愛の大精霊の里

荒井 恵美

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大樹の中には大精霊

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この大樹の下には、大きな空洞があってね、澄んだ泉がわき出ているの。そこには大精霊様が住んでおられる。女性の大精霊様がご懐妊されたら、お腹を揺らしながら泉の中を動かれる。その時に、ちゃぷん、ちゃぷん、と水の音がきこえてくる。
赤ん坊がうまれたら、男の大精霊様はご自身で銀のナイフを使って心臓を取り出し、女性の大精霊様に差し出す。
女性の大精霊様は、子供を無事にそだてるために心臓を食べるの。
男性の大精霊様は、愛する女性と子供のために命をおとす尊い儀式なの。

この儀式を邪魔しているのは、我々人間。女性の大精霊様が強くならないように、男性の心臓を食べさせない。
そして、男性の大精霊様をとらえて、赤ん坊を奪う。子供は人間が奪って、人間が育て上げて国を守る道具にする。
奪った赤ん坊を強くするために、とらえた男性の大精霊様の心臓を儀式と称して食べさせるの。

おぞましきは、我々人間よ。そなたたち、この事は忘れてはならぬ。
しかし、我らは神子、国のためにお仕えしなければならない。

ほら、泉の音がきこえてきたじゃろう?ちゃぷん、ちゃぷん、ご懐妊の証。

国王陛下にご報告せねばならぬ。神子様は孫娘たちの頭をらなでながら、話してきかせていた。
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