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6、殿下の護衛
しおりを挟む「警護と言ってもまずはここで君たちの実力を見せてもらおうと思ってるんだ。その後二人一組でペアになって配置について貰う。あ、ちなみに警護対象は私の他に魔法師団の最高指揮官や外出予定の無い王族なんかもいるから頑張ってね?」
ふむふむと話を聞いていると、ファルバン王子が話しながら何やらバチッバチッとウインクしてくる。
鬱陶しいので無視していると、いい加減焦れたのか名指しで手招きされた。
「レンファ、君は既に現役の騎士を凌ぐほどの実力者だ。今日は私の専属護衛であるアーバインとペアを組み色々教えて貰うと良い。」
そう言って紹介されたのは昨日部屋に来たクルクルパーマの少年である。
アーバインは僕の顔を見て一瞬顔を顰めると、目を細めて値踏みするように視線を動かした。
「アーバインよ。ファルバン殿下に褒められたからって調子に乗らないようにね。出しゃばらず、影に徹して命懸けで護衛対象を護る事。分かったかしら?」
ファルバンを守る気などサラサラないが、「分かりました。」と殊勝な態度で頷いて置く。
それを鼻で笑われ、まずは説明された通り見習いと騎士で木剣での打ち合いをする事になった。
他の見習いが次々地面に沈められていく中、僕の相手はアーバインである。
アーバインは僕に並々ならぬ殺気を向けていて、僕は嫌々ながらも木剣を構えた。
「…いい気にならないで?お気に入りなんて所詮一年だけのお遊び。それに引き換え私はこうして常に殿下のお側に侍らせて頂いてる。その意味は言わなくても分かるでしょ?」
言ってくれなきゃ分かんないですけど…なんて言ったら怒られそうだったので、僕はコクリと頷く。
実質自分がお気に入りだとでも言いたいのかなと予想し、そう言えば僕はここでは恋人(偽)が居るんだったと思い出した。
「…あの。僕、恋人居るんですけど。」
「知ってるわよ、あの目付きの悪い男でしょ?でもどう見たって殿下のほうが素敵だもの。今までも恋人が居る見習い達は居たけど、その誰もが恋人を捨てて殿下に靡いたわ。だから信用出来ないの。」
えぇ…あの王子ってそんなに良いかなぁ?
僕は断然ベル派だけど。
特にあの鋭い目なんて凄く格好良いのに~。
好みについては全く分かり合えそうに無いなと結論を出したところで、合図と共にアーバインが動き出す。
しかし騎士といえども所詮は人間。
僕の相手になるはずも無く、瞬きの間に剣を叩き落とし背後から首に剣を突き付けた。
「…ッ!?嘘でしょ!アンタ、いつの間に…ッ!」
「…えー…?ちゃんと見てなかったんですか?もう一回します?」
「…ッしないわよ!もう、さっさと剣をどけなさい!」
言われた通り剣をどけて少し離れると、後頭部に熱視線を感じて振り向く。
そこには案の定ファルバン王子が居て、惚けるような顔で頬を染めて僕を見ていたのでついつい愚痴がこぼれた。
「…やだなぁ、何か締りのない顔してこっち見てる…。今日ずっとあんな顔で見られるのかなぁ、あーやだやだ…。」
ちょっと愚痴る以上に思いがけず本音がボロボロ溢れて、横で立ち上がっていたアーバインが目を剥く。
「ちょっ、アンタ不敬よ!もっと声量落としなさいよ、聞こえたらどうするの!?」
「あ、ついすみません…。でも聞こえた方が良いんじゃないですかね~、そしたら近寄って来なくなるだろうし…。」
ファルバン王子を見ているとどうしても僕の尻を裂きやがったあの王子を思い出すのだ。
うん、やっぱり絶対下手くそに違いない。
独り善がりなトコが顔に出てるもん。
万が一閨に~なんて誘われたらボコボコにしちゃうかもなぁ…なんて思っていたらそれも口に出ていたらしく、アーバインが呆れたように僕を見ていた。
「…もうアンタ意識して口閉じてなさい。アンタが恋人に一途だって事は分かったから。」
「え?今ので?やっぱり人間って訳わかんない…。」
「私はアンタの好みが分かんないわよ…本当に殿下に興味が無さそうね。アンタみたいなの初めてだわ。」
最初のツンケンした感じがなくなるとアーバインはなかなか話しやすそうである。
そうと分かれば僕は出来る限り今日はアーバインの金魚のフンに徹しようと決め、歩き出したアーバインの後ろに素早く張り付いた。
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