コロニー

神楽 羊

文字の大きさ
上 下
10 / 20

第十話 神との対峙

しおりを挟む

邂逅








 ヨコと話した夜私は夢を見た、自らを神だと名乗るものの夢を。
 光に包まれていてそこにいるものの形を見る事は私には出来なかった。



***


 お前に会うのは初めてだな。
 私はお前達人間が大いなる神と呼んでいるものだ。

 今のお前には完全には理解し見ることが出来ないだろう。
 それは私がお前達と住んでいる次元とは違う場所に存在しているからだ。

 お前達が絵画の中を理解できない様にな

 私はお前の心を読む事が出来る、私の一部がお前の心臓に喰い込んでいるのだから
 怒りと憎しみの感情が渦巻いているのだろう?それは何故私を崇め奉るのかという理不尽について

 少し昔話をしよう。
 我々は遥か昔にこの星に降り立った。私は孤独ではなく我々の内の一つだったのだ。

 此処に来た理由は自分達の星ではもう枯渇してしまったある鉱物を星に持ち帰る為、その為の働き手として土塊から人間を作った。
 お前達が魂や心と呼んでいる不確かな物は私達の一部だ。

 実体があると言えばある、そして無いと言えば無い。
 風に散る野焼きの煙の様なそれだけ不安定なもの、だから人間はよく壊れた。分け与えたものは定着せずにすぐに動かなくなった。
 そして私達は考えた、お前達の中の一部の肉体に強い魂を入れそれを信仰の対象とする様にしようと。
 そういう風に体系化すると強い魂に引っ張られる様に人間が壊れる事は少なくなった。
 後は器として泥の他にとうもろこしの粉を混ぜたりして調整をした。
 なかなか上手く出来ているだろう?

 それが継手でありニエと呼ばれる存在なのだ。

 そうして私達は鉱物を持ち帰る事に成功し我々の大部分は星に帰った。

 今残っているのはその残滓だけで人間の営みは続いている。
 今、人間が生活するその全ては遥か昔から続くただの名残りなのだ。

「リンネが死んだのも私が継手になったのもジンが腕を失ったのも特に意味が無かったと言うのか?」

 …そうだ、だが意思を持ったと自ら思い込んでいる人間達の戯れの為に理由も作ってやった。
  クリーチを作ったのも我々だ。
 あの中の特別な個体、その生存する本能として、大きな魂を狙う様に創造した。

 素直な人間達は今も種族を守る為という信仰を捨てずコロニーでクリーチを狩り続けているだろう?

 愚かな事に私を信じない者達を追放し、しまいには人間同士でも争い出す始末、
 なんと救いようのない哀れでみじめな生き物だ。

 

「ふざけるな!死なないで済んだ人間が、戦わずに済んだ人間が今までにどれだけ散っていったと思っているんだ!」

 お前は勘違いをしている。 

 人間は私達が造ったのだぞ?

 我々が帰る時に根絶やしにしても良かったものを生かしてやっているだけでもありがたいと思って欲しいものだ。


 ただ私も長く孤独に存在し過ぎた。
 戯れにも飽きた、お前達のお守りにもな。

 救ってやりたいとも思っている。


 ただお前を殺そうとする人間をお前が殺そうとする、という契約は呪縛のようにお前を縛り続ける。

 それを退けられる程の人間がいればこの連鎖を断ち切る事が出来るかもしれんな。

「何故そんな事を私に話す?」

 言ったではないか、もう戯れに飽きずっと人間を見て来た私は少しばかりお前達を哀れんでいるのだ。

 自ら考える事も出来ず見えてもいないものに縋り続ける弱い者達に。 


 私の存在が消えるという事は私は全てに還れるという事。義務と惰性だけでここまで来たがそろそろ私も楽になりたいのだ。

 もうお前に会う事もないだろうがお前がこれからどうするか決めろ。

 終わらせても終わらせなくても我々の存在からすれば何の影響はないだろうがな。

 古い護り手達は継ぐ事を至上命題としている。
 お前が死んだとすれば心臓を開き次に継ぐ事を人間の喜びだと信じているからな。

「…ヨコは自分の親友を殺してもなお継ぐ事を自らの価値だと思っている。そうではないとリンネにとどめを刺した事を自分で許せなくなるだろうな。」

 そういう事だ。では私は消えるとしよう。
 さらばだ若き継手よ。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

呪われてしまった異世界転生者だけど、今日も元気に生きています

文字満
ファンタジー
井ノ上土筆は転生者だ。  物語に限らず主人公とは無縁の人生を歩み、子宝にも恵まれ、それこそ、日本政府がモデルケースとして用いるような極めて平凡なサラリーマンだった。  極めて平和な人生を歩み、子育ても一段落し、老後のプランを考え始めた矢先、出張先で突然意識を失い、そのまま帰らぬ人となってしまった。  多少の未練を残しながらもこの世にしがみつく程でも無く、魂が帰す場所である輪廻《りんね》へと還る予定であったのだが、その途中、ここ異世界ラズタンテの神を自称する存在《アティアノス》により掬い上げられたのだ。  それが偶然なのか必然なのか、それこそ正に神様のみぞ知る所なのだろう。  土筆はアティアノスと名乗る神からの神託を受け入れ異世界ラズタンテへ転生する事になったのである。  しかし、光が強ければ闇もまた深くなるのは世の常だ。  土筆がラズタンテの地へと転生する一瞬の隙を突かれ、敵対する魔王の妨害により呪いを受けてしまったのである。  幸運にも転生は無事終えることが出来たのだが、受けた呪いにより能力が大幅に制限されてしまう。  転生後、土筆が身を寄せていた教会に神からの啓示を受けた高位の神官が入れ替わり立ち代わり訪れては解呪を試みたのだが、誰一人として成功する者は現れず、最終的に新たな使命を担い再出発する事で落ち着いたのだった。  御《み》使いとして現れたコルレット=ラザ=フリルの計らいによって、同じような境遇にある天使メルト=リト=アルトレイと供にメゾリカの街に拠点を移し、新しい使命を果たす為に活動を始めるのであった。 *この小説は他サイトでも投稿を行っています。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

婚約者が不倫しても平気です~公爵令嬢は案外冷静~

岡暁舟
恋愛
公爵令嬢アンナの婚約者:スティーブンが不倫をして…でも、アンナは平気だった。そこに真実の愛がないことなんて、最初から分かっていたから。

処理中です...