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BLADE-S 上

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 日本にはまだ、忍者一族の生き残りがいるのは知っているだろうか?
 
 華麗に忍び、華麗に切る、彼らを刀に例えて“BLADE-S(ブレイズ)”と呼ぶ。


 歴史上の凶悪犯罪者達が殺されたり、自殺したり、行方不明になっているニュースを見た事は無いだろうか?

 中には彼らの任務が関わっている物もある、ネット社会になり、法では裁ききれない犯罪者の成敗は、彼らに依頼する人も最近では少なくない。

 今回は皆様と一緒に、その中の一つの任務を見ていこう……

 ここは都内から少し外れた春日野道高校(かすがのみちこうこう)
一人の女子高生がイジメにあっていた。

 彼女の名前は、日比谷 桜(ひびや さくら)物静かで、大人しい女の子だ。

 桜は教室の扉を開けながら挨拶した

「おはよう…」

「シーーン」

 クラスでは誰一人彼女と会話する生徒は居なかった。自分の席に座ろうとすると机には落書き、椅子には画鋲が置いてあった。

 彼女はパラパラと椅子から画鋲を落として、卑猥な落書きを腕で隠し、何事もなく席に着いた。

「あの涼しい態度がムカつくのよね!」

 そう言ってペンを回してイライラしていたのは、同じクラスの鈴原 陽子(すずはら ようこ)。彼女をいじめているグループのリーダーだ。  

「陽子~そろそろ呼び出しすれば?」  

 呼び出しとは、女子の中で流行っているトイレに呼び出して殴ったり蹴ったりする、いわゆるただの暴行だった。

友達からの提案に、陽子はいいねーと指を立てて桜を見ながらこう言った

「私、今日生理だしイラつくから、放課後トイレに呼び出してストレス発散しよう」

「手紙書いて机に入れておこうよ!」

 彼女達は手紙を書いて桜がいない時を見計らい、机に放り込んだ。

 …放課後、桜は手紙に書いてあった二階女子トイレに来た。トイレ入口上部にはバケツに水が入ったトラップが仕掛けてあった。

 「よし、今よ!」

 そう言うと陽子は友達と一緒にバケツの紐を引っ張った。

 しかし、桜はトイレの扉が固かった為か、皆の予想よりワンテンポ遅れて入口に入ったので、水の入ったバケツは空を舞い、地面が水浸しになった。

「わっ!びっくりした」

 桜は頭をかすめたバケツに驚き、後退りした。陽子はそれを見て更にイライラした。

「あんた!毎回鈍臭いのよ!本当見ていてイライラするわ!」

「ご、ごめんなさい…また怒らせちゃって」

 桜はバケツを拾い、はいっと陽子に返した

「い、いらないわよ!私をなめてるの?!」

 そう言って、ふと陽子が桜のスマホを見ると、画面は“BLADE-S”の掲示板が開いてあった。

「あんた!まさか私達の事を神社の絵馬に書いて、ブレイズから仕返しさせようとしてるんじゃないでしょうね!!」

「そ…そんなんじゃないよ」

 陽子の怒りは頂点に達した。陽子は唇を噛み締めると、右手を振りかざし桜の左頬を思いっきり振り切るくらいビンタした。

「いたっ!」

 その勢いで桜は倒れた。トイレの床は先程のトイレの水が残っていたので、桜の制服は水に濡れてしまった。

「ううう…」

 桜は泣き出した。濡れた制服の水をはたきながらゆっくり立ち上がり、ポケットから小さい汚れた手鏡を出した。

「な、何よ!それ」

 陽子は桜が取り出した鏡を見た。ポケットから出てきたのは、割れた手鏡だった。桜が倒れた時に割れてしまったのだ。

「死んだお母さんから昔貰った、大事な思い出の鏡なのに…ううう…」

 陽子は一瞬ハッとしたが、後ろを向きこう言った。

「あんたが倒れたからでしょ!知らないわよそんな汚い鏡!」
「授業が始まるわ!行くわよ!」

 陽子は仲間を引き連れて教室に帰って行った。桜は泣きながら鏡を両手で包み込んだ。

 陽子は教室の席に戻ると窓から見えるグラウンドを見ながら足を組んで、イライラした様子で片方の足をブラブラしていた。

「あいつが悪いんだから…知らないわよ」


その日の夜…夕ご飯を終えた陽子は、自分の部屋でスマホのニュース動画を見ていた。

「本日夕方、複数人の何者かが宝石店ジュエルアースの社長宅に忍び込み、経営者の山村 重道社長を殺害しました。」

「地元住人から叫び声を聞いたと通報があり、警察が山村社長宅を調べると、地下には未成年の女の子8人が監禁されており、いずれも行方不明だった女の子だったとの事です。」

 陽子はニュースを見て震えた。

「また殺したのはブレイズでしょ、どうせ…正義の味方かどうか知らないけど、依頼したら誰でも殺すのよ。あの集団は!」

「…もし桜のバカが絵馬に依頼を書いたら、私もブレイズに殺されるかも」

 陽子は枕に顔を埋め、自分のしてきた事を初めて後悔した気がした。


 その頃桜宅では仕事から帰った父親が遅めの夕飯を作っていた。鍋の中のカレーをおたまで回しながら、父親は元気の無い桜を見てこう言った。

「桜ぁ…なんか嫌な事あった?」

 桜は机の上にいるハムスターと遊んでいたが、その問いかけに一瞬ビクっとした。

「別に…何にも無いよ」

「そう、桜、なんか…いじめられてない?最近、鞄とかぐちゃぐちゃになったりしてるし…で、ほっぺたのアザはどうしたの?」

「うるさいな!何にも無いって!」
「今日ご飯いらないから!」

 桜はそう言い放つと、ハムスターを抱えて二階に上がった。

 部屋に戻り、ハムスターをケージにしまい、月明かりの下、桜は割れた鏡を見つめていた。

「お母さん…ごめんなさい、鏡割れちゃった…」

 桜が悲しみの中涙を流していると、窓をコンコン…と叩く音がした。

 音がした窓の方に向かうと、黒いパーカーを頭から被った男が屋根に座っていた。
 
 彼の額には赤い鉄の板がついた鉢巻きをしていた。その板にはBLADE-Sと彫ってあった。

 桜はゆっくり窓を開けた。
男は桜を見て、よっ…と右手を上げた。

「新しい任務だぜ、村正」

BLADE-S  下編に 続く
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