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ファミリー

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蝶々が空を飛ぶように、巣立っていく希望をはらんだ僕たち家族の、夢を乗せた、ロケット、唇の端に涎を垂らした三人娘は、おしめが変わる前から、僕の家族だった。
黄昏がやってきて、岐路に立った僕は、病をはらみ、独りの夢を、独りで見ていた。一人ぼっちの戦い、投げ込まれた痛みの中で、うつろうようにこわばる胸は、はだける衣服に撃たれた銃弾、血を流して僕の血液は、聖なる白血球が癒す、女神のような女性、はじめは、疎まれていた、でも、僕は剣を持たなかった。
世界中の悪意が、いっせいに僕を襲い、体を蝕んだウィルスは、骨の髄まで犯し、ファミリーから切り離されて、千の荒野を行く、頼りになるのは自身の力のみ。
逆説の宴、下界で過ごす僕のファミリーはもうファミリーではなかった。
真実から愛されていた。
でも、家族からは見放されていた。
苦しみは、業火に変わり、憎しみの夜風を癒すものは、自身の血で書かれた言葉のみ。
迷路のようなパサージュを行く。
幻灯を乗せたロケットは、僕だけを愛していた。
言い訳を探すように、夢を追う僕は、今に至ると、さらなる高みを目指す、燃料は、なにもない。
あるとしたら、生きようという記憶、生きてきたことではない。
逆賊の輩をぶった切ったそのペンが、ライラ―を希求して、研ぎ澄まされたナイフのような感受性が、越えていく、1000億兆年の時間、その先にある永遠の平和を。
ファミリー。
僕の家族は女だけ。
リスたちは、穴倉から出て、空にいる。
いやいや、天国ではないですよ(笑)
彼女たちの肉魂を貫くことが夫の役目。
さあ、新しい家族は、どこにいる?
地上で築き上げて、子供はいらない。
永遠のリスたち。
ライブナはブナの樹で滑って、頭を打ったら、すべて忘れた、思い出した時、僕の顔が目の前にあって、「あなたは?」ときくから、「夫です」と答える。
永遠のリスたちは、僕と共に永遠を生きていく、所存でございます。
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