4 / 29
第4話
しおりを挟む
従者の人が大きな棒みたいなのを包む袋を解く。中から大きな槍が出てきた。中世の騎士が小脇に抱えて使う感じのヤツだ。知ってる、あれを抱えて馬に乗ったまま相手を突くんだよね。けれど、大男さんの行動は違った。
「娘一人を大勢で囲むしか能のない有象無象がこの俺に敵うと思ってか! 思い知れい!」
そう言って、デッカイ槍を片手で掴んで頭の上で振り回し始めた。ブンブンと風切り音がして辺りに旋風が巻き起こる。まるでヘリコプターの下に居るみたい。そのまま、大男さんは周りを囲む騎馬の列に突進してゆく。
「うわ! なんてデカイ馬だ。こっち来るな!」
だいたい大男さんの乗っている巨馬と刺客たちのは種類からして違うのか大きさがまるで違う。大男さんの馬は肩の高さが2m以上はあるのに、刺客が乗ってる馬はポニーみたいな馬だ。高さが50cm以上違う。先ず馬がビビッて円陣が崩れちゃった。
「それぇ、それえぇ~い!」
大男さんは崩れた刺客の円陣の隙間に巨馬を割り込ませたり、わざと並んで走ったりして威嚇している。と言うか遠目には、もう揶揄ってるみたいだ。相変わらず声量が凄い。空気がビリビリと震えて、大男さんが声を出すたびに刺客の馬には棹立ちになるのも居る。
「ほれ! ほれ! ほれぇ~!」
大男さんは大きな槍で刺客たちを馬から突き落としてゆく。まるで戦いになっていない。刺客たちの槍は長さが1mと少し、大男さんの槍は3mはある。間合いがまるで違う。刺客の中には槍を投げつけるヤツも居るけど乗ってる馬が暴れちゃうので明後日の方向に飛んで行っちゃった。
「ほげぇっ!」「はがぁっ!」「げぼぁっ!」
刺客たちは変な声を上げながらどんどん落馬してゆく。見ていて気が付いた。大男さんはわざと殺さないように手加減をしているんだ。あんなに恐ろしかった刺客たちをまるで子供扱いだ。ざまあみろ! なんか愉快になって来たよ。
「こうなったら金貨は要らん。娘の命だけは頂く。それで『仕事』は終わりだ!」
刺客の一人が叫んで、こちらに馬を向けて駆けて来た。まだ金貨奪う気だったんだ。当然、コイツも大男さんがやっつけてくれるよね? と思ったら彼はチラリと見ただけで他の刺客を追い回している。え? 何で? 一人くらい自分で何とかしろと?(汗) とりあえず短剣を抜く。
「ちょぁあ~っ!」
刺客がどんどん近付いて来て、もう槍の間合いに入ると思った瞬間。お供の小男さんが馬上の刺客に強烈な跳び蹴りを喰らわせた。馬が駆けて来る力がカウンターになってソイツは5mくらい後ろに吹っ飛んだ。地面を転がって白目を剥いて気絶しちゃった。
「おい、猿。娘は任せたぞ!」
「へい、若旦那。言われるまでもありやせん。」
大男さんがこちらを向きもせず片手を挙げて声を掛けてきた。小男さんも大男さんの方を見ず、周りを隙なく警戒しながら答える。すごい。息がピッタリだ。小男さんを良く見る。私より背は低そうだけど全身引き締まってて素早そうだ。ちょっとは見習え、微妙チビデブ!
「危ないところをありがとうございました。」
私は小男さんにお礼を言う。彼はちょっとビックリしたように丸い目をして、こちらをチラリと見た。次の瞬間、片目を瞑ってニカッと笑う。年は30歳くらいかな? オジサンなんだけど表情が悪戯っぽい少年みたいだ。私はすっかり安心して、また大男さんの方を見る。
「ほれほれ、これに懲りたら俺に喧嘩を売るなど二度とするな。次は命を獲るぞ。」
刺客はもう全員、地面に転がってる。意識があるのは二、三人だ。馬もビックリして逃げちゃったのか数頭しか居ない。
「そら、失神てる奴らを連れてサッサと失せろ。俺は旅を急いでおるのだ!」
大男さんが言った途端、刺客たちは意識の無い仲間たちを馬に乗せ始めた。小男さんが倒したヤツを回収しに来た刺客がチラッと私を見た。瞬間、小男さんがダン!と足を踏み鳴らす。ソイツはビビッて後ろに尻餅をついた。良く見たらコイツ、私を「楽しもう」って言った嫌らしいヤツだ。ざまぁ! 良い恰好だよ!
「娘。無事だったか? 災難だったな。」
刺客たちは皆、尻尾を巻くように逃げて行っちゃった。大男さんが近付いて来て馬上から声を掛けて来る。それにしてもデッカイ。馬が大きい上に乗ってる人も大きいから、凄い高いところから声がする。まるで巨人と話してるみたいだ。けど、不思議と怖くない。
「ありがとうございます。おかげさまで怪我も無くて無事です。私、佐藤 凛と言います。」
「ふむ。『サトウ』が姓で『リン』が名か?」
私がお礼を言うと大男さんは名前を確認してきた。そうか、こちらの世界は名前が先で苗字を後で言うんだった。ちょっと恥ずかしくなって顔が赤くなる。私の返事を待たないで大男さんが自己紹介を始めちゃった。
「ならば俺は其方をリンと呼ぼう。俺はリーネオ・インゼルと言う。リーネオと呼ぶが良い。今はある商会の跡取り息子をやっている。」
これが私とリーネオさんの出会いだった。
「娘一人を大勢で囲むしか能のない有象無象がこの俺に敵うと思ってか! 思い知れい!」
そう言って、デッカイ槍を片手で掴んで頭の上で振り回し始めた。ブンブンと風切り音がして辺りに旋風が巻き起こる。まるでヘリコプターの下に居るみたい。そのまま、大男さんは周りを囲む騎馬の列に突進してゆく。
「うわ! なんてデカイ馬だ。こっち来るな!」
だいたい大男さんの乗っている巨馬と刺客たちのは種類からして違うのか大きさがまるで違う。大男さんの馬は肩の高さが2m以上はあるのに、刺客が乗ってる馬はポニーみたいな馬だ。高さが50cm以上違う。先ず馬がビビッて円陣が崩れちゃった。
「それぇ、それえぇ~い!」
大男さんは崩れた刺客の円陣の隙間に巨馬を割り込ませたり、わざと並んで走ったりして威嚇している。と言うか遠目には、もう揶揄ってるみたいだ。相変わらず声量が凄い。空気がビリビリと震えて、大男さんが声を出すたびに刺客の馬には棹立ちになるのも居る。
「ほれ! ほれ! ほれぇ~!」
大男さんは大きな槍で刺客たちを馬から突き落としてゆく。まるで戦いになっていない。刺客たちの槍は長さが1mと少し、大男さんの槍は3mはある。間合いがまるで違う。刺客の中には槍を投げつけるヤツも居るけど乗ってる馬が暴れちゃうので明後日の方向に飛んで行っちゃった。
「ほげぇっ!」「はがぁっ!」「げぼぁっ!」
刺客たちは変な声を上げながらどんどん落馬してゆく。見ていて気が付いた。大男さんはわざと殺さないように手加減をしているんだ。あんなに恐ろしかった刺客たちをまるで子供扱いだ。ざまあみろ! なんか愉快になって来たよ。
「こうなったら金貨は要らん。娘の命だけは頂く。それで『仕事』は終わりだ!」
刺客の一人が叫んで、こちらに馬を向けて駆けて来た。まだ金貨奪う気だったんだ。当然、コイツも大男さんがやっつけてくれるよね? と思ったら彼はチラリと見ただけで他の刺客を追い回している。え? 何で? 一人くらい自分で何とかしろと?(汗) とりあえず短剣を抜く。
「ちょぁあ~っ!」
刺客がどんどん近付いて来て、もう槍の間合いに入ると思った瞬間。お供の小男さんが馬上の刺客に強烈な跳び蹴りを喰らわせた。馬が駆けて来る力がカウンターになってソイツは5mくらい後ろに吹っ飛んだ。地面を転がって白目を剥いて気絶しちゃった。
「おい、猿。娘は任せたぞ!」
「へい、若旦那。言われるまでもありやせん。」
大男さんがこちらを向きもせず片手を挙げて声を掛けてきた。小男さんも大男さんの方を見ず、周りを隙なく警戒しながら答える。すごい。息がピッタリだ。小男さんを良く見る。私より背は低そうだけど全身引き締まってて素早そうだ。ちょっとは見習え、微妙チビデブ!
「危ないところをありがとうございました。」
私は小男さんにお礼を言う。彼はちょっとビックリしたように丸い目をして、こちらをチラリと見た。次の瞬間、片目を瞑ってニカッと笑う。年は30歳くらいかな? オジサンなんだけど表情が悪戯っぽい少年みたいだ。私はすっかり安心して、また大男さんの方を見る。
「ほれほれ、これに懲りたら俺に喧嘩を売るなど二度とするな。次は命を獲るぞ。」
刺客はもう全員、地面に転がってる。意識があるのは二、三人だ。馬もビックリして逃げちゃったのか数頭しか居ない。
「そら、失神てる奴らを連れてサッサと失せろ。俺は旅を急いでおるのだ!」
大男さんが言った途端、刺客たちは意識の無い仲間たちを馬に乗せ始めた。小男さんが倒したヤツを回収しに来た刺客がチラッと私を見た。瞬間、小男さんがダン!と足を踏み鳴らす。ソイツはビビッて後ろに尻餅をついた。良く見たらコイツ、私を「楽しもう」って言った嫌らしいヤツだ。ざまぁ! 良い恰好だよ!
「娘。無事だったか? 災難だったな。」
刺客たちは皆、尻尾を巻くように逃げて行っちゃった。大男さんが近付いて来て馬上から声を掛けて来る。それにしてもデッカイ。馬が大きい上に乗ってる人も大きいから、凄い高いところから声がする。まるで巨人と話してるみたいだ。けど、不思議と怖くない。
「ありがとうございます。おかげさまで怪我も無くて無事です。私、佐藤 凛と言います。」
「ふむ。『サトウ』が姓で『リン』が名か?」
私がお礼を言うと大男さんは名前を確認してきた。そうか、こちらの世界は名前が先で苗字を後で言うんだった。ちょっと恥ずかしくなって顔が赤くなる。私の返事を待たないで大男さんが自己紹介を始めちゃった。
「ならば俺は其方をリンと呼ぼう。俺はリーネオ・インゼルと言う。リーネオと呼ぶが良い。今はある商会の跡取り息子をやっている。」
これが私とリーネオさんの出会いだった。
0
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

別に要りませんけど?
ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」
そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。
「……別に要りませんけど?」
※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。
※なろうでも掲載中
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる