上 下
9 / 15

鈴虫

しおりを挟む
鐘が鳴る、学校からの帰り道、独りの空に夕暮れの気配、石を蹴って、想いが走る。
夢のような世界が、開いてくる、目の前には川があった。
キラキラと光る水面の、視線が踊る、悲しみのワルツ。
白鳥のように、羽を広げた、おれた今が、戻らない感覚に滲む、瞳が、こぼれる、涙の結晶。
緑を抜けて、花のアーチは、私の頭上を飾る、痛みのアート。塗り込めるように、今という絶望を、乗り越えていく、鈴虫が鳴いた。
季節の移ろいに、虚ろな心が、叫んでいた、唱和する羽音。
全部の夢が、潰えた放課後の街は、差し込む夕日に、秋の風。
神経が高ぶって、コカ・コーラを飲んで、げっぷのギャップが、音と響き合う。
ふしだらな空想をして、鈴のようなほほで、愛を語るあの子を信じていた、帰り道の歌が、イカロスのように飛翔する、まだまだと呟いて、こらえる孤独の絶唱。
歌が、いつも聴こえていた。
ささやかな日々に、添えるように、花は、まるで、ヴォイシック・ロード。
この道を越えて、未来へ届く、恋ではなく夢が、必要だった。
太陽に行きたいと、願ったまま、服を脱いで、川に飛び込んだ、近づけない幻が、近くにある、独りきりの手の冷たさに、凍える体が、笑っていた。
あれは少年。
夢に生きる、夢に恋をした、いつかの少年が、打ち続ける弾丸ビート
裸のままで、象徴的な無限ハートを掲げるリズム&ブレイク
言葉の終末に、遊びたい。
言葉の終末は、青春の終わり。

しおりを挟む

処理中です...