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18、来ちゃったの?
しおりを挟む結局残ったメンバーで街道に向かう事になったのだが、第五部隊は見習いは全員、騎士も半数が気を失ったままで、本来の半分の騎士プラス僕で戦う事になった。
「…第五部隊の担当はこの街道だが…今日は半数のみだからな。深追いはせず街道周辺の魔物のみの駆除とする。」
「お前のせいだぞ、後でちゃんと隊長に謝れよ?」
「はーい。」
僕はランバにおざなりな返事を返しながら、早速周辺の気配を探る。
すると早速大きな魔力の気配を感じ取った。
…うーん、すぐ真下の地中にすっごくでっかいワームが三匹居るんだけど、これも駆除するのかな?でも多分上がって来ようとしてるから倒していいんだよね?
とりあえず報告しとくかとランバの服をツンツン引く。
「何だよ。」
「下からワームが三匹上がって来てる。あと十秒で出てくるよ。」
「は!?」
ランバが目を見開いた途端、下から突き上げるように地面が盛り上がりワームが大口を開けて飛び出してくる。
何人か騎士が口に吸い込まれるのが見えたので仕方無く転移しながら順番に引き摺りだすと、ワームから離れた場所に放り投げた。
「!!総員、距離を取り戦闘態勢!魔法が使える者は援護を!」
救出した騎士たちの元に行きワームの体液を浄化してやっていると、戦闘中のランバが叫んで来る。
「おい、レンファ!こっち来て手伝え!」
「え、あ、はーい。」
ワームってそんな強かったっけなぁ…と首を傾げながら剣を抜き、順番に弱点である腹を裂き分厚い肉に覆われた核を貫く。
僕が核を破壊したワームは瞬く間に魔力が噴き出し、灰色に変色して巨体を地面に倒した。
「あーもう、体液モロに浴びちゃった…最悪ぅ…。」
自分に浄化を掛けながらワームの山から抜け出ると、そこにはランバを含めた第五部隊の騎士たちが剣を持ったまま固まっている。
え、なに、どうしたの?
手伝えって言うから倒したのに、駄目だった?
そんなの言ってくんなきゃ分かんないよ!
慌ててランバの元へ駆け寄り内緒話をするように背伸びして、「倒しちゃ駄目なら言ってよ!」と苦情を言う。
つい先程の殺気事件で懲りたのでランバだけに聞こえるように話したのだが、どうやら側にいた騎士にも聞こえていたようで化物を見るような目で見られた。
「いや、いい…倒してくれて良かった。てか、お前強すぎんだろ…。危険も顧みず騎士何人も助けて、この人数じゃ絶望的な相手を一人で全部倒しちまうとか…。」
はぁ~ッと大きな溜息を吐くランバは片手で目元を覆っていたが、耳が真っ赤になっている。
あれ、ワームの体液ってかぶれちゃうんだっけ…?
僕がランバの症状を確認しようと手を伸ばすと、後ろから誰かに腰を引かれた。
「レンファ、他の男に触れないで?」
背筋がゾクリとする重低音に恐る恐ると振り返る。
やだな。違うよね?違うよね………違わなかった。
「…イヴサルフォ伯父様、なぜここに?」
「伯父様だなんて呼ばないでよ。イヴって呼んでって言ってるじゃない?」
耳元に囁きかけるような声で愛称で呼べと強要してくるこの人物は僕の母の兄で、精霊界の王であるイヴサルフォ伯父様。
たぶん母に何か言われたのだろうなと思っていると、案の定伯父様から手紙を渡されたのですぐに読んだ。
「…あぁ、ポチはちゃんと帰れたんだ、良かった。でも’精霊王に守って貰いなさい’って何…?僕別に何の危険にも晒されてないんだけど…。」
ポツリと呟いてハッとする。
そう言えば僕今一人じゃないじゃん!
見れば周りの騎士たちは文字通り固まっていて、動きを止めている。
まさかと思い伯父様を見れば、後ろから腰をキュッと抱きながら甘く微笑んだ。
「彼らの時は止めてあるよ。私達の逢瀬を邪魔されたくないからね?」
こんな所で精霊王しか使えないような魔法使わないでよ…そして勝手に会いに来て逢瀬とか!
しかし、文句なんて言えない。
何故なら僕の母もそうだが、精霊は怒らせるとかなり面倒臭いのだ。
「あれ、レンファ?いつものは?」
僕は笑顔を顔に貼り付け伯父様に向き直ると、無心で額と頬、最後に顎に軽くキスをしていく。
案の定伯父様はご機嫌になったので、僕はここからどうやって伯父様に穏便にお帰り頂くか考え始めた。
「伯父様。僕、仕事中なのでまた今度母様も一緒に会いませんか?」
出来るだけ刺激しないよう優しい声音を心掛け暗に帰れと告げる。
しかし伯父様には通じなかった。
「だめだよ、エリザにも頼まれたんだ。大丈夫、精霊は基本興味の無いことには頓着しないからね。王が不在であっても暫くは気付かれないよ。」
んなわけ無いだろ!と言えないところが辛い。精霊って本当にそんな感じなのだ。
困ったなこりゃ。帰りそうもないぞ。
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