熊さんちのすずらん姫

べす

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19、マズイマズイ

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「伯父様、本当に僕の側に居る気ですか?イザークにはなんて言ってきたんです?」

イザークは伯父様の側近だ。
そもそも彼が居ない事がおかしい。
伯父様が僕に会うときは絶対くっついて来るのに。

「イザーク?あぁ、イザークは私の代わりに残ってもらってるよ。流石に私にも多少の仕事はあるからね。イザークも付いてきたがったが、私がレンファを連れて帰ってくれるならと快く送り出してくれたよ。」
「えっ、ちょ、話変わってません?ここで見守ってくれるんですよね?」

僕が笑顔を引き攣らせていると、伯父様は口角を上げた。

「ここにはエリザも居ないから、レンファを精霊界に連れて行くのに楽で本当に嬉しいな。精霊王の神殿はね、特別な結界と幻惑で守られているんだ。それこそ龍か神にしか破れない。だから、精霊界に連れていけばレンファは誰にも奪えない。私が独り占めだ。」

ふふふ、と微笑む伯父様に僕の中で警鐘が響く。
えーっちょっと母様!
何で伯父様に手紙出したの!?ここに来て一番面倒な事になってるよ!

さぁ行こうすぐ行こうと連れ去ろうとする伯父様に、僕は必死の抵抗を試みる。

「あのっ、伯父様!僕まだ心の準備が…っ」
「心の準備がまだなら体の準備から始めようか。媚香草を部屋に焚き詰めさせれば、処女でも痛み無く快感を掬えるらしい。ごめんね?私は潔癖で唯一と決めたもの以外と交われないから経験が無くて、効果を目にしたことがないんだ。」
「嘘ぉーーっ!?」

伯父様何年生きてると思ってるの!?
数千年単位だよね!?
えっ、やだやだ!超拗らせ童貞じゃん!

「お、伯父様、僕も経験が少ないので、伯父様に不快な思いをさせてしまうかもしれません。きっと玄人の方の方が僕なんかより伯父様を満足させて下さいますよ!まずはそちらで試されてみては!?」

とりあえずプロに指南してもらってからにして下さいと遠回しに伝えれば、伯父様の目の色が変わった。

「…待って。経験が無い、ではなく少ない?…あぁ、そうだ…すっかり忘れてた。レンファは魔界のクソガキに無理矢理強姦されて酷い怪我を負ったんだったね。可哀想に…。思い出したらそちらを野放しにしているのが気になってきたよ。先に始末して来るから、少し待っていてくれる?」

低ーい声で呟く伯父様に、僕は背筋を凍らせる。

し、始末とか、マズイでしょ!?
精霊王VS魔界の王子とか、魔界を焦土にする気かな!?
せっかく忘れてたのに余計なこと思い出させちゃった…!

僕は慌てて伯父様の気を引くため、顎に再びチュッとキスする。
一瞬固まった伯父様が目線だけこちらに寄こしたので、そのままはむはむと顎を食んだ。

「お、おじさま、だめ…僕の側にいて…」

背伸びをして必死に伯父様の顎にキスしていると、伯父様はガバッと僕を抱き込む。
あ、あれ、やり過ぎた…?

「なんてささやかなおねだり…っ!恥ずかしがりやで慎ましいレンファがこんな可愛いおねだりをしてくれるなんて!もうっ、普段からもっと甘えてくれていいんだよ…!?」

何故かそのまま耳に舌を突っ込まれベロベロ舐められ、僕はゾクゾクッと身を震わせた。

「ひゃ、や、おじさま…」
「可愛い、可愛い。可愛過ぎる…!早く帰ろう、ここではレンファを落ち着いて愛してあげられないもの。掴まっておいで、すぐに着くから。」

魔界が焦土となるのは食い止めたものの、また振り出しに戻る。
むしろ悪化した事態に青くなっていると、誰かが伯父様の魔法をパンッと解除した。

「…私の魔法を解いた…?」

そこで皆の時が動き出し、伯父様に抱き込まれ耳を舐められている僕の姿に騎士たちがギョッとする。
ランバが目を見開きこちらに駆けてこようとしたが、それよりも後ろの方から大きな殺気を纏った何かがこちらに近づいて来た。

「……俺のレンファに触れているのは誰だ?」

騎士たちを押し退け前に出たのはベル。
しかしなんだか頭から角が生えてるし、瞳孔は縦に細く伸びている。

「ッ!まさか…竜か!?」
「竜…?」

竜ってお伽噺に出て来る神の遣い…?
え、ベルが?
魔族じゃなかったの!?

見ればベルはかなりお怒りのようで、口の端からフシューッと炎を纏った息を吐いていた。

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