熊さんちのすずらん姫

べす

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7、言い返しちゃだめでしょう

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「レンファ!素晴らしかったよ!」

手放しで褒められたものの僕は今日アーバインのフンになると決めたので、ボソリとお礼を言って頭を下げるに留める。
後はアーバインが何とかしてくれるだろうと丸投げすれば、期待通りアーバインはファルバン王子と会話を始めた。

「殿下、申し訳御座いません。彼はどうやら人見知りが激しいようで…」
「あぁ、構わないよ。私は慎ましやかな小鹿ちゃんも大好きだからね。むしろあれだけ戦えて奢らない態度は魅力的でしかない。ますます気に入ったよ。」

ウワァ、何で?
もう本当人間って分かんない。

思わずアーバインの背にピッタリ重なる様に隠れ服の裾を掴むと、アーバインがビクッと肩を震わせて小声で囁いた。

「ちょ、アンタやめてよ!殿下睨んでるから!私が嫌われるでしょ!?」
「だってー。」
「…小鹿ちゃん同士が仲良くしてるのを見るのは可愛らしくて好きだけど、私だけ仲間外れは寂しいな?」

僕達がコソコソ話しているとファルバン王子がアーバインを覗き込む様に接近し僕にチラリと視線を寄越す。
アーバインはキスされそうな程近い距離にまで迫ったファルバン王子に耐えられずボンッと真っ赤になり、顔を覆ってその場に蹲った。

「おや、ごめんねアーバイン。ちょっと近かったかな?」
「いえ…っ、麗しい御尊顔を間近に拝見出来た事光栄で御座います…ッ!」

何言ってんの、もう。
生娘じゃあるまいし…………生娘じゃないよね?

アーバインという盾を亡くした僕も、結局間近でファルバン王子と対峙する羽目になる。

しかし基本的に魔族は美形が多いのだ。
そんな美形耐性バッチリの僕が顔だけで簡単に落ちると思っているなら大間違いである。

「あの、離れて頂いても宜しいでしょうか。」
「私に近付かれるのは嫌?」
「ここまで近付かれると殿下に危険が迫った場合対処し辛いのです。」
「んー大丈夫だよ、何かあったとしても私も指揮官やる位だからそれなりに腕は立つしね。」
「それは僕が不要ということでしょうか。」
「そーじゃなくて、何かあっても僕がレンファを守ってあげるってこと。」
「それをされると僕の首が飛びますが?」

目尻を下げ甘い声で囁くファルバン王子と、無表情で淡々と言葉を返す僕。
周りがいつファルバン王子が機嫌を損ねるかとハラハラしているのを気付かぬ振りで通していると、やっと復活したアーバインが僕達の間に割って入った。

「殿下、重ね重ね申し訳御座いません。この子は些か頭が堅いようです。」
「いや、真面目なのはいい事だ。…ではアーバインも立ち直った様だし、そろそろ執務室に移動しようか。」

やっと離れたと思ったファルバン王子に頬をスルリと撫でられ、思わず眉間に皺が寄る。
幸いファルバン王子はすぐに前を向いたので見えていなかったようだが、僕は自分の袖でゴシゴシと頬を拭きまくった。

「…アンタ本当変わってるわねぇ。普通なら頬を染めて喜ぶとこでしょうに。」
「何言ってるんです?誰だって恋人以外の男に触れられたら嫌に決まってんでしょう。」
「私は恋人が居ようが殿下に入れ込む奴しか見た事無いって言ったでしょ。」
「ご心配なく。僕は毛ほども殿下に興味はありませんので。なので殿下から僕を守って下さいね?」
「…嫌よ。そんなことしたら私が殿下に嫌われるじゃない!」

アーバインとまたもやコソコソ言い合いながらファルバン王子に付いて廊下を進む。
後は黙って立ってるだけか…暇そうだなぁと憂鬱になりながら、僕達は執務室へと入った。
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