真夏の約束

カリナ

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第三話「万城家の人々」

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不破と名乗る男から託されたスマートフォンにメールが!

沙苗は怖る怖るスマートフォンの画面を開いた。

「誰かからのメールだわ!」
沙苗

「どういう事だよ!俺たち今大正時代にいるんだぜ?メールなんか届くはずが…」
圭吾。

「沙苗ちゃん、それなぁに?見たことない機械だね。」
千鶴は不思議そうに覗き込んだ。

「これはね。未来の便利な道具ってとこかな。離れた相手とメール…手紙や電話ができるのよ。」
沙苗。

「ふ~ん。」
千鶴は興味津々だ。

「っで!姉ちゃん!誰から?」
圭吾。

「ちょっと待って!今開くわ!」
沙苗はそう言うとメールを開いた。

差出人の名は【橘かえで】とある。

[沙苗、圭吾、元気でいますか?私はあなた達の事を片時も忘れた事はありません。…でもあの時はああするしかなかった…こんな私をどうか許してほしい。
…これから何があっても生きるのよ。強く、気高く…どうかあなた達に神の御加護があらんことを…]

メールにはこう記されていた。

「橘…かえで?誰なんだ?」
圭吾。

その時、沙苗の脳裏には夢に出てきた温かな女性の言葉が浮かんでいた。

「…強く…気高く…」
沙苗は呟いた。

「沙苗ちゃん?」
千鶴は沙苗の顔を覗く。

「…もしかしてだけど、この【橘かえで】って人、私たち姉弟と何か関係があるのかしら…?」
沙苗。

「でもなんであのおっさんがくれたスマホにメールが来たんだ?」
圭吾。

「…わからないわ。でもこの人が何か私たちについて知ってるのは間違いない…」
沙苗。

その時!!

「貴様ら!ここで何してる?」
万城家の使用人に見つかった。

「やべ!見つかった!」
圭吾は焦る。

千鶴は沙苗の後ろに隠れた。

「貴様ら、どうやって地下室の鍵を開けた?」
使用人。

「いや、その、これは…」
沙苗も動揺して言葉が出ない。

「まぁいい!とにかく貴様らを主様の元へ連行する!」

すると数名の使用人たちが地下室へ降りてきて3人を拘束した。

「いや!離して」
沙苗がもがいた。

「なんなんだよお前ら!」
圭吾。

「つべこべ言わずについて来い!!」
使用人達に縄で腕を縛られた3人は地下室を上がり、屋敷内を連行された。


そして立派な和洋折衷な部屋の前に連れてこられた。

「主様!地下室に閉じ込めていた者たちが脱走を図ろうとしていたので連行いたしました。」
使用人。

すると扉の向こうから低い老婆の声がする。

「…入りな…」

すると扉が開き、立派な大きな部屋に3人は入れられた。

すると長いテーブルの一番奥に座る老婆が口を開く。

「ほぅ。お前たちかい。村はずれの山で倒れてたってのは!」
老婆は立派な着物を着て威厳に満ちていた。

「あんた誰だよ?俺たちをどうする気だ?」
圭吾が叫んだ。

するとテーブルに座っていた着物姿の女性が言う。

「あら、威勢のいい坊やだこと。汚らわしい!」
その着物姿の女性はまるで虫でも見るような態度で言う。

「時子。客人に対して失礼だぞ。」
テーブルの反対側にはタキシード姿の紳士的な男性が座っている。

「あら恭介お兄様は、あの様な女が好みかしら?」
時子が沙苗に目をやり茶化す。

「2人とも静かにおし!…縄を外しておやり!大事な【商品】に傷がつくだろ?」
高貴な老婆は言う。

すると使用人は3人の縄をほどいた。

「私たちをどうする気ですか?」
沙苗。

「おや、これまた威勢の良いお嬢さんだ。それに中々の上玉じゃないか」
高貴な老婆は沙苗に近寄って言う。

「まったく!困ったものですわ!勲功不足でお爺さまはいつまで経っても陸軍大将とまり、いつになったら地方の地主から爵位を授かって出世できるのやら!」
時子は何やら不満をもらす。

「お爺さまの事を悪く言うのはやめなさい時子。そのためにこうして表向きは地主だが裏稼業で密かに資金を貯めている」
恭介。

「…あなた達…一体何を…」
沙苗。

「今にわかることさ。この万城の館に来たのが運の尽きさね。」
老婆は嘲笑うかの様に言う。

「沙苗ちゃん…」
千鶴は震えている。

「千鶴ちゃん、大丈夫よ!きっと大丈夫!このペンダントが私たちを守ってくれるわ…」
沙苗のペンダントが燭台に照らされて光る。

「ん…お前たち、妙な首飾りをしているね。」

老婆がペンダントを覗き込んだ。

次の瞬間!
「なっ…この紋様は…」
老婆の顔が急に青ざめる。

「お婆さま?どうなさったの?その首飾りに何か?」
時子。

「…いっいやなんでもない…まぁいい、今日の所は許してやる。」
老婆は血相を変えている。

「なっなんだ?あの偉そうな婆さん、急に態度が変わったぞ?」
圭吾。

「そうだわ!この3人はあの【開かずの間】にでも入れておきましょうよ!」
時子。

「そうだな!この3人を【開かずの間】へ!」
恭介が使用人に指示を出す。

3人は再び連行される。


部屋に残った、老婆と恭介、時子。

「お婆さまどうなさったの?ご気分でも悪くて?」
時子。

「お体に触ります。少し休まれた方が…」
恭介。

すると老婆は急に高笑いをはじめた。

「お婆さま?」
時子。

「あっはははは!そうかい!あの小娘がねぇ!」
老婆。

「あの娘たちがどうかされたのですか?」

「…あの娘の首飾りの紋様は間違いない!【橘子爵家】の紋様…」
老婆。

「なっ!何ですって!?」
時子は持っていたティーカップを落として割った。

「【橘子爵家】と言えば、東京府において五指に入る有数の華族の名門財閥…まさかあの娘と小僧は…」
恭介。

「面白いじゃないか…」
老婆は不気味な笑みを浮かべる。

【橘子爵家】…とは一体?

つづく



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