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8、恋人
しおりを挟むその日の夜。
クタクタになって部屋に戻った僕は、ベルを見るなり素早く自分に浄化を掛けて抱き着いた。
「うわ!なんだ!?」
「ベルぅ、もうやだぁ、僕王子の護衛したくないよー。」
今日の帰り際、僕は団長であるガーガリアムから呼び出され残りの二週間全てでファルバン王子の警護に付くように言われたのだ。
何でも実力的に僕が王子の警護につくのが一番いいとの話だったが、全く納得できない。
それなら見習いではなくいつも護衛に付いている騎士たちを付ければいいだけだ。
そうガーガリアムに言ったが、「すまんな、殿下の希望でもあるんだ。」と却下された。
「やだっ、やだっ、だってアイツ、僕の顔と尻ばっか見てんだよ!?絶対隙見て突っ込もうとしてる!」
「うーん、流石に仕事中はしないと思うが…」
「じゃあ休憩時間に突っ込まれそうになったらどうするの!?殺していいの!?」
「いや、殺すのは駄目だろう。」
「ほらぁ!じゃあ大人しく突っ込まれるしかないじゃん!僕パニックになったら手加減出来ないもん!人間なんてすぐ死んじゃうよ!」
ベルの首筋にグリグリ顔を押し付けて嘆く僕に、ベルは何故か突然ギュウッと僕を抱き締める。
「え、わっ、なに?」
「…少し落ち着け。別に嫌なら嫌だと声に出して伝えればいい。殺すのはマズイが、何も大人しく受け入れる必要はないだろう。」
そう言って優しく背中を撫でられ、何だかうっとりしてしまう。
つい甘えるようにベルの顎の下に顔を擦り寄せほうっと息を吐くと、ちゅっと額にキスを落とされた。
「あぅ、ベルぅ。」
「落ち着いたか?」
「うん。でももうちょっとちゅーして欲しいかも…。」
「ん。」
僕がとろんとした声で強請ると、ベルの唇が再び額に落ちてくる。
キスしてもらいながら、そういえば家ではこうして兄様達に毎日キスされてたなぁ、なんて事を思い出す。
成人してからは流石に唇にキスすることは無くなったが、ベルにキスされるのは兄様達にキスされるのよりずっとドキドキした。
「レンファ…」
「ベル…もっとー…」
見上げれば今度は静かに唇が重ねられ、僕は驚いてベルの胸元を掴みながら小さく声を上げる。
しかしそれすらベルに呑み込まれ軽く唇を啄まれ続けると、ヘナヘナと体から力が抜けていった。
「わぁ…僕身内以外の人とキスしたのベルで二人目だ。」
「おい待て。誰だ一人目は。」
「んー…内緒。でも好きでしたんじゃないよ?」
あれでも一応王子だしね、形だけでも守秘義務は守らねば。
僕が口を割らないのでベルはムッとしつつ、更に唇を合わせてくる。
気が付けば結構長い時間そうしていて、僕達は唇が離れてもなんとなく至近距離で見つめ合っていた。
「…可愛い。」
「ほんと?ベルは僕みたいなの、好き?」
「ん。」
大きな手で頬を撫でられニコッと笑みを浮かべると、甘やかす様にもう片方の頬にキスされる。
家族に溺愛されて育った僕は、寂しくなったり不安になると家ではいつも誰かにベッタリ甘えていた。
ベルは血は繋がってないけど、なんとなく兄様達と似たものを感じる。
だから僕はベルには無意識に甘えちゃうのかなぁなんて考えていると、ベルは僕の肩に手を置いて急に真剣な顔をした。
「レンファ…俺は王子にお前を渡したくない。フリじゃなくて、本当に恋人になってくれないか?」
え…っ!
一瞬兄様達が「レンファは一生どこにもやらん!」と騒いでる姿が頭に浮かんだが、今はそんな事を思い浮かべている場合じゃない。
だ、だって恋人とか言ってたし!
フ、フリじゃなくて、って…
僕に初めての恋人誕生って事!?
「い、いいの?僕、すっごく甘えん坊だよ?嫌じゃない?それに、面倒な王子に目を付けられてるし…」
「王子からは俺が守ってやる。それに、こんなに可愛い恋人に甘えられて嫌になる奴なんて居ないだろ。」
「あ、ベルぅ…!僕もベルの恋人になりたい…!」
「レンファ…!」
ベルってば、早く言ってくれれば良かったのにー!
先に唇にキスするからビックリしちゃった!
…ハッ!?でも恋人って事は、閨するのかな…?
結婚するまで無しかな?
でも、ベルなら優しくしてくれそうだから、ちょっとだけならいいかも?
その夜僕は初恋人に早速持ち前の我儘を発揮し、ベルのベッドに潜り込む。
ベルはやっぱりとにかく優しくて、僕はファルバン王子の事も忘れぐっすり眠ったのだった。
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