頭を下げてケヴェスンさんに続いて二階に上がっていく。ここの受付嬢も、他所で見た人と同じ人に見えたけど、今はそんなことを気にしている場合ではない。
二階の手前のドアをケヴェスンさんが開けると、そこは会議室のようだった。私達が部屋に入ると、部屋にいた皆が一斉にこちらを見て、私に視線が留まった。机は口の字形に並んでいて、奥にはこちら向きに座っている男の人が一人。ギルドの関係者だろう。右側に隣り合って座っている男女は同じパーティーだろう。左側に一人で座っている若い男の人はソロの冒険者か。耳が尖っていて中性的な整った顔。エルフ?
女性の冒険者は、私を見て驚いて声を上げそうになったのか、慌てて口を抑えている。目は真ん丸だ。
ケヴェスンさんは前に行くと、ギルドの関係者と思われる男の人の横に座った。私達も手前側に並んで座る。
「さて、早速会議を始めたいところですが…、まずは自己紹介ですかね」
「ギルドマスターと副長はもちろん、一緒に魔物討伐の依頼に行った面々は知ってるぜ。フレアの嬢ちゃんはこの町じゃ有名人だし…、知らないのはそこのお嬢ちゃんだけだな。まあ見当は付くが」
「お前が分かっても相手は分からないだろうに」
右側の男の人が言うと、ケヴェスンさんの隣の人が突っ込む。なるほど、副長か。
「私が副長のアズノールだ。それで、今話したのがサイラス、隣は同じパーティーのシオン。サイラスは槍が得意だったかな?シオンは魔法使いだ。腕利きのパーティーだな。で、そっちのが…」
「ザクルだよ。見ての通り、エルフさ。でも魔法は苦手で、剣と弓が専門。ソロで活動してるよ」
「俺はサイラス。四人でパーティーを組んでる。ここには二人しかいないがな。よろしく頼む。…おい、どうした?」
シオンと呼ばれた女の魔法使いが、私の顔を見て、驚いた表情で固まったままだ。
「こんな、こんな魔力信じられない…。サイラス、あの子の魔力底なしだよぅ」
「お前から見てもそんなにか?」
「比べ物にならない…。数十倍、数百倍なんてものじゃないよぅ」
「なるほど、噂通りという訳だね。魔力量を見ることが出来ない僕には分からないけど」
ザクルさんが、何やら嬉しそうに言う。
「あ、えっと悠歌っていいます。よろしくお願いします」
「うんうん、よろしく」
「よ、よろしく…」
「じゃあ、迷宮の調査はこのメンバーで良いってことだな」
「いや、サイラスさん、まず報告をお願いしますよ。ここにいる中で、迷宮を実際に見たのはサイラスさん達だけなのでしょう?」
ケヴェスンさんが笑いながら言った。
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