7 / 28
7、言い返しちゃだめでしょう
しおりを挟む「レンファ!素晴らしかったよ!」
手放しで褒められたものの僕は今日アーバインのフンになると決めたので、ボソリとお礼を言って頭を下げるに留める。
後はアーバインが何とかしてくれるだろうと丸投げすれば、期待通りアーバインはファルバン王子と会話を始めた。
「殿下、申し訳御座いません。彼はどうやら人見知りが激しいようで…」
「あぁ、構わないよ。私は慎ましやかな小鹿ちゃんも大好きだからね。むしろあれだけ戦えて奢らない態度は魅力的でしかない。ますます気に入ったよ。」
ウワァ、何で?
もう本当人間って分かんない。
思わずアーバインの背にピッタリ重なる様に隠れ服の裾を掴むと、アーバインがビクッと肩を震わせて小声で囁いた。
「ちょ、アンタやめてよ!殿下睨んでるから!私が嫌われるでしょ!?」
「だってー。」
「…小鹿ちゃん同士が仲良くしてるのを見るのは可愛らしくて好きだけど、私だけ仲間外れは寂しいな?」
僕達がコソコソ話しているとファルバン王子がアーバインを覗き込む様に接近し僕にチラリと視線を寄越す。
アーバインはキスされそうな程近い距離にまで迫ったファルバン王子に耐えられずボンッと真っ赤になり、顔を覆ってその場に蹲った。
「おや、ごめんねアーバイン。ちょっと近かったかな?」
「いえ…っ、麗しい御尊顔を間近に拝見出来た事光栄で御座います…ッ!」
何言ってんの、もう。
生娘じゃあるまいし…………生娘じゃないよね?
アーバインという盾を亡くした僕も、結局間近でファルバン王子と対峙する羽目になる。
しかし基本的に魔族は美形が多いのだ。
そんな美形耐性バッチリの僕が顔だけで簡単に落ちると思っているなら大間違いである。
「あの、離れて頂いても宜しいでしょうか。」
「私に近付かれるのは嫌?」
「ここまで近付かれると殿下に危険が迫った場合対処し辛いのです。」
「んー大丈夫だよ、何かあったとしても私も指揮官やる位だからそれなりに腕は立つしね。」
「それは僕が不要ということでしょうか。」
「そーじゃなくて、何かあっても僕がレンファを守ってあげるってこと。」
「それをされると僕の首が飛びますが?」
目尻を下げ甘い声で囁くファルバン王子と、無表情で淡々と言葉を返す僕。
周りがいつファルバン王子が機嫌を損ねるかとハラハラしているのを気付かぬ振りで通していると、やっと復活したアーバインが僕達の間に割って入った。
「殿下、重ね重ね申し訳御座いません。この子は些か頭が堅いようです。」
「いや、真面目なのはいい事だ。…ではアーバインも立ち直った様だし、そろそろ執務室に移動しようか。」
やっと離れたと思ったファルバン王子に頬をスルリと撫でられ、思わず眉間に皺が寄る。
幸いファルバン王子はすぐに前を向いたので見えていなかったようだが、僕は自分の袖でゴシゴシと頬を拭きまくった。
「…アンタ本当変わってるわねぇ。普通なら頬を染めて喜ぶとこでしょうに。」
「何言ってるんです?誰だって恋人以外の男に触れられたら嫌に決まってんでしょう。」
「私は恋人が居ようが殿下に入れ込む奴しか見た事無いって言ったでしょ。」
「ご心配なく。僕は毛ほども殿下に興味はありませんので。なので殿下から僕を守って下さいね?」
「…嫌よ。そんなことしたら私が殿下に嫌われるじゃない!」
アーバインとまたもやコソコソ言い合いながらファルバン王子に付いて廊下を進む。
後は黙って立ってるだけか…暇そうだなぁと憂鬱になりながら、僕達は執務室へと入った。
6
お気に入りに追加
115
あなたにおすすめの小説


主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。

ライバル視していた隣国の魔術師に、いつの間にか番認定されていた
地底湖 いずみ
BL
魔法ありの異世界に転生をした主人公、ライ・フォールは、魔法学園の成績トップに君臨していた。
だが、努力をして得た一位の座を、急に現れた転校生である隣国の男、ノアディア・サディーヌによって奪われてしまった。
主人公は彼をライバルと見なし、嫌がらせをしようとするが、前世の知識が邪魔をして上手くいかず、いつの間にか彼の番に認定され────
────気づかぬうちに、俺はどうやら乙女ゲームの世界に巻き込まれていたみたいだ。
スパダリヤンデレ超人×好きを認めたくない主人公の物語。
※更新速度 : 中

生意気な弟がいきなりキャラを変えてきて困っています!
あああ
BL
おれはには双子の弟がいる。
かわいいかわいい弟…だが、中学になると不良になってしまった。まぁ、それはいい。(泣き)
けれど…
高校になると───もっとキャラが変わってしまった。それは───
「もう、お兄ちゃん何してるの?死んじゃえ☆」
ブリッコキャラだった!!どういうこと!?
弟「──────ほんと、兄貴は可愛いよな。
───────誰にも渡さねぇ。」
弟×兄、弟がヤンデレの物語です。
この作品はpixivにも記載されています。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる