2 / 8
デイビットとレイド王子様とユキの恋
しおりを挟むそんな俺達家族の暮らしは、リーネと俺が出逢ってから十三年が過ぎていた。リーネは二十六(実年齢はたぶん二十五)となり、トーイとイワンもだいたい十四くらい(実年齢はたぶん十三くらい)、カーシャは十(実年齢はたぶん九)になっていた。
そうだ。トーイとイワンももうすぐ<大人>の仲間入りができる年齢なんだよ。
一方でリーネはすっかり<いかず後家>状態だ。でも、それでいい。しかも、イワンはますますリーネのことを真剣に好きになっているようだし。
「僕がリーネを幸せにする!」
堂々とそんなことまで口にするようになって。それに対して彼女は、
「ありがとう。嬉しいよ、イワン」
笑顔で応えてたりもする。
基本的に優男なイワンに比べるとトーイは、鉄を打つ姿もすっかり様になって、体も年齢の割にはがっちりしてきて、<一人前の男>の風格が出てきたな。さらにはトーイが作る品物の質も決して悪くない。まだまだひよっことはいえ、もう立派に<職人>の末席には加われたと思う。
で、カーシャはと言うと、
「リーネ! お鍋が吹きこぼれちゃう!」
竈にかけていた鍋が出す音を聞きつけて、教えてくれた。
「ありがとう! カーシャ!」
礼を口にしながらリーネは鍋を火力の低い方へと移した。
そんな感じで、相変わらず楽しくやってる。そこに、
「あ、マリヤおしっこした」
カーシャが今度は臭いを嗅ぎつけて報せてくれる。
「おお、おお」
俺は慌てて隣の部屋で寝ていたマリヤのところに駆けつける。
マリヤは今年生まれたばかりの赤ん坊だ。麓の村でな。そう。また子供を引き取ってきたんだ。
『男じゃなきゃ要らない』
と言う夫婦の下からな。そこにはもう女の子がいたから、あとは畑仕事に使える男しか要らなかったんだよ。で、
「赤ん坊、要らないかい?」
ってそこの母親が訊いてきたもんだから俺は、
「要らないんなら、貰う」
と、二つ返事で。カーシャも大きくなったし、正直、また子供を育てたくなってたってのもあってな。
ああ、いいよ。子供はいい。こっちのすることがダイレクトに反応として返ってくる。接し方をしくじれば機嫌を損ねるし、逆にハマればすごく喜んでくれる。その上、アントニオ・アークが育てたら、トーイもイワンもカーシャも、ゆかりとはまったく違った子に育ってくれた。特にカーシャは、俺のことが大好きな朗らかな子なんだ。そして彼女がどうしてそんな子に育ってくれたのか、今の俺にはその理由が分かる。
何しろ、彼女には委縮しなきゃならねえ理由がねえんだ。見ず知らずの相手に対しては警戒しても、家族の前では明るくいられてるんだよ。
そうだ。トーイとイワンももうすぐ<大人>の仲間入りができる年齢なんだよ。
一方でリーネはすっかり<いかず後家>状態だ。でも、それでいい。しかも、イワンはますますリーネのことを真剣に好きになっているようだし。
「僕がリーネを幸せにする!」
堂々とそんなことまで口にするようになって。それに対して彼女は、
「ありがとう。嬉しいよ、イワン」
笑顔で応えてたりもする。
基本的に優男なイワンに比べるとトーイは、鉄を打つ姿もすっかり様になって、体も年齢の割にはがっちりしてきて、<一人前の男>の風格が出てきたな。さらにはトーイが作る品物の質も決して悪くない。まだまだひよっことはいえ、もう立派に<職人>の末席には加われたと思う。
で、カーシャはと言うと、
「リーネ! お鍋が吹きこぼれちゃう!」
竈にかけていた鍋が出す音を聞きつけて、教えてくれた。
「ありがとう! カーシャ!」
礼を口にしながらリーネは鍋を火力の低い方へと移した。
そんな感じで、相変わらず楽しくやってる。そこに、
「あ、マリヤおしっこした」
カーシャが今度は臭いを嗅ぎつけて報せてくれる。
「おお、おお」
俺は慌てて隣の部屋で寝ていたマリヤのところに駆けつける。
マリヤは今年生まれたばかりの赤ん坊だ。麓の村でな。そう。また子供を引き取ってきたんだ。
『男じゃなきゃ要らない』
と言う夫婦の下からな。そこにはもう女の子がいたから、あとは畑仕事に使える男しか要らなかったんだよ。で、
「赤ん坊、要らないかい?」
ってそこの母親が訊いてきたもんだから俺は、
「要らないんなら、貰う」
と、二つ返事で。カーシャも大きくなったし、正直、また子供を育てたくなってたってのもあってな。
ああ、いいよ。子供はいい。こっちのすることがダイレクトに反応として返ってくる。接し方をしくじれば機嫌を損ねるし、逆にハマればすごく喜んでくれる。その上、アントニオ・アークが育てたら、トーイもイワンもカーシャも、ゆかりとはまったく違った子に育ってくれた。特にカーシャは、俺のことが大好きな朗らかな子なんだ。そして彼女がどうしてそんな子に育ってくれたのか、今の俺にはその理由が分かる。
何しろ、彼女には委縮しなきゃならねえ理由がねえんだ。見ず知らずの相手に対しては警戒しても、家族の前では明るくいられてるんだよ。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──


攻略対象の王子様は放置されました
白生荼汰
恋愛
……前回と違う。
お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。
今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。
小説家になろうにも投稿してます。

ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

【完結80万pt感謝】不貞をしても婚約破棄されたくない美男子たちはどうするべきなのか?
宇水涼麻
恋愛
高位貴族令息である三人の美男子たちは学園内で一人の男爵令嬢に侍っている。
そんな彼らが卒業式の前日に家に戻ると父親から衝撃的な話をされた。
婚約者から婚約を破棄され、第一後継者から降ろされるというのだ。
彼らは慌てて学園へ戻り、学生寮の食堂内で各々の婚約者を探す。
婚約者を前に彼らはどうするのだろうか?
短編になる予定です。
たくさんのご感想をいただきましてありがとうございます!
【ネタバレ】マークをつけ忘れているものがあります。
ご感想をお読みになる時にはお気をつけください。すみません。
借金完済のために惚れ薬を第二王子にかけました。そろそろ効果が切れるはずなのですが溺愛が止まりません
石田空
恋愛
王立学園に通うぽやぽや下級貴族のイルザは、ある日実家が借金で破産寸前、破産回避のために年齢差四倍の富豪に身売り同然で後妻に入らないといけない危機に直面する。
「年齢差四倍はない。そうだ、惚れ薬を適当にお金持ちな人にかけて借金肩代わりしてもらおう」
唯一の特技の魔法薬調合で惚れ薬をつくったイルザは、早速金持ちを見繕おうとしたら、それをうっかりとクールなことで有名な第二王子のクリストハルトにかけてしまった。
「私なんかが第二王子のお嫁さんなんて無理ぃー!!」
「そんなこと言わないでおくれ、私のバラ、私の小鳥」
「あなた普段のクールをどこで落としてきたんですかぁー!?」
惚れ薬の効力が切れるまでなんとか逃げ切ろうとするイルザと、クールキャラがすっかりとぶっ壊れてしまったクリストハルトが、必死で追いかけっこをする。
*カクヨム、サイトにて先行公開しております。

ごめんなさい、お姉様の旦那様と結婚します
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
しがない伯爵令嬢のエーファには、三つ歳の離れた姉がいる。姉のブリュンヒルデは、女神と比喩される程美しく完璧な女性だった。端麗な顔立ちに陶器の様に白い肌。ミルクティー色のふわふわな長い髪。立ち居振る舞い、勉学、ダンスから演奏と全てが完璧で、非の打ち所がない。正に淑女の鑑と呼ぶに相応しく誰もが憧れ一目置くそんな人だ。
一方で妹のエーファは、一言で言えば普通。容姿も頭も、芸術的センスもなく秀でたものはない。無論両親は、エーファが物心ついた時から姉を溺愛しエーファには全く関心はなかった。周囲も姉とエーファを比較しては笑いの種にしていた。
そんな姉は公爵令息であるマンフレットと結婚をした。彼もまた姉と同様眉目秀麗、文武両道と完璧な人物だった。また周囲からは冷笑の貴公子などとも呼ばれているが、令嬢等からはかなり人気がある。かく言うエーファも彼が初恋の人だった。ただ姉と婚約し結婚した事で彼への想いは断念をした。だが、姉が結婚して二年後。姉が事故に遭い急死をした。社交界ではおしどり夫婦、愛妻家として有名だった夫のマンフレットは憔悴しているらしくーーその僅か半年後、何故か妹のエーファが後妻としてマンフレットに嫁ぐ事が決まってしまう。そして迎えた初夜、彼からは「私は君を愛さない」と冷たく突き放され、彼が家督を継ぐ一年後に離縁すると告げられた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる