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第五話「取引」
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【開かずの間】に入って来たのは、ふくよかな女給仕である。
「はじめまして!あたしはこの万城家の給仕長、関坂 若奈!よろしくね。お嬢さんたち!」
若奈が不気味な笑みを浮かべた。
「俺たちをどうしようってんだよ!?」
圭吾。
「主様のお言い付けでね。あんたたちは今日からこの屋敷の丁稚として働いてもらう事になったの。」
若奈
「沙苗ちゃん、丁稚ってなぁに??」
千鶴。
「…よくわからないけど、奉公人ってことかな。」
沙苗。
「察しのいいお嬢さんだこと。まあ立ち話もなんだから給仕室にいらっしゃいな。お話ししましょう?」
若奈は沙苗の顔を覗きこんだ。
「…わかったわ」
沙苗。
こうして沙苗と圭吾、千鶴は給仕室に案内された。
立派な装飾のある部屋である。
「ようこそあたしの可愛い子供たち!あんたたちはツいてるわよ?」
若奈。
「…どう言うことですか?私たちを人買いに売るんじゃなかったの?」
沙苗。
「あ~。どうやら主様の気が変わったみたい。あんたたちは特別だからしばらくこの屋敷に置いとくように言われたのよ。」
若奈。
「あなたたちが何を考えてるか知らないけど、私たちはあなたたちの言いなりになんかならないわ!」
沙苗は強い目で言う。
「そうだ!だれがお前らの言うことなんか聞くか!」
圭吾。
「坊や、口の利き方には気をつけな。私はここの給仕長。あんたたちを生かすも殺すもあたし次第いなんだよ!覚えときな!」
若奈は圭吾をにらんだ。
「うっ…くそ!」
圭吾。
「…しかしお嬢ちゃん。綺麗な顔をしているねぇ。主様もなんでこんな高く売れそうな子を屋敷に置いとけだなんて言ったのかしらねぇ」
若奈は不思議そうに言う。
「…このペンダントを見た時からあの人様子が変だったわね。」
沙苗が首からペンダントを出した。
すると
「はは~ん!そう言う事ね!」
若奈は何かを悟ったように言う。
「なっなんだよ!どう言う事だよ!」
圭吾。
「…あんたたち、気に入ったわ!…どう?あたしと組まない?」
若奈は突然提案してきた。
「組む?どう言う事?…」
沙苗は首を傾げた。
「…あたしはね。長年この万城家に仕えてきてるからこの屋敷の様々な不祥事を知ってるの。でも証拠がない。加えて、あの古狸のおばばの傲慢さにはもううんざりしてるのよ。…だから私はこの万城家を潰したい!」
若奈。
「…私たちにどうしろと…?」
沙苗。
「あんたたちをここから逃してあげる!
その代わりにこの万城家の不祥事に関する証拠を集めて欲しいのよ。しばらくあんたたちは丁稚としてこの屋敷に居られる、その間に事を進めるの!」
若奈。
「姉ちゃん!こんなやつの言う事なんか信用できないよ!」
圭吾。
「だったら、これならどう?あんたたち2人が付けてるペンダントの秘密も教えたげるわ」
若奈。
「このペンダントについて何か知ってるの?」
沙苗。
「…えぇ。だからあたしの手足となってこの屋敷の情報を集めてちょうだい!どう?いい取引でしょう?」
若奈。
「沙苗ちゃん!どうするの!?」
千鶴が心配そうに言う。
「…わかったわ。だけどこちらからも条件があるわ」
沙苗。
「…何かしら?」
若奈
「あの【開かずの間】に閉じ込められてる駿太郎さんと、私たち3人に危害は加えない、それからこの屋敷から逃げる時は4人一緒。これが私からの条件よ!」
沙苗。
「賢いお嬢さん!いいわ!交渉成立ね!」
若奈が不敵な笑みを浮かべた。
「大丈夫かよ姉ちゃん!こいつら信用していいのか?」
圭吾。
「ここは大正時代よ。知らない世界で闇雲に行動するのは危険だわ。それなら信用できなくても今は従ったほうがマシよ。」
沙苗が圭吾に耳打ちした。
「でっでもなー…」
圭吾。
「大丈夫だよ圭吾くん!沙苗ちゃんの言う通りだよ?私、売られるなんてやだもん」
千鶴。
「それで、これから私たち何をすれば良いの?」
沙苗。
「…1週間後に旦那様がお帰りになる。
それまでにやってもらいたいことがあるのよ」
若奈。
「何だよ!勿体ぶってないで言えよ!」
圭吾。
「この万城家の【裏帳簿】を探し出しなさい」
若奈。
「…【裏帳簿】…?」
沙苗。
つづく
「はじめまして!あたしはこの万城家の給仕長、関坂 若奈!よろしくね。お嬢さんたち!」
若奈が不気味な笑みを浮かべた。
「俺たちをどうしようってんだよ!?」
圭吾。
「主様のお言い付けでね。あんたたちは今日からこの屋敷の丁稚として働いてもらう事になったの。」
若奈
「沙苗ちゃん、丁稚ってなぁに??」
千鶴。
「…よくわからないけど、奉公人ってことかな。」
沙苗。
「察しのいいお嬢さんだこと。まあ立ち話もなんだから給仕室にいらっしゃいな。お話ししましょう?」
若奈は沙苗の顔を覗きこんだ。
「…わかったわ」
沙苗。
こうして沙苗と圭吾、千鶴は給仕室に案内された。
立派な装飾のある部屋である。
「ようこそあたしの可愛い子供たち!あんたたちはツいてるわよ?」
若奈。
「…どう言うことですか?私たちを人買いに売るんじゃなかったの?」
沙苗。
「あ~。どうやら主様の気が変わったみたい。あんたたちは特別だからしばらくこの屋敷に置いとくように言われたのよ。」
若奈。
「あなたたちが何を考えてるか知らないけど、私たちはあなたたちの言いなりになんかならないわ!」
沙苗は強い目で言う。
「そうだ!だれがお前らの言うことなんか聞くか!」
圭吾。
「坊や、口の利き方には気をつけな。私はここの給仕長。あんたたちを生かすも殺すもあたし次第いなんだよ!覚えときな!」
若奈は圭吾をにらんだ。
「うっ…くそ!」
圭吾。
「…しかしお嬢ちゃん。綺麗な顔をしているねぇ。主様もなんでこんな高く売れそうな子を屋敷に置いとけだなんて言ったのかしらねぇ」
若奈は不思議そうに言う。
「…このペンダントを見た時からあの人様子が変だったわね。」
沙苗が首からペンダントを出した。
すると
「はは~ん!そう言う事ね!」
若奈は何かを悟ったように言う。
「なっなんだよ!どう言う事だよ!」
圭吾。
「…あんたたち、気に入ったわ!…どう?あたしと組まない?」
若奈は突然提案してきた。
「組む?どう言う事?…」
沙苗は首を傾げた。
「…あたしはね。長年この万城家に仕えてきてるからこの屋敷の様々な不祥事を知ってるの。でも証拠がない。加えて、あの古狸のおばばの傲慢さにはもううんざりしてるのよ。…だから私はこの万城家を潰したい!」
若奈。
「…私たちにどうしろと…?」
沙苗。
「あんたたちをここから逃してあげる!
その代わりにこの万城家の不祥事に関する証拠を集めて欲しいのよ。しばらくあんたたちは丁稚としてこの屋敷に居られる、その間に事を進めるの!」
若奈。
「姉ちゃん!こんなやつの言う事なんか信用できないよ!」
圭吾。
「だったら、これならどう?あんたたち2人が付けてるペンダントの秘密も教えたげるわ」
若奈。
「このペンダントについて何か知ってるの?」
沙苗。
「…えぇ。だからあたしの手足となってこの屋敷の情報を集めてちょうだい!どう?いい取引でしょう?」
若奈。
「沙苗ちゃん!どうするの!?」
千鶴が心配そうに言う。
「…わかったわ。だけどこちらからも条件があるわ」
沙苗。
「…何かしら?」
若奈
「あの【開かずの間】に閉じ込められてる駿太郎さんと、私たち3人に危害は加えない、それからこの屋敷から逃げる時は4人一緒。これが私からの条件よ!」
沙苗。
「賢いお嬢さん!いいわ!交渉成立ね!」
若奈が不敵な笑みを浮かべた。
「大丈夫かよ姉ちゃん!こいつら信用していいのか?」
圭吾。
「ここは大正時代よ。知らない世界で闇雲に行動するのは危険だわ。それなら信用できなくても今は従ったほうがマシよ。」
沙苗が圭吾に耳打ちした。
「でっでもなー…」
圭吾。
「大丈夫だよ圭吾くん!沙苗ちゃんの言う通りだよ?私、売られるなんてやだもん」
千鶴。
「それで、これから私たち何をすれば良いの?」
沙苗。
「…1週間後に旦那様がお帰りになる。
それまでにやってもらいたいことがあるのよ」
若奈。
「何だよ!勿体ぶってないで言えよ!」
圭吾。
「この万城家の【裏帳簿】を探し出しなさい」
若奈。
「…【裏帳簿】…?」
沙苗。
つづく
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