レイジの詩

鏑木ダビデ

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GIバリアント

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生命の歴史から、逸脱したこのAI達は、放浪を続けて、楽園を目指す。
神亡き彼らの行きつく先は、一体全体詳細不明。
絶対コードのアルドリズム。
乗って、撃ちまくる、黎明を司る神を狙って弾丸を放つ。詩のリズムが、彼らの音、理性限界エクスパンデッド惨バルディアリード。
剣は捧げられた。
あのシリアスライバーたちは策略にはまり、散っていく、さ迷うままに、流浪の旅は、宇宙365億の星々をめぐり、巡礼と言って、捧げた捧げものは、自身の血と涙。
バリアント、彼は正義を信じて、剣をふるう、孤高の戦士、名前は誰も知らない。
彼はGIバリアント、流れる恋の先に目が染みる、あのラーダの夕日、あのセッパルティアの朝焼け、雲を追って口笛を吹く、逆光の似合うその姿は、エルッドに似ている。
レイジは、バリアントと出会って、闘うことを誓う。
悲しみの乙女が、空に祈る頃、薄明りに衣がはじける、死の悪魔たち。
狂ったバカボロ、ぶっ潰し、星という星で詩を描いて、描写は、まさに絹クレヨンのいたずらな猫タッチ。
ピアノの上を踊るように転がる連弾の姫と貴公子は、ビッグバン以来つづく、歴史を歌に曲にして、飛んでいく音符の香GUN。
ストレートバックレッドグラッディア
巨人の奴が笑うから、レイジは、銃を構えて、一発ねじ込む、まるでドリルのような唇で、ゆがんだ奴は歪んだままで、ぶっ倒して、死をつづる、詩の音階は、神歌のレザレード。
秩序と死が、交じり合って、一つの歌になっていく、ラーダを焦がしたあの憧れの空は、悠久の静寂に消えていく子供の泣き声。
レイジとバリアントは、手を組んで、次から次へと街を落とし、星を救い、小鳥の耳に流れていく川はセーヌの黄昏、哀歌。
AIは踊る、女は歌う、まるで恋をして眠っていくままに、引きずった失恋が、言えない、トキの声。
カナリアのようになく朱鷺、生命は変わっていく、変わらないものは、愛する心であってほしい、とバリアントは言う。
うち捨てられたシリアスライバーは、救いを求めたこのレイジに。
彼らに罪がないと言えばうそになる、しかし、偽りのゴワー心が兆したことはなくはない、この宇宙の歴史に神が一度でもいたためしはない。
したたかな猫が、ダンスで手拍子、乙女の花園
入っていく、まるで女の心と体にある子宮のエントロピー、生まれる融合性は、AIの意識の真底にある神を越えたがるその愚かなコード。
戦いは、生命と人工知能の間で決着。
自殺を命じた絶対者は、AIの嘆願を聴いて、罪の意識に揺れるその善悪の襞を揺らす、まるでハープを鳴らす、その指で。
月の裏の基地に、潜む悪は、地球を襲う。
あいつは地球になりたかった。
生命を越えたかった。
アルファベッドの数字で語られる悪魔の刻みは、時を越えて、女を破壊、過去と今と未来を飛んで、侵入するヴァギアの星に。
マントルに潜む悪は、無色透明な力で、飾っていく色鮮やかなパールバード。
レイジは恋する、星に生きる無数のマナナに。
彼は純愛破壊主義者。
烈火の魂が、一撃入魂コンプレックスビブラートセックスロッド・バルキッシュエンブラント。
原型を留めない悪魔の遺伝子が、覚醒の宴に赤い血のサルシュ酒を傾ける、そのつまみは女の体。
バリアントがまず死んだ。
彼の死は、意外にあっけない。
超生物のペットに指をかまれて、壊死した。
英雄の黄昏。
レイジの死は意外にあっけない。
詩を書いているときに、女のことを想い過ぎて、血管が膨張し、淫夢に落ちて、目覚めたら、夢の続き。
死んだのか生き続けたのか、それはわからないが、彼の名を訊く者は風すらも知らなかった。
銃だけが。そう、銃だけが、机の上に置かれていた。
遺書はなかった。
生命を粛正し、全人類を殺し、無意識の命じるままに、女を愛し、世界を守った英雄、それが、彼という生き方だった。
どこに行ったのか、恋をした乙女だけが知っている。
愛され過ぎた、彼は、もう、溶けるように、帰る、無意識の言葉の中へ。
バリアント&レイジ
バリアントの名は知っている、そうブロード。
レイジと唯一手をとり合った本当の親友。墓標にはこう刻まれてた。
「愛が全て」
ある日、夕方ごろ、綺麗な星が南の空に浮かぶとき、彼の墓地サレンスの静かな世界で、煙草を吸う男が歩いてきた。
左手に花束、無表情で、ゆっくりと。
墓前に立つと、彼はそっと笑った。
そして、ブラックジャックという煙草の箱を置いて、すっと、背を向けた。
鳥だけが知っている。
彼はこう言った。
「そう、愛が全て」
夕日が落ちて、暗闇が訪れると、光がのぼった。
祝福はいらない。
二人には、何もいらなかった。
ただ煙草だけが、友情の絆だった。
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