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22、【その頃の魔界3】精霊王視点
しおりを挟む「なんですってぇぇ!?竜にレンちゃんを盗られた!?わたくちのレンちゃんを!?何をやってるんですの、この役立たずがぁぁ!!」
今私は妹の前に座り、ひたすら罵られ花を投げつけられている。
そうされても仕方ない。
むしろそうされるべきだと思ったから、不甲斐ない自分を容赦なく責め罵倒してくれる妹の元へとやって来たのだ。
竜はこの世界で神に次ぐ強さを持つ。
精霊族の王と言えど単身で勝つ事は難しい。
騒ぎになるのを避ける為あの場に居た者の記憶を改竄し、レンファとあの竜は魔物により傷を負い療養のため暫く休職…なんて無理矢理こじつけたが、今竜がどこにいるのかすら分からない。
私の愛し子、私の唯一と決めた伴侶。
それを目の前でむさむざ奪われ連れ去られるとは…。
一人で居れば気が狂いそうになるのを妹の罵倒で何とか正気を保ち、グッと握った拳を震わせた。
「私が不甲斐ない事は分かってるよ。竜は一度番と定めた者は絶対に諦めない。そもそも何故レンファを外に出したの?しかもよりによって人間界なんかに…。」
「わたくちが知らないうちに人間界に送られてたの!ひどいわ、ひどいわ!それもこれも全部旦那様のせい!わたくちのレンちゃんが、竜なんかに盗られるなんて…!」
そう言って妹は私の横に座る自分の旦那を睨み付ける。
妹の旦那は魔界の公爵でかなり逞しい大男であるがいつまで経っても妻の尻に敷かれっぱなしらしい。
たまたま家にいたせいで妹の言うまま私の横に座らされ、今も共に浴びるほどの花を投げられていた。
「いやっ、しかしな、これは魔王様達と決めた事で!いや、何よりレンファの為を思ってだな…!」
「レンちゃんの為だなんてッ!!こんな事になってどこがレンちゃんの為なのよぉぉ!!」
妹は公爵の背中に飛び乗ると、ゲシゲシと蹴りを食らわせている。
公爵はスマンスマンとしきりに謝りながらもちょっと嬉しそうなのが解せない。
「とにかく早くレンちゃんを連れ戻ちてッ!わたくちの腕の中にレンちゃんが戻るまであなたは帰って来なくてよろちいッ!」
「そ、そんな…」
「公爵、随分困っている様だな。」
ふっと部屋の空気が重くなったと思えば、いつの間にか目の前に長身の男が立っている。
誰だと私が訝しがれば、妹が男に向かって目を釣り上げて叫んだ。
「あーッッッ!!!この強姦魔ッッッ!!何解放されてるのよッッッ!!あんたはこの家出禁よッッッ!!」
顔を真っ赤にして公爵の頭を叩く妹の様子に、ハッとする。
強姦魔…ではコイツがレンファを泣かせたシュゲルク王子…!
気付いた私から漏れる殺気にシュゲルク王子はフンッと鼻で笑うと、高い位置で結いてある銀髪をサッと後ろに払った。
「私に敵意を向けるのは構わんが、今はそんな事をしている場合ではなかろう。全く、竜ごときにレンファを奪われるとは…それでもそなた精霊の王か?私が封じられて居なければこのような事態になどさせなかったものを…嘆かわしい。義母上殿、安心せよ。未来の義息子がレンファをすぐに取り返して来ますぞ。暫しお待ち下され。」
「わたくちを義母などと呼ばないでッ!でもレンちゃんは連れ戻して来てちょうだい!お兄様も、はやく!!」
もう半分泣き喚きながら捲し立てる妹に急き立てられ、私とシュゲルク王子は人間界へと向かう為屋敷を飛び出す。
勿論協力して…なんて死んでも御免なので、屋敷から出て速攻別れた。
「あぁ、レンファ、久し振りにレンファをこの腕に抱ける…!ふふ…姫を救い出す王子か…イイな!凄くイイ!帰ったら祝宴を上げてそのまま蜜月だ…!」
別れ際シュゲルク王子が不気味に笑っているのが見えたが、あまりの気色悪さに私はすぐに目を背け魔界を後にした。
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