熊さんちのすずらん姫

べす

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13、来ちゃった

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ファルバン王子の執務を調整した後イグニス王子に連れられ神殿のような建物に案内されると、そこから更に地下にあると言う儀式の間へと連れて行かれる。

そこにはすでに何人かの魔法師が居て、ファルバン王子とイグニス王子が入るやすぐさま跪いた。

「ハイハイ、堅苦しいのは無しね~。兄上の事は空気だと思って気にしないように!それより、こっちが前話した僕のイチオシであるレンファくん!彼もやっぱり誓約魔法に興味があるって言ってくれてね、頑張って連れてきちゃった!今日は魔法師の良いとこ存分に見せて騎士団から引き抜いちゃうぞ~☆」
「「「おー!」」」

何故か歓迎されているようで歓声が上がり、僕はとりあえず挨拶する。
イグニス王子はそんな僕に手招きし、ファルバン王子に許可を取ってから誓約魔法の組み込まれた魔法陣を見せてきた。

え、見せちゃうの?
国家機密とかじゃないんだ…。

「この魔法陣を魔力で床に模写して召喚した魔族を事前に刻まれた誓約で召喚者に縛るんだ。誓約内容は細かいからザックリ説明すると、召喚者に逆らわない・召喚者に攻撃しない・召喚者の命令は絶対、とかね。そうするとアラ不思議!今まで敵だった魔族が心強い味方になって、僕らに力を貸してくれるって訳。勿論自分より弱い魔族しか呼べないから、安心してね!」

バチンとウインク付きで説明されたが、これはどうしたもんか。

そもそも人間より弱い魔族など存在しない。
強いて言うなら魔界に咲いてる人喰い花とか虫位じゃなかろうか…?

これ、本当に魔族喚べるの?
無理じゃない?無理だよね。

ちょっと無駄足だったかも、なんて始まる前から後悔していると、早速最初の魔法師が魔法陣を床に転写し、何やらブツブツ唱え始めた。

それを静かに見守っていると、何やら魔法陣の真ん中から徐々に黒い靄のようなものが噴き出てくる。
それは徐々に黒い塊に変わると、そこには見慣れた凶悪な顔のモフモフが四足歩行で凛々しく立っていた。

…いや、僕んちのポチじゃん!!!
え、何で来ちゃったの!?
てゆーか人んちの犬勝手に呼び出すとか、絶対駄目でしょ!

「こ、これは、魔獣…!?凄い!何て恐ろしい姿をしているのだ…!さ、早速誓約が機能しているか調べねば…!」

魔法師が何やらポチに話しかけているが、ポチは全無視である。
それどころか呼び出した魔法師に牙を剥きさっさとケツを向けると、尻尾を振りながら僕の方に駆け寄ってきた。

「こ、こら、駄目だよ。おうちに帰んなさい!」
「くぅぅん…」
「駄目だってー!あ、もう、ペロペロしないの!ほらぁ、何か変な空気になってるじゃん…!」

擦り寄ってくるポチをどうにか魔界に帰そうと小声で叱りながらグイグイ魔法陣に押し付けるが、一向に帰る気配がない。
それでも冷や汗をかきながら頑張っていると、急に空気が変わり禍々しい気配が部屋に立ち込め始めた。

「!何だ…?何か来る…?」

イグニス王子がそう呟くと、一気に緊張感が増す。

僕はと言えば覚えのある気配に更に焦り、もうポチを帰すどころではなくなってしまった。

え、ちょっと、嘘でしょ…!?何であの人人間の召喚なんかに応じてんの…!

魔法陣の真ん中から現れたのは体を鎖でグルグル巻きにされた背の高い男。
男はうねった肩までの銀髪を流し、真紅の瞳で僕に目を留めた。

「あっ、やっぱりレン……フォッ!?」

僕は素早く男に近付くと、余計な事を喋る前に脳天に踵落としを食らわせる。
男の態勢が崩れた所で急いで詠唱が面倒な最大級の重力魔法を発動し、叩き付ける様に男の体に御見舞した。

「えっ、今来たばっか…!」
「貴方はお呼びじゃありません!大人しく魔界に帰って下さい!」
「いやだ!やっと会えたのに…」
「いいからもう黙って!」

小声でやり取りしながら持てる最大の出力で男を召喚途中の魔法陣に押し込む。
幸い鎖で身動きが取れなくなっていたので何とか強制送還すると、僕は慌てて魔法陣に上書きし蓋をした。

ハァ、ハァ…く、鎖で力が封じられてて良かった…!
あの人あれから何度も僕に夜這いして怒った妃殿下に百年間の縛刑言いつけられてたもんな…!
どうも最近見ないと思ったら本当に縛られてたのか…

ホッとしたのも束の間、僕の足元で黒いモフモフがこちらを見上げている。

あ、やべ。
ポチ返し忘れちゃった。
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