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ハイライトロックンロール

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タバコを蒸した指先が、ギターを弾く弦に踊る。
ダンス、アンドロックンロール。
俺は、君を見ている。
フラワーは、フロアーで揺れる高ぶれ、爆発轟音。
地雷のように、君の声。
探査はできない天使の、惑星ラバード・バラード
ゆっくりとゆく。
バラけた音が、一つになって、化ければ、音楽は、胸に秘めた想いをぶちまける、幼き日のあがき。
父と母、夢を重ねて、手を重ねて、信じた分だけ、孤独が増える。
それでも、思春期になって、君は歌を歌う、路上の天使。
立ち止まるものはいなかったけれど、楽しかった。
夕暮れに空に向かって叫ぶ、君の横顔は、張り裂けそうな胸のジプシーロックンロール。
でも、その声は、ヤンチャな関西弁。
「歌詞はできた?」
と俺が聞けば、君ははにかんで、「できそうかも」その前にキスをしてと言って、ギターをケースにしまい、群衆に逆らい、二人で歩くシド・ビシャス気取り、君はまるでジャニス。
さあ、踊ろう。
気分をリラックス、電車に乗って、吉本に行って、笑った後で、ラーメンを啜り、二人で、ボロアパートに帰れば、玄関で一気に抱き合う。
喘ぐ君と貪る俺は、青春なんていう言葉では括れない、現実はもっと美しい。
不意に、キスすることをやめて、窓を開けた。
「なんでやねん」
「なんでもねえよ」
タバコを吸いたくなっただけ。
君の顔に吹きかけてやる。
「やめろや、ほんまに」
笑って、笑って、笑って、また笑って、君が泣いた。
「なんで泣くんや」
「なんでもないわ」
俺が触れると君の体はぐっと強張り、もっと、触れるとスッと力が抜けて、横に置かれたアコギを取れば、かき鳴らす。
「イエスタデイ」
俺と君は昨日に生きてはいない。
ポールの声は、君のレスポールに宿って、きっと未来はロックンロールスター。
そう励ますと君は、
「私はジョン・レノンになりたいんよ」
可愛いなお前、俺は君を抱きしめて、離さねえ。なんて言うと、俺たちは、そう夢の中。
落ちて、愛して、朝が来たら、ギターと君を抱きしめて、目覚めてしまえば、世界はきっと鳴っている。
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