母からの贈り物は超不良執事。女垂らしで妖艶な彼と一つ屋根の下で同棲生活

酸っぱい苺

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純白が紅く染まる時

episode39 心と体の傷 後編

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泣くほど辛かったのか?
彼の問いに首を横に振って否定したら
「なら、なんで泣く?」
と尋ねられる。
(あ‥‥とりあえず中に)
応えるために書くものも持ち合わせていなかったので、彼を引っ張って部屋の中に招き入れる。

『‥あなたに嫌われると思ったから。』
近くにあった画用紙に鉛筆を走らせる。
「はぁ?なんで俺がお前を嫌うんだ?」
『傷を‥見たから。』
「キズ?」
『胸の傷痕‥』
「あぁ‥確かに痛々しかったが、それがどうした?」

(‥え)
思った反応と違ったので内心かなり戸惑う。これまで傷を見られた経験上、初めての反応だった。
「なんだ?鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして。」
『‥私こと、気持ち悪くない?』
「ん?」
『この傷を見たら‥皆んな怖がって気味悪がるから。自分でも見ていていつも気持ち悪いです。』
「確かに痛々しかったが‥その傷でお前のことを嫌いになるわけないだろ。」
『‥え。』
「お前が頑張って手術した傷だろう?」

確かにこの傷は彼がいうように、幼い頃から受けてきた心臓の手術でついた傷だったので頷く。
「お前が努力して生きようとした証だ。」
(努力してついた証‥)
『‥‥‥』
「それを見てお前のことを嫌いになるやつがどこにいる。」
『‥‥‥‥っ』
「お前とは数ヶ月だが一緒に屋敷で過ごしてきた。優しくて意外と強い奴ってことも分かってる。自分に自信がないのはいただけねぇが‥」
これまで生きてきて、この傷をみて褒めてくれた人は初めて出会った。
彼は私の頭をぽんぽんと撫でながら言葉を紡ぐ。
「‥痛かったろ?」
(‥?)
何に対してなのか分からず、思わず首を傾げる。
『手術の時?』
「手術の時もそうだし、今まで傷を見て汚いっていわれたんだろ?」
『‥‥‥』
何もいえず俯いた。
「心も痛かっただろう?」
『‥‥‥っく。』
「その傷があってもお前は汚くない。折角かわいく生んでもらったんだ。少しは自信持て。俺はお前のこと、嫌いにならないから。安心しろ。」
『‥‥‥っ。』
大丈夫だからと抱きしめてくれる彼の胸の中で泣き続けた。

「おい。いつまで泣いてんだ。流石に泣きすぎだろ。」
(‥ごめんなさい。)
彼の腕からサッと離れる。
「よし。もう傷を気にするのは禁止な。それより、今日は夜食ないのか?」
(‥‥‥!)
おにぎりを用意していたのをすっかり忘れていた。
『すぐ取ってきます!』
と部屋を後にしたら

「それよか、お前、傷より胸を気にしろよ。」
『‥‥‥!』
「そんなに痩せてたら小さくても仕方ないが、大丈夫まだ成長期だ。俺が大きくしてやるよ。」
『‥‥‥え!?』
「ははははははっ。ははっ。」

慌ててドアを閉めて赤くなった耳を隠した。
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