上位互換を手に入れたから私はお払い箱?《お金持ちの国の【戦巫女】をクビになったけど直ぐに再就職出来ました》

ぶっちゃけマシン

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第1話

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「フハハハハハ、リン! リンはどこに居るか?」

ペルクーリ王太子の笑い声が聞こえる。一応、現在の私の婚約者フィアンセだ。
この人の声って男のくせに変に甲高いから大きい声を出されるとちょっとかんさわる。

「はい。りんはここに。」

私は石造りの部屋の中央に顔をひざまづいた。婚約者フィアンセとは言え相手は王太子だしね。顔を立てて置かないと後で色々としつこいし・・・。

「おお、ここにったか。其方そなたに良い知らせを持って来たぞ? 喜ぶが良い。」

顔を上げて彼の方を見ると小柄な女性を従えている。顔は能面のうめんのように無表情だけど整ってて、まあ美人かな? 少しウェストとかゆるんでる気もするけど・・・。

其方そなたのおかげで此度こたびの戦も大勝利だ。そのおかげでは新たな【戦巫女いくさみこ】を得た。」

はいはい。私は輿こしの上でただ見物してただけだったけどね。

「よって、其方を我が『ゴルジョケア国』の【戦巫女いくさみこ】より解任する。故に婚約も解消となった。どうだ、嬉しいか?」

心の中でチョーン!と音がした。私が【戦巫女いくさみこ】をクビになった音だ。【戦巫女いくさみこ】って言うのは戦争をするときに味方がとても有利になる凄いスキルだ。私が加わった軍勢は弓矢が当たる確率とか敵の攻撃を避ける確率とかがうんと変わるらしい。

この世界に来てから、『ゴルジョケア国』の【戦巫女いくさみこ】として3回のいくさに連れていかれたけど、1回目と2回目なんか戦争になって無かった。相手に【戦巫女いくさみこ】が居なかったからだ。

今度の戦が私にとっての正念場だった。相手にも【戦巫女いくさみこ】が居たから。けれど結果は圧勝だった。どうやら私のスキルの方が強かったみたい。正直、私は胸をで下ろした。ここを追い出されたら行くところが無いからだ。

でも私のおかげで勝てたのにクビなんておかしくない? 婚約解消は正直うれしいけど・・・。

「ククク、どうして私が!と言う顔だな? この者を見よ! お前など比べものにならぬほど美しいだろう!」

そう言ってペルクーリ王太子は横に従えている女性の肩を抱いた。背の高さはお似合いだ。けど遠目にはちょっとおチビでデブなカップルに見えなくもないかな。

はな、其方のように背ばかりデカくてせぎすな女など願い下げなのだ! 今までは国の【戦巫女いくさみこ】と国王は婚姻を結ぶものとのいにしえからの定めがあったゆえ、我慢しておったがもう良い!」

そうですね。私もそこが一番憂鬱ゆううつだったんだよ。けど、「背ばかりデカイ」とはなんだ!身長160cmは元の世界じゃあ普通! 普通なんです! 王太子アンタが162cmしかない微妙なチビなだけでしょ! おまけにデブだし。

「この者を見よ! お前など比べものにならぬほど美しいだろう!」

ソレ、さっき言った。同じこと2回言うな。2乗でバカっぽいから。

「予はこの者、ラスカーシャ・メーイッキを我が『ゴルジョケア国』の【戦巫女いくさみこ】に任じ、同時に婚約者フィアンセとする。この者を見よ! お前など比べものにならぬほど美しいだろう!」

3乗でバカだったか・・・。もうあきれて声も出ません。

「このラスカーシャはな、お前など足元にも及ばぬ【上位互換】の【戦巫女いくさみこ】よ。この者さえれば、其方そなたはもうらぬ! この国を去るが良い!」

やっぱり何かムカついて来た。大体、【上位互換】って私に負けたじゃん。【戦巫女いくさみこ】としてはさ! 要は見た目なんですよね? 自分より背がちいちゃくてふくよかなが好みってだけでしょ! 屁理屈こねてさ、3乗キュービックバーカ!

「ペルクーリ殿下、わらわの【戦巫女いくさみこ】への任命の儀をお早く・・・。」

能面娘ラスカーシャがペルクーリ王太子をかす。このも何か軽蔑したような目で私を見て来る。なんで、こっちの方が負け犬みたいに見られるの? ちょっと地味にいて来た。

「・・・・・・の名に置いて、この者、ラスカーシャ・メーイッキを我が『ゴルジョケア国』の【戦巫女いくさみこ】に任じよ!」

神官の詠唱が終わると同時に私の視界の端に表示されていたステータスが変化した。

佐藤さとう りん 性別:女性 年齢:17歳 職業:【戦巫女いくさみこ所属:ゴルジョケア国】』
   ↓
佐藤さとう りん 性別:女性 年齢:17歳 職業:【戦巫女いくさみこ所属:なし】』

所属が「なし」になった途端、色々なステータスも下がっちゃった。あああ、無職になった実感がすごい。これからどうやって暮らして行けば良いんだろう・・・。

餞別せんべつだ。これを持ってどこへでも行くが良い。」

王太子は金貨が入った袋とフードの着いたマント、ブーツを投げて寄こした。護身用の短剣ダガーは城の出口でくれるそうだ。

(無職とは言え【戦巫女いくさみこ】を国の中で殺すと色々面倒だ。国境を越えた所で始末して、あとはその国に罪をなすり付けてしまえ! 何、周りの国は小国ばかり。我が国には刃向かえまい。)

ペルクーリ王太子が配下に命令しているのがかすかに聞こえてきた。それくらい聞こえないように出来ないのかな? 無神経にも程がある。それともわざと・・・?

(あ~あ、どうしてこうなっちゃったんだろう。これも全部、あの神様のせいだ!)

私はこの世界に転生する経緯いきさつを回想し始めた。
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