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チェーン

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首輪をはめた猫。
自由に生きるつもりでも、何かが足りない。
肉球があって、着地したときに、弾ける、肉の音。
超高層マンションから落下。
大きく鳴きながら、飼い主の気持ちを追う。
首輪には、刻まれた名前、飼い主がいて、自由に生きることを許されているけど、自由に生きることは、できない。
チェーンにまとわりつく飾り物は、造花の白い薔薇。
叩きつけられて、白が赤に変わる。
血が流れている。
種族を違えど、同じ、心が通い合う、だからこそ、安全に生きなければ、規定を守らないと、足を滑らせてしまう。
一つ、それは、チェーンを離さないで、鳴くこと、実行するには、厭うこともあれば注意深く周りを確認して、足元を見て、暗闇の中で、生きること、できるには、服従ではなく自由にその足の運びのままに、流れて、風に、流されて、運命に、でも、足に力を入れて、歩く一歩一歩、歩むことは、しなやかな前足、後ろ脚、肉球に感触、地面を確かめて歩く喜び。
忘れてはいけないこと。
鎖は、束縛ではあるが、自由の証でもある。
走って転んで、落下しないためには、にゃあッと鳴く、喜びに、感謝して、飼い主の気持ちをチェーンインパクト。
自制するのは、首輪を意識して、鎖につながれたままでも、息ができるなら、大好きなあるじにキスをしてもらうことが、時制である。そう思って生きていけば、あるじは首輪を外し、つけることはない。でもそれは不可能。
なぜなら、猫は自由、愛するのは地を蹴る時の快感、肉球の弾力に毛が逆立ち、興奮する瞬間。
足を滑らせて、落ちる時に、思い浮かべるのは、風を切っていくその快感と、あるじではなく鎖が外れる喜び、何でも、放縦な快楽は、勢いをつけるが、勝ってしまえば、あるじが悲しみ、そんなことはどうでもよくて、激突する瞬間に目が覚める。
愛されていた記憶が、首輪に刻まれた名前。
「ストレングス」。
忍耐とは、首輪を愛することである。
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