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一つの夜明けが

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太陽が上がって、息が澄んでくる。
ブレスを吐いて、と息が凍る。
冬の空に、酔いしれるように、足音を鳴らして、雪をかぶった新しい時を待つ、誕生から快感。
名前が欲しいと言った。君はガラ。
遠い星にある、光り、輝いていく七つの月。三つの太陽。
目が痛いと言って、目を伏せる、臥所に咲くフリージア。
一つ、二つ、数え上げる柔らかい記憶が、腕に抱かれた君の頬に、寄り添う、雨が降って、咲く花もあると、想う、僕は詩を描いて、見やる、上にある、君のおでこに、清らかな夢を見た。
一つ、二つ、数え上げると、見えてくる、心の隙間に、抜けていく、君の呑気な息が、はっと吐かれて、追憶の恋に、恋い慕う、想いは飛んでいく翼に乗って、あの鳥が、まだ青かった頃、僕と君は、一つの道で出会った。道に咲く花が、名もなき頃、揺れる、髪に差した、フリージア、ああ乙女、この殺伐とした時代に、求める、君のような羽が、君のような小さな羽根が、跳ねあがる車輪に火花の時雨、降り続ける、夜明。
夜明が遠い。
夜明が……
死の道で生きてると言った、カエルが、ガラ、がらんとして、何にもないなら励ます歌を。
道草を食って、恋しい食べ物、団子よりも夢が欲しいと言って、翼を欲したどこか陰りもあるその瞳と上の眉毛が、すっと差した窓から差し込む雪明りに月踊り、兎のように、団子を食って、戻る、君の笑顔が、がら、がらがら。
まるでくじ引きをひくように、手を伸ばして、くるっと回して、ガラガラとなる、中から出てきたカプセルは、思い出のフリージア。
キスの夢を見ている。
幼い君は、名前を追って、風を追いかけた。
青春なんて、ないんだよ。
何ていって、笑いかける、僕に、君は十代の穢れなき声で、笑い流す。僕の傷を洗い流すように。
旅がしたい。
君と
旅先であったことを、アルバムにしないで、瞬間のシャッターに消して、すべてを消して、あの青空さえも、つなぎ止めたい、まるでキスをして、散る花のように。
君はフリージアのようなおおらかさで、僕を愛してくれるか。
友の呼ぶ声に、目が覚めて、泣いている僕に、そっと笑い声で返してくれる。
大切なことが、忘れていくから、ガラ、君を想い出す。
あの星の中で、愛を語らうように、一つの夜明けが来る。
君はまだ眠る。
幼い子供の頃に。

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