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26、新婚生活はまだ遠い
しおりを挟む結局ベルと僕の結婚は有耶無耶になり、それぞれ研修先の隊の隊員に引き摺られ騎士団での元の生活に戻る。
しかし一つ違ったのは、何処に行くにも僕にぴったりとランバがくっついてくる事だ。
「…なんでランバが付いてくるの?僕一人で大丈夫なんだけど。」
「いーや。大丈夫ではねぇな。それにこれはファビアン殿下の命令だから。ちなみに隊変わっても付いてくからな?」
僕はよっぽど嫌そうな顔をしていたのだろう。
ランバに頬を掴まれ、タコのように口を突き出した状態で眉間に皺を寄せた。
「はなしぇ!」
「あのなぁ~何度も言うけど俺先輩よ?もう少し敬えっての。敬語はどうした、敬語は。」
「ヤリチンにちゅかうけいごはない!」
「ほーん?お前だってあの彼氏とヤりまくってるくせに何言ってんだかねぇ?」
ランバの言葉に一瞬頬が熱くなり言葉に詰まったが、よく考えれば僕とベルは恋人なんだからヤりまくって何が悪いのか。
一緒にされちゃ困ると、慌ててランバの手を外しキッと上目遣いで睨みつけた。
「僕達は恋人なんだからヤりまくったって良いだろ!ランバの相手は恋人じゃないんだから、一緒にすんな!」
「ふーん、そこは否定しないと。そーんな良いんだ?あの彼氏君。…ん?」
そこでランバの視線が僕の後ろで固定され、不思議に思った僕も振り向く。
そこには張り付けた笑顔で誰かと話すファビアン王子が居て、僕は一緒に居る人物の顔に目を見開いた。
「…ありゃ来月来る予定だった隣国のヴァイツェ王子だなぁ。一緒に連れてるのは近衛騎士か?何かヴァイツェ王子より存在感すげぇけど…」
のほほんと穏やかに笑うヴァイツェ王子とやらの横で、無表情で佇む男。
一つに結んでいた長い銀髪と鋭い紅い目が灰色髪のピンク眼に変わってはいるが、顔立ちに物凄く見覚えが…なんてボケっとしてたのがいけなかったらしい。
そいつは僕に気付くと、他に分からないくらいの口の動きで「ミツケタ。」と呟いた。
「!!!」
僕は咄嗟にお尻を隠し、慌ててその場から逃げ出す。
シュ、シュゲルク王子!!
何でココに!?
そろそろ開放されるから気を付ける様に兄様から言われてたけど、この前召喚された時はまだ縛られてたのに…!
お尻を押さえながらソワソワする僕を見て、追い掛けて来たランバが怪訝そうな顔をした。
「何だよ、いきなりどうした。」
「ぼ、ぼく、あの灰色髪の方に昔お尻に突っ込まれて、大怪我したんだよ…!あの状態だったんならあれから誰ともヤッてないだろうし、絶対下手くそのままだ…!僕もうベル以外に突っ込まれたくないのに…!」
動揺して色々余計なことを口走った気がするが、それどころじゃない。
すると落ち着きのない僕を見かねてか、ランバが僕の肩を両手で抑えた。
「今、何つった?お前、あの男に強姦されたのか?」
「強姦?え、いや、ううん、強姦じゃないよ。一応合意だった。だって執拗いんだもん。でも、どうしよう。僕、あんま強く断れないから…いや、断るけど、でも…」
一応自分の国の王子だし…。
目は泳ぐし、無意識なのか何度もお尻を触る僕にランバが何か言おうとした所で、僕は背後から浴びせられた冷気に青褪めた。
い、居る…、追い付かれた…。
しかし情けなくとも僕だって公爵の息子。
身分は上だが、相手は幼馴染である。
思い切って振り返れば、思いの外近距離で見下され息を呑んだ。
「で、ででででん…ッ」
「…シーッ。今はシュルクと呼んでおくれ。会いたかった、レンファ。あぁ、やっとこの腕の中に抱ける…。」
そっと掻き抱くように抱き締められ、僕は逃げ場を失う。
召喚された時は咄嗟に強気に出れたけど、いざ解放されたシュゲルク王子の抑えられていない魔力に体が硬直する。
どうやら縛刑の後遺症か、感情で魔力の制御が甘くなってしまっているようだ。
いや、これ僕だから何とか意識保ってるけど、人間なら気絶ものだよね…?
何とか首を捻りランバを確認すると、なんと真っ青な顔で震えながら踏ん張っている。
エッ、凄い!めっちゃガタガタしてるけど!!
その姿に勇気付けられ、僕は魔力を抑えてもらうべくシュゲルク王子を見上げた。
「あ、あの、でん…シュ、シュルク様?魔力がダダ漏れなので、抑えて下さい…!」
「ん?あぁ、すまんな。それにしてもレンファ、また綺麗になったか?あの時は本当にすまなかった。あまりの嬉しさに我を忘れてレンファを傷付けてしまった…愚かとしか言いようがない。今度こそ失敗しないから、また頼めるか?」
甘い。声がドロッドロに甘いぞ。
それに注がれる視線も僕を溶かしに来てるんじゃないかってくらい熱い。
僕はそんなシュゲルク王子を前に何とか唇を開くと、とりあえず無難な回答を…と声を出した。
「絶対嫌です。」
あ、やべ。本音出ちゃった。
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