真夏の約束

カリナ

文字の大きさ
上 下
9 / 9

第八話「秘密の通路」

しおりを挟む
万城家に車がとまり、琴と時子が帰ってきた。

「おかえりなさいませ!!」
大勢の使用人や女給仕たちが出迎えた。

「うむ…おや?沙苗はどうした?」
琴は全員を見渡しながら言う。

「あっあの娘でしたら、今【開かずの間】に食事を届けさせに出しております」
若奈が焦って言った。

「…若奈…お前妙な事を企んでるのではあるまいな?あの部屋はお前以外には立ち入れないように言ったはずだが?なぜ早苗に行かせた?」
琴が若菜を睨む。

「企むだなんて滅相もございません!さあお疲れでございましょう?時子様も少しお休みになられては…」
若奈がそう言うと、時子が若奈を平手打ちした。

「女中の分際でお節介な事言わないで頂戴!さっ!行きましょうお婆さま。」
時子と琴は屋敷の中へ入って言った。

「(ちっ!あの女狐、だんだんおばばにそっくりになってきやがって!まあいいわ!早く【裏帳簿】を見つけなさい沙苗!)」
心の中で呟く若奈。


一方、【開かずの間】では。

「そう言えば、この部屋の窓からあの【金のなる木】がちょうど見えるわね~」
沙苗は窓を覗き込んだ。

「あの木は一本だけこの窓から見える唯一の木だよ。なんだか病気で動けない僕を監視してるみたいだよ。」
駿太郎は苦笑いで言った。

「…あの木が監視…もしかして!!」
沙苗は突然ひらめいたように部屋の中をガサガサと調べ始めた。

「どうしたんだい?急に!」
駿太郎もベッドから起き上がった。

「あの木が監視してるって言ったじゃない?つまりあの【金のなる木】の唯一見えるこの部屋のどこかに何かヒントがあるはずよ!」
沙苗は本棚に手を掛けたその時!

本棚が動いて秘密の通路が現れる!

「あった!秘密の通路!」
沙苗。

「まさかこの部屋にこんな仕掛けがあったなんて…」
駿太郎も驚く。

「私の勘だとこの奥に【裏帳簿】があるはず…」
沙苗。

「とにかく行ってみよう!」
駿太郎。

「ええ!」
沙苗。

二人は秘密の通路を進んで行った。

通路は薄暗く不気味だった。

二人は通路を進み倉庫のような部屋に出た。

「全くおどろいたな。この屋敷にこんな部屋があったとは!」
駿太郎は辺りを見回した。

「駿太郎さん!見てあの金庫!」
沙苗は大きな金庫を指差した。

「鍵がかかってるな。よし!」
駿太郎は落ちていた針金で金庫の鍵穴を探る。

ガチャっと音がして金庫が開いた!

「よし!開いたぞ!」
駿太郎。

そして金庫の扉を開くと、一冊の帳簿が置かれてある。

「これよ!これだわ!見つけた【裏帳簿】!」
沙苗は喜び勇んで【裏帳簿】を手に取った。


その時!!

「…ご苦労だったわね沙苗…」
後ろから若奈が現れる!

圭吾と千鶴を縛り連れている。

「なっ!!あなた!どう言うつもり?」
沙苗。

「その子たちを離せ!」
駿太郎。

すると若奈は拳銃をだして駿太郎の足元を撃つ。

「きっきさま!」
駿太郎。

「さあ、沙苗。【裏帳簿】をこっちによこしなさい!」
若奈が迫る。

「…最初から裏切るつもりだったの?」
沙苗。

「裏切る?あっはははは!とんだ間抜けなお嬢さん!あたしはあんたたちを利用しただけだよ!こうなればもう用済み!
約束通り逃してあげる…あの世へね!」
若奈が言ったとたん銃声が響く!

つづく
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

九竜家の秘密

しまおか
ミステリー
【第6回ホラー・ミステリー小説大賞・奨励賞受賞作品】資産家の九竜久宗六十歳が何者かに滅多刺しで殺された。現場はある会社の旧事務所。入室する為に必要なカードキーを持つ三人が容疑者として浮上。その内アリバイが曖昧な女性も三郷を、障害者で特殊能力を持つ強面な県警刑事課の松ヶ根とチャラキャラを演じる所轄刑事の吉良が事情聴取を行う。三郷は五十一歳だがアラサーに見紛う異形の主。さらに訳ありの才女で言葉巧みに何かを隠す彼女に吉良達は翻弄される。密室とも呼ぶべき場所で殺されたこと等から捜査は難航。多額の遺産を相続する人物達やカードキーを持つ人物による共犯が疑われる。やがて次期社長に就任した五十八歳の敏子夫人が海外から戻らないまま、久宗の葬儀が行われた。そうして徐々に九竜家における秘密が明らかになり、松ヶ根達は真実に辿り着く。だがその結末は意外なものだった。

何の変哲もない違和感

遊楽部八雲
ミステリー
日常に潜む違和感を多彩なジャンル、表現で描く恐怖の非日常! 日本SFのパイオニア、星新一を彷彿とさせる独特な言い回し、秀逸な結末でお送りする至高の傑作短編集!!

陰影

赤松康祐
ミステリー
高度経済成長期、小さな町で農業を営み、妻と子供二人と日々を共にする高城慎吾、変化に乏しいその日常に妖しげなベ-ルを纏った都会から移住して来た役場職員の山部俊介、果たしてその正体とは...

バナナ代返金請求書

つっちーfrom千葉
ミステリー
 慢性の貧乏性を患い、女房や娘に愛想をつかされて逃げられた中年の惨めな男は、その後、必然的に生活資金が底を尽き、食料やわずかの金銭を求めて、街中を徘徊中にするはめに陥る。しかし、衰えた体力はそれすらも許してくれず、スーパーマーケットの前で倒れこんでしまう。そこでスーパーの店長からひと房のバナナを分け与えられ、励ましの言葉を受ける。しばらくはその善行に感謝してひたむきな努力と成功を夢見るが、病的な被害妄想から精神に破綻をきたし、やがては、その店長を恨むようになる。彼の怨念ともいえる妄想癖は、やがて、長文の逆恨みの手紙を送りつけるに至る。 自分の通っている病院で、モンスタークレーマーの女性を見る機会があり、それがこの奇怪なストーリーを生み出すきっかけになりました。少しサイコホラーも入り混じったサスペンスです。あまり深刻には受け止めずに、「こんな人が実際にいたら、やばいでしょ」と笑い飛ばして頂ければ幸いです。

十二死

知人さん
ミステリー
干支(子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、 申、酉、戌、亥)の面を着けた12人の 犯罪者を刑事たちが捕まえる物語。

リセットボタン

井上桃子
ミステリー
リセットボタン それは、誰もが一度は思うこと「あの頃に戻ってもう一度やり直したい」 それが3回叶うボタンである リセットボタンのルール ・一度戻った時に2度と戻れない ・人の生死に関わるリセットは、代償が支払われ、未来に起こるものと交換される ・生死のリセットは、本人以外に適用されるが、2度目は使えない ・生死に関わるリセット及び人生の分岐点で2度と起こらない時に押すときは、必ず警告表示がされる ・警告表示がされたリセットは、二度と戻れない ・時間軸は、一番最初に戻した過去には戻れない ・3回目のリセットボタンを使ったらボタンは消失し、それまでの過去に戻った2度の記憶は抹消される ※注意※ このリセットボタンは、2回までをおススメする 3回目を押さない人生を歩むことを強く願う あなたの人生が、これから先幸多からんことを願っている

滑稽ね

まこさん
ミステリー
ある資産家の未亡人と愛人の話 突然主人を亡くし未亡人となった沙耶子は、主人の愛人の存在を感じ取る。 愛人は一体誰なのか?愛人の目的とは…?

大正謎解きティータイム──華族探偵は推理したくない

山岸マロニィ
ミステリー
 売れない歌人であり、陰陽師の末裔・土御門保憲の元には、家柄を頼って様々な相談事が舞い込む。  相談事を持ち込む主犯である雑誌記者・蘆屋いすゞとは、趣味の紅茶を通しての持ちつ持たれつの間柄。  ある時、いすゞが持ち込んだのは、浅草オペラの興行主からの依頼。  ――劇場に潜む『怪人』の正体を明かしてほしい。  渋々引き受けた保憲を待ち構えていたのは、プリマドンナを次々と襲う事故死の謎だった――。  不定期連載。  どうぞよろしくお願いいたします。 (2023.2.5 追記) 少しの間、連載をお休みさせて頂きます。 申し訳ございません。

処理中です...