熊さんちのすずらん姫

べす

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5、恋人とは一体

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隠れたクローゼットからチラチラ覗き見た少年はなかなか可愛い顔をしている。
栗色の髪はクルクルとカールし、同じ色の瞳は大きく睫毛も長い。
魔族が好きそうなタイプだなぁなんて観察していると、可愛らしい顔から想像できないほどの野太い声が発せられ思わず目を丸くした。

「ちょっとぉ、アンタはお呼びじゃないのよ。レンファって泥棒猫を出しなさい。」
「…レンファは今下痢でトイレに篭ってる。用件があるなら伝えるが。」

えーっ、下痢とか!
もっとマシな言い訳なかったの!?

ベルのあんまりな言い訳に嘆いていると、それを聞いた少年はニヤリと顔を歪めて嗤った。

え、なに?

「はーん、ふーん?お腹下してトイレにねぇ…?それそのまま殿下に伝えちゃうけど、良いのよね?」
「…あぁ。」
「今回は殿下も見る目が無かったってことかしら。ならもう用は無くなったわ。お大事にって伝えといて頂戴。」

そう言って去っていく少年に、僕は首を傾げる。
よく分からないが、大事な時に腹を下す様な軟弱者には用は無いってことかな?

戻って来たベルに聞いてみるも、「分からないでいい。」なんて返されぶすくれる。

しかし先程の少年は見た目は可愛いのに性格が悪そうだったなと思い返していると、なぜだかベルに謝られた。

「…すまん。」
「ん?なんで謝るの?下痢のこと?」
「いや…その、もしかしたら今ので俺とお前が恋人同士だとか噂が広がるかもしれない。」
「えっ、さっきので!?何で!?人間界って下痢で恋人同士だと思われるの!?」

僕人間界には馴染めないかも~…。

何とも特殊な人間界の事情についていけないまま、僕は次の日を迎える。
しかし集合場所である鍛錬場に入った途端騎士見習い達が僕とベルを見ながらコソコソするのを見て、僕はますます困惑顔になってしまった。

「何かみんな僕達を見てヒソヒソしてるね…?」
「…だから昨日言っただろ。」
「…だって下痢だよ?意味分かんない。」

取り敢えず柔軟をしながら軽く走り、体が温まったところで木剣で素振りをする。
その間も僕はジロジロ視線を感じたが、取り敢えず気にしないようにしつつ淡々とメニューをこなしていった。

鍛錬が終わる頃になると昨日見た団長らしき人と騎士が数人やって来て、僕達に整列するよう号令を掛ける。

「私の名はガーガリアム。王立騎士団団長である。騎士団は第一部隊から第七部隊まで役割毎に分かれているが、今日からそれぞれの部隊に二週間ずつ仮配属とし、本人の希望と各隊長の判断の元正式に配属となる。では名前を呼ばれた者から各隊長の列へ移動するように。」

順々に見習い達が呼ばれて行く中、僕の名前も呼ばれ第一部隊へと並ぶ。
第五部隊に配属となったベルをチラリと確認すると何とも苦い顔をしていて、僕は不思議に思いながらも前を向いた。

「王立騎士団第一部隊長、エールズだ。我々は主に王族や要人の警護を主としている。近衛部隊とも呼ばれているな。今回は仮配属と言うことで王族でもあり王立騎士団最高指揮官でもある第二王子殿下の警護にもあたることになった。」
「やぁ、第二王子のファルバンだ。見習いの小鹿ちゃん達、二週間宜しくね?」

第二王子が挨拶しながら僕を見つけ、口角を上げる。
その顔を見て僕はそっと目を逸らした。
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