悪公爵令嬢は憎い伯爵令嬢を虫にかえる

荒井 恵美

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虫を愛する者なんていない

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やったわ。マーガレットを虫にかえてやったわ。ラリデーヌの心は晴れやかだった。クリスタルケースに入った蝶々、これがマーガレット。そう思うと嬉しくて、ダンスを踊りたくなるほどだった。
闇の魔法使いの言葉を、思い返していた。「ラリデーヌお嬢様、魔法が解けてしまう方法があるから、お気をつけて。マーガレットが、虫でいる間は皆の記憶からマーガレットが消える。しかし、まことの恋ごころをいだいている男性から虫に向かって「マーガレット、愛してる」と声をかけられるようなことがあれば、虫から元の姿に戻ってしまうからね」

虫に向かって、愛してるだなんて言う男性が、いるはずもないわと考えて、肩をすくめた。

ご機嫌で町を歩いていると、バタバタと走りよって来る者がいる。「お探ししましたよ。お嬢様、このブラッキーを連れずお一人で外出なさるなんて、危険ではございませんか!その髪の毛はどうされたのですか?」
ブラッキーは腰の剣に手をかけた。「何でもないわ、ブラッキー。髪屋で髪の毛を売って、この蝶々をてにいれたの」
「このブラッキーに一言おっしゃってくだされば、虫を買いに行きましたのに。お嬢様の髪の毛を売るなんてことをされなくても」
ブラッキーは力なく答えた。「どうしても自分でてに入れたかったのよ、髪の毛ならお母様のカツラコレクションから、どれかお借りするわ」
ラリデーヌはご機嫌で答えた。

お屋敷に戻ってきたラリデーヌの姿を見て、両親ともに闇の魔法使いの所へ行ったと、すぐに気がついた。あの魔法使いは髪の毛を、ほしがる。そして、独特の薬品の匂いをまとわせていたからだ。父親は「次回からは一緒に行くから、声をかけるように」
と、一言言われただけだった。母親は「さすが、私の娘ね、カツラは好きな物をお使いなさいね」
と言った。叱られなかったことに、拍子抜けしたが、ラリデーヌはいそいで自分の部屋に向かった。蝶々をじっくり見たかったのだ。部屋につくなり、クリスタルケースを取り出して、テーブルに置いた。
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