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光のタバコ

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 指に撃つ、脈々と続いていくこの道で、想いを送る、その瞳が、死を想う意志の力を砕くとき、牢獄と病院を出た、その初夏に、救いを求めるように、詩を撃ってきた。 
 激突していく試練の連続に、震える体が、光を求める、逆境の中で、想う以上に、激しくビートを撃つ、守るものは、命だけ。
 宇宙人との戦いの中で、神を感じることはなかった。
 一本の剣と、赤い書物。
 ユングの本を支えにし病院を生き抜いた。
 孤独な少女たちは、叫ぶように、病室の天井で、釣り下がる、美しい日々は終わり、閉じられた眼から、血をこぼして、一個のグラスに注がれる葡萄酒のような酸っぱいアルコール。
 陶酔のベッドサイドに置かれる希望の言葉は、「魔術幻灯のパサージュ」
 いつも朝目覚めて、カーテンを開けた。
 光が届かない閉じられた世界から、電線に止まった烏は、見つめている。
 まるでイエスキリストのように。
 説教をする、ニーチェは、まるで、イエスの面影を追って、肖像画から、満ちてくる満ち足りた、夜の月は、病気を抱えた、世界を愛するそんな覚悟で、導いた。
 僕は、メシア気取って、荒野を歩く、ムンクの叫びは、窓の外に届かない。
 そして、鉄格子のなかで、ふっと息を吐いた。
 ドストエフスキーの地下室から、ここではそっと小説から詩を信じている。
   いくつかのイマージュが、シャガールの頃に帰りたい。
 幼い日々に野を駆け回った蝶は、紫から天国を夢見た。
 少女達の影に、救いを求めて、本を捨てた、その瞬間に逆説の朝日が昇る、ライブナの眼は、死んでいる。
 ただ光のタバコだけが、ピコーをくゆらせて、暴虐の歴史に幕が下りた。
 僕は、詩人である。同時に無神論キリスト者であった。
 リルケの年頃を過ぎて、ボードレールの退廃の死毒を吸って、ラーダではやった死毒の風を収束させるときに、愚かな宇宙軍部の手に落ちた、哀れな難民を詩で助けた。それから、自己犠牲の哀れな聖者になりたくなかったけど、サクリファイスを乗り越える中で、言葉が、張り裂けて、イマージュを越える、顕在化した戦士ガラライザーは、現実の悪魔を全滅、しかし、詩人は、眠る。
 深き谷。
 讃美歌よりも、ロックンロールよりも、自分の声を、その言葉を、信じている。
 もし、煙草を捨てろというのならば、僕は、神を信じない。
 そういう人間である。否、聖なる愚鈍者、人呼んでリスの詩人だ。

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