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14、ポチの処遇
しおりを挟む「す、凄い…!レンファくん、君本当に凄いよ!さっきの魔族は高位クラスだったのにそれを強制送還するなんて…!」
高位も高位、王族なんだよなぁ…なんて言えず、僕は疲れた顔で「いえ…」と返すだけで精一杯だった。
さっきの男は魔界の第六王子であるシュゲルク王子。
何を隠そう僕をしつこく閨に誘った揚げ句尻を裂いた元凶である。
「とりあえず、その魔法陣は使わないほうがいいと思います…明らかに手に余る存在を呼び寄せて居ますし、誓約魔法も機能していない。どう考えても危険ですので…。」
正直本来であればシュゲルク王子になんて逆立ちしたって勝てない。
力量は雲泥の差で、今回はたまたまシュゲルク王子の力が封じられていた事と、召喚途中だった事でなんとかなったのだ。
まぁ、シュゲルク王子は僕に惚れてるので強く出られないってのもあるが。
それに最初に召喚されたポチですら、人間など本気を出せばワンパンだ。
いや、ほんと僕って調査に来る必要あった?
でも魔族は総体的に数が少ないからな…
それでもどう考えたって負けないと思うんだけど。
「兄上、兄上も見たでしょう!?先程のレンファくんの強力な魔法の数々を!やはり彼は魔法師団にこそ必要な人材!早急に異動手続きを!」
「いや、それを言えば彼の体術もかなりのものだった。咄嗟に判断しあれだけ動ける者は騎士団にも多くない。やはりこのまま騎士団に在籍するのが良かろう。」
「兄上~~~ッ!!!」
騒ぐイグニス王子を横目にすっかり空気と化していたアルベールが、いつの間にか僕の横にやって来て耳打ちする。
「アンタ、よくあんな化物送り返せたわね。あの魔族、鎖で封印されてたわよ?あれが無ければ召喚なんて出来なかったんじゃないかしら…どちらにしても良くやったわ。…それで、その魔獣はどうするのよ。随分懐いてるけど。」
アルベールがポチに視線を移すとそれに気付いたポチがグルルル…と牙を剥きだしにする。
そうなんだよなぁ、どうしよう。
どうにか魔界に帰したいけど、僕は決められた期限まで帰れないことになってるし、誰かに迎えに来て貰えれば一番いいんだけど…
そこで僕は兄様達の顔が浮かんだが、あの過保護な兄達が人間界にポチを迎えにくるだけの為にやって来るはずがない。
きっと授業参観宜しく騎士団に乗り込み、身内であるのをいい事に僕の職場で好き放題するに決まっているのだ。
あの三人は魔族らしい魔族だから、人間界なんて来たら絶対に浮く。
で、結果的に僕も魔族だとバレるだろう。
どちらにしても暫くはポチを手元に置いておくしかないので、僕が飼い主だと言うのは勿論伏せてイグニス王子にポチを連れて行く許可を貰う事にした。
「こちらで従魔登録を済ませればその魔獣を連れて行くのは可能だけど…その魔獣人に噛み付きそうで怖いんだよねぇ。その辺ちゃんと管理出来そう?」
「大丈夫です、僕動物の躾得意なんで。ポチも僕の言う事なら聞くと思いますし。ね?」
「わふッ!」
「ポチかぁ…この顔でポチ…」
そこでまさかの人物から待ったが掛かる。
「レンファ。騎士団の宿舎は動物禁止だから。森に捨ててきなさい。」
「え、今イグニス王子が従魔登録すれば大丈夫だって…」
「騎士団のトップはイグニスじゃなくて私だよ。捨てて来なさい、今すぐ。」
ファルバン王子は断固としてポチを宿舎に入れてはくれないようだ。
「えーどうしよう…」
「兄上、レンファくんに近付けなくなるからって大人気無いですよ!じゃあレンファくんは魔法師団に異動しておいで。うちなら従魔大歓迎だからね!」
「駄目に決まってるだろう。」
王子たちが言い合っているうちに、ポチの体が煙に巻かれる。
そのままシュンッと姿が消え、僕はポカンとしてポチの居た場所を見詰めた。
「え、あ、何か帰ったっぽいです…?」
「あー…もしかして契約してないから強制送還されちゃったのかも。残念だったねー。」
本当に帰ったのか…?後で母様に連絡してみようかな…。
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