上 下
13 / 28

過ぎたるは及ばざるが如し7

しおりを挟む
 半ば気絶のように眠りに落ち、夢も見ずに目覚めて、後ろから覆われた他人の体温に現実感を失った。あれ、昨夜の、夢じゃないのか! 冴子はがっつりと抱きしめられたままの腕の重さに、驚愕で覚醒した。

 亮のスエットの上だけ着て、下は何も身につけていない。

「んん、……まだ、寝てようよ……」

 密着したままの後頭部の少し上から掠れた声がする。

「でも、トイレ行きたい」

 ぱ、と腕から解放される。

「また変態って言われたら嫌だから」

 冴子が起き上がると、仰向けに体勢を変えた亮が拗ねた声で言う。振り向いて見下ろすと、いたずらっぽい笑みを唇に浮かべて冴子を見ている。冴子も微笑み返してトイレへ向かう。久しぶりに開かれた内側に違和感が残っている。トイレットペーパーには濃い粘液がべったりとついていた。

 手を洗うついでに歯磨きをしていたら、黒いロンTとヴィンテージデニムを身につけた亮も台所の流しで歯磨きを始めた。

「あっ、亮さんもう着替えてる」

「下にコーヒー淹れに行くからさ。さえちゃんも飲む? てか、朝メシ食う派? トーストとベーコンエッグならすぐできるよ」

「食べたい、けど、いいの? 亮さんだって疲れてるでしょ」

「若干腰はダルいけど、すこぶる快調。だから平気」

「じゃあ、お願いしていい?」

「うん。じゃあベッドで待ってて」

「ありがとう」

「そんな感謝しなくていいよ」

「亮さん、優しい」

「そんなことないよ。朝飯食わせたあと、まったりしてるさえちゃん喰うつもりだし」

「うわ、鬼畜」

「どこがだよ。普通の一般男性だろ」

 亮は換気扇をつけ、流しで煙草に火をつけると、美味そうに煙を上に向かって吐いた。

「そういえば、電子タバコじゃないですよね」

「なんかちょっと苦手で。ベープも試したんだけど、おれはこれが一番だ。嫌いな人多いけど。さえちゃんも嫌ならベランダ行くよ」

「亮さんが煙草を吸う姿を見るのも好きだから、私の好きなものを取り上げないでほしいな」

「えー。愛されてんなぁ」

 大きな手の、長くて骨ばった指に、茶色のフィルターのついた紙タバコがよく似合っている。苦みばしった紫煙の匂いも不思議と嫌じゃない。実家の父親も吸っていた。どことなく懐かしい匂いだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

女子大生家庭教師・秘密の成功報酬

芦屋 道庵 (冷月 冴 改め)
恋愛
弘前さくらは、大手企業・二村建設の専務の家に生まれた。何不自由なく育てられ、都内の国立大学に通っていたが、二十歳になった時、両親が飛行機事故で亡くなった。一転して天涯孤独の身になってしまったさくらに、二村建設社長夫人・二村玲子が救いの手を差し伸べる。二村の邸宅に住み込み、一人息子で高校三年の悠馬の家庭教師をすることになる。さくらと悠馬は幼なじみで、姉と弟のような存在だった。それを受けたさくら。玲子はさらに、秘密のミッションを提示してきた……。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...