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15、【その頃の魔界1】兄視点
しおりを挟む「バカーッ何でレンちゃんを人間界に行かせたのーっ!?ポチまでどっか行っちゃうし、これでわたくちのお茶会相手がだれもいなくなっちゃったじゃないのーッ!!」
「か、母様落ち着いて…っ、あいたっ!もー花に紛れて種まで投げないで!」
レンファ不在の屋敷にて。
レンファの一番上の兄である俺ルガルは、すずらんの精である母とペットであるポチが温室でお茶会の最中、ポチが人間に召喚され消えた現場に運悪く居合わせてしまった。
思えば父がレンファを人間界へ派遣した事を母に告げたときの荒れようは凄まじいものだった。
土下座する父の上で母が地団駄を踏み泣き叫ぶ度に屋敷中に花吹雪が舞い、どうにか兄弟三人で母の好きな菓子やら玩具を与えてやっと泣きやませたのだ。
それからは毎日の日課であるお茶会ではレンファの席に仕方なくポチを座らせぶーたれながらお茶を飲んでいたのだが、まさかのポチまで消えてしまい再び母の怒りが再燃した。
「レンちゃんだけがわたくちのお茶会に付き合ってくれてたのよっ!?四人も息子がいて、わたくちの相手をちてくれるのはレンちゃんだけ!後の息子は鍛錬だ狩りだのわたくちの事なんてちっとも構ってくれないんだから!」
「母様、そんな事ありませんよ!そ、そうだ、なら今から俺とお茶会をしましょう!ねっ、それならいいでしょ!?」
「いやーっ!わたくちは可愛いレンちゃんとお茶が飲みたいの!!汗臭い熊はお断りよ!!」
「ひ、酷い!!」
確かに兄弟の中でレンファだけが魔族らしからぬ精霊族の特徴を色濃く受け継いだ容姿と穏やかな気質を持っている。
魔族の男は己が強く屈強であることを誇りとしながらも、儚く華奢で守ってあげたくなるような繊細な美人に目が無い。
見た目だけで言えば精霊族がドストライクなのだが、彼らはいたずら好きで思考が幼い為、まともに話をしようとするとすこぶる疲れるのだ。
反対に精霊族からしたらガサツで強さばかりを追い求める魔族は大嫌いなタイプナンバーワンらしく、遭遇すればまず挨拶は悪態からと言う程毛嫌いしている。
そんな中どうしても一目惚れした母を諦め切れず精霊界まで乗り込みしつこく求婚し続けたのが父であり、それを精霊族の中でも変わり者だった母が半ば押し切られる形で受け入れたおかげで、二人は歴史上初となる魔族と精霊族の夫婦として結ばれた。
そして産まれたのが俺を含めたいかにも魔族らしい体の大きな厳つい兄三人と、精霊族をも凌ぐ凄まじい美貌を持った弟である。
弟はとにかくのんびりマイペース。
兄三人が苦手とする母とも一番仲がよく、毎日母に乞われて温室でお茶会を楽しんでいた。
その姿のとにかく麗しい事。
そして魔族の血がうまいこと混ざったおかげかレンファは精霊族と違い突拍子も無い悪戯などせず、当たり前だがまともに会話が成り立つ。
そんなレンファは魔族の理想そのものと言え、俺達兄三人はレンファを溺愛しつつ、レンファを守る為屋敷に囲い他の魔族から隠していた。
それが功を奏し暫くの間我が家は見た目だけは美しい精霊族の母と、見た目も中身も美しいレンファを愛でつつ、平和な日々を送っていた。
それなのに、その平和を壊したのは何を隠そうレンファを一番溺愛していた父である。
父はあろうことかレンファを魔族の大勢集まる王宮の夜会に連れて行ってしまったのだ。
父は以前美しい母を他の魔族に自慢したくて、結婚して間もない頃、同じ様に王宮の夜会に連れて行ったらしい。
しかし母は精霊族。
いくら変わり者と言っても基本厳つい魔族が嫌いなので、魔族の集まる夜会に連れて行かれ大層機嫌を損ねた。
その結果夜会会場で癇癪を起こし暴れまくり、その場に居合わせた魔族に『精霊族は遠くから愛でるものである。』と印象付ける程のトラウマを植え付けたらしい。
それでも父は懲りずに何度か母を外に連れ出しては母が機嫌を損ねてやらかすと言うのを繰り返し、いい加減にしろ!と他の魔族から苦情が入った所でやっと母を連れ歩くのを諦めた。
しかし母と違い理性的で穏やかなレンファを見ているうちに、悪い癖が再発したらしい。
そのせいで訪れた夜会で、精霊族に勝る美貌の上まともな挨拶や会話を交わしてくれるレンファに、魔族がこぞって夢中になってしまったのだ。
その筆頭とも言えるのがこの国の第六王子であるシュゲルク王子である。
王子はレンファに群がる魔族を蹴散らす代わりにレンファを友として頻繁に王宮に連行した。
父がそれを知りお茶会相手を盗られたと暴れる母に必死に土下座して怒りを宥めている間、王子はついに恐れていた行動を起こしたのだ。
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