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公爵令嬢の趣味

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公爵家のラリデーヌは、従者もつれず1人でこっそり町外れの薬屋へ来ていた。

今頃、お屋敷では、お嬢様がいないと騒ぎになっているだろう。

特にお付きのブラッキーは、青ざめているだろう。常にお嬢様のそばで護衛をするのが彼の仕事だった。

ラリデーヌは、ブラッキーに鞭をもたせてた。ラリデーヌに無礼をはたらいた者は鞭でぶだれるのだ。ラリデーヌは、鞭でぶたれるのを見るのが好きだった。本来ならば、自分で鞭をうちたいくらいなのだが、さすがに公爵家のお嬢様がすることではないので、ブラッキーにやらせている。ブラッキーも心得ており、お嬢様が喜ぶように無表情で鞭をふるった。
ブラッキーには、ラリデーヌお嬢様が全てなのだ。


ラリデーヌに無礼をはたらいた者がいた。男爵家のショベルラだった。ラリデーヌにぶつかり、足まで踏んだのだ。許しがたい。ラリデーヌはブラッキーに、顎で合図した。ショベルラは鞭でうたれることとなった。ブラッキーは冷たく言いはなった。
「ショベルラお嬢様、両手を前にお出しください。両手に鞭がおちることになります」
ショベルラは、恐ろしくガタガタ震えている両手を、前に出すことも出来ないでいる。
「ラリデーヌ様、どうかお許しください」
ショベルラは声を絞り出した。

ラリデーヌは、この姿を見るのがたまらなく好きだった。おびえて、許しをこうている。
あわれな姿をみているとラリデーヌの口角があがった。ラリデーヌは、ゆっくり話始めた。
「ショベルラお嬢様、両手をおだしにならないと、背中を何度もうつことになりますわよ。手がすべって、強めに鞭がくることも
ありましてよ」
ラリデーヌは、クスリと笑った。

「そんなことは、おやめになって、ラリデーヌ様。仮にもショベルラは男爵家のお嬢様ですのよ。」
突然後ろから声がした。訝しげに振り返ると、伯爵家のマーガレットお嬢様だった。伯爵家と格下だかマーガレットはラリデーヌと比べると、あまりにも差がありすぎた。容姿、頭脳、振る舞い、何をとってもラリデーヌは、マーガレットに負けていた。しかも、最愛の兄のバルクが想いを寄せているにもかかわらず、伯爵家のペルタにダンスパーティーでエスコートされていた。ラリデーヌは、公爵家の力を使い婚約の申し出をマーガレットにするようにと進言したが、兄は優しい男で、無理強いはしたくないと片思いを決めていた。そんなこともあり、ラリデーヌはマーガレットを憎んでいた。

「うつのなら、私がかわりになるわ」
と、マーガレットは、真っ白な両手をさしだした。あぁ、マーガレットを鞭うてたなら、どんなに快感だろうか!と、思いながらマーガレットの両手を見つめていた。ブラッキーが声をかけた。
「ラリデーヌお嬢様」
そして、首を横にふった。

そうだ、さすがに罪のない伯爵令嬢を鞭でうてない。ラリデーヌははらわたが、にえくりかえった。

「もう、結構よ」
ラリデーヌは、言い捨てきびすを返した。周りからは、さすがマーガレットお嬢様!などの称賛の声が耳に届く。

兄のことを無視して、私のことも侮辱した。

許さない、許さない、許さないわマーガレット。
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