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第5話 冒険者ギルド
しおりを挟むーーギギギ。
そんな音を立てながら冒険者ギルドの扉は開けた。開けるなり俺は中に入った。
とりあえず、周りを見渡すことにした。
んー。凄く広くて、二階建てなのか。それに、おっさんやら俺と同い年くらいの人たちが食堂的なところでたむろっているのか。
俺の心の中ではそんな感想が生まれてしまっていた。
それと入った時に注目されるのではと思ったのだが、そんな思いは吹っ飛んでしまっていた。注目といっても少し見るくらいだ。その後は、飲んだり食べたり話したりしている。
とりあえず、道があるところを進んで行くか。
しばらく歩くこと、カウンターのようなところに着いた。食堂では相変わらずはしゃいでおりうるさい。
そこで、カウンターにいた一人の少女と目が合った。
「どうかされましたか?」
瞬間、俺の心はその少女に持っていかれてしまっていた。
少女の服装は、メイドがよく着ているメイド服よりも色気的なものがなくなった感じのものだった。下半身の方は、スカートのような感じになっている。
肌や髪の色、瞳の色は俺とは違う色で、肌は俺よりも白く、髪の色は薄い寄りの透き通っている水色で、瞳の色も髪と同じで透き通っている薄い寄りの水色だ。
よく見てみると、耳の形が普通の人間とは違い、横に尖っているような形になっていた。
考えてみたら、ファンタジー系のラノベとかに出てくるエルフだよな。
そう思いつつ、17年の人生の中でまさかエルフを見れることになるとは思ってもおらず、俺はエルフの少女に見惚れてしまっていた。
「えっと‥‥‥大丈夫ですか? もしかして何かついてましたか!?」
俺が見惚れていたせいか、少女は自分の髪や顔に何かついているのではと言い出して、焦って整え始めた。
「いえ、何もついてないですよ。ただ、エルフの方を見たのが初めてだったので見惚れてしまったんです」
やはり人間誰しも初めてみるひとやモノ、珍しいなどといったのには見惚れてしまうのだと、改めて実感してしまった。それと、一目惚れまではいかないが、可愛いと思う。ガチで!
たぶんだと思うけど、俺のクラスのクソ野郎は絶対に一回見ただけで一目惚れをして自分のモノにしようと考えるだろうな。もしくは、一線を超えるかもしれないが、そこまでした時には人間失格にもなるし、人としてどうかと思う。
そこで、俺の発言に対してエルフの少女の表情が少し変化した。
「はぁ~。またですか。あのですね、見惚れたって言っても私は、落とせないですよ?」
はい? 落とせない? どういうことだ?
突然少女が席から立ちそんなことを口にしてきたせいで、俺の脳内はフリーズしてしまう。
というか、全く意味がわからない。
そんな状況なので、俺の脳内には「?」さんたちや「??」さんたちで埋め尽くされていた。
そして沈黙の状態になり、そのまま時間だけが過ぎていく。
「えっと、もしかして、私を好きになったから、落とそうと考えたんじゃなかったんですか?」
「え? あ、はい。ただ、可愛くもあるし綺麗でもあったから、普通に見惚れてしまっただけですけど」
きょとんとした顔で少女が聞いてきたので、俺は反射するようにして言ってしまっていた。
俺が口にしたことを聞いた少女は顔を真っ赤にさせて凄い速さで椅子に座った。ついでに顔を隠して、恥ずかしさを隠しているようだが、耳まで赤くなっているので恥ずかしいのがバレバレである。
というか、なんという勘違いをしているんだろうか。
俺はエルフの少女に対してそう思ってしまった。
それからしばらくの沈黙が続いてしまった。その間俺は、立ちっぱなしだったが、途中で「座ってください」とエルフの少女に言われたので、椅子に座った。
「はうぅ~~。本当に恥ずかしがったですよぉ~~」
いまだに顔を隠しているエルフの少女が今までとは違う口調で、本当に恥ずかしそうに言ってきた。
その瞬間、俺の背中に多くの視線や殺意的な何かの視線などを感じてしまう。
耳を澄ましてみると、俺に対して視線をやっている背中の後ろのギャラリー達の声が聞こえてきた。
「おいおい。あのヘンなヤツ、シルフィーちゃんと楽しそうに話してやがるな」
「まじだな。チッ! 俺のシルフィーちゃんと話しやがって!!」
「はぁぁーー? 何言ってんだよ。俺のなのに、何言ってんだぁ??」
「お前ら、見苦しすぎるぞ。そんなお前らに、シルフィーなど似合わん、俺みたいな美しくカッコいい奴こそが一番似合うんだよ」
「クソナルシストにも、似合わんよー」
そんな賑やかそうに喋っている声が聞こえてくる。
それとエルフの少女のこと、シルフィーが何故俺にあんな事を言ってきたのかも納得出来た。どうせ、あの騒がしいギャラリー達のせいだろう。
「ふぅぅ~~。よしっ!」
目の前にいるシルフィーが顔を上げた。
耳は先程よりも薄く赤くなっている。だが、未だにさっきの恥ずかしさが抜けていないようだ。
「先程はすみませんでした。へんなことを言ってしまって」
「いえいえ、大丈夫ですよ。大変さがなんとなく分かったので」
シルフィーの謝罪に対して、俺は苦笑いをしながら全く気にしていないことを伝えてきた。
「周りが言ってるから、私が変な事言った事も分かりましたよね。改めて私の名前は、シルフィー・ハーネル。ウルクスの冒険者ギルドにて、受付嬢をしています」
エルフの少女、シルフィーは、改めて自己紹介をしてくれた。そしてお辞儀をする。
俺もシルフィーのそれにしたがいーー
「俺の名前は、霧雨灯流です」
ーー自己紹介をし、お辞儀をした。
「‥‥‥ヒリュウさんですね。やっぱり、気になったりしますかね? さっきの話についてとか」
「まあ、気にならないと言えば嘘になりますけど‥‥‥一応聞いてもいいですか?」
人間誰しも気になることくらい幾つもある。例えを出すが、誰かが、自分には好きな人がいるんだ、そんなことを言ってきたら気になる。
だから俺は、シルフィーが何故さっきあんなことを言ってきたのかが知りたくてしょうがない。まあ、大体のことは予想出来るが、外れているって可能性もある。なので俺的には、聞いておきたいのだ。
今、シルフィーの表情は、ですよねーっといったところだろう。
「やっぱりそうですよね。じゃあ、話しますねーー」
そこからはなんというか長かったので、短るまとめるとこうだ。
シルフィーはこの冒険者ギルドで働き始めてから、冒険者の人(男)から毎日注目をされている。理由は、可愛いからや好きになったから、自分のモノにしたいからどとか。
ただ、言い寄られる度に素直に断っていた。なのだが、冒険者の男に限っては、何度も何度も言い寄っていたとか。他にも、シルフィーが泊まっている宿に泊まる奴も現れた。そのおかげでシルフィーはギルドの職員部屋で寝泊りをするようになったのだとか。
そこまで話したシルフィーは、ドッと疲れたような表情をした。
「はぁ~~~。私の話を真面目に聞いてくれる人は、ヒリュウさんが初めてですよぉ~~」
「シルフィーさん本当に大変そうですね」
「そうなんですよぉ~」
だがすぐに嬉しそうな表情に変化した。
疲れたような表情もだが、この表情も可愛い。
俺はなぜかそんな事を思ってしまっていた。
「‥‥‥そういえばヒリュウさん。私も忘れるとこだったんですけど、用事があったからここに来たんですよね?」
そんな事を言われ、俺はハッ!っとなる。
そういえば、シルフィーの大変な話を聞いてて、完璧に忘れてしまってた。
「そうでした!! 今日は冒険者登録をしに来たんでした!」
そう口にしながら、シルフィーの表情が、完璧に忘れてましたよね?みたいな感じになっていた。
そうです。完璧に忘れてました。
そう思っても、言えない。だって恥ずかしさが出てくるのだから。
「ですよね。では、冒険者登録をする前に、二つの入試試験をさせていただきます」
「は、はい」
口調はそのままなのだが、雰囲気が受付嬢らしくなった気がする。たぶん。
「では早速、一つ目の入試試験の話に移りますね。一つ目の入試試験の内容は、スライムのドロップ品である、《スライムジェル》を五つここに持ってくる事です。今回の入試試験は、私が受け付けますので、回収してきた《スライムジェル》は私のところに持ってきてくださいね」
それからシルフィーには、スライムが生息する場所を教えてもらい、《スライムジェル》を入れる素材袋を貰った。
それと、俺の格好が動きにくい服装だったので、シルフィーから男用の動きやすい服を借りて、武器も借りた。
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