彼がスーツに着替えたら

森野きの子

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過ぎたるは及ばざるが如し2

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 泡を洗い流して艶を増した男の肌がとても魅力的に映る。ベッドに移動して、仰向けにされ、見上げた亮はしまりのない顔をしている。
「なーにニヤニヤしてるんですかね、亮さん」
「え。ニヤニヤはしてないでしょ。こらえてるもん」
「こらえられてない」
「そりゃそうだろ。さえちゃんの裸、生で拝めて、セックスできるなんてさ、おれからしたら夢みたいだもん。大丈夫? おれ、現実と妄想の区別ついてるよね?」
「妄想の中の私はもっとスタイルが良かったんじゃない?」
「おれの妄想が、本物のさえちゃんに敵うわけないだろ」
 亮はそういうと、冴子の額や頬にキスを落とす。亮の頬に手を伸ばせば、嬉しそうに頭を振ってすりつける。その仕草に母性と乙女心が一網打尽にされる。
「やっぱり好き!」
 感極まって本音が漏れた。
「さっき変態ってドン引きしてたもんね。思い直してくれてよかったよ」
「でも、さっきのはちょっと私には上級者向けだから無理」
「おれは気にしないってとこだけ覚えててくれればいいよ」
「あと、亮さんのが入るかどうかがまだ不安」
「少しずつ慣れてってくれると嬉しいな」
「えっちな漫画みたいに亮さんのじゃなきゃ満足できない体になったらどうしよう」
「えっちな漫画。そんなん嗜まれるんですか、冴子さん」
「あっ、今のナシ!! ナシで!!」
「いや聞き捨てなりませんね。おれは実写動画派なんですけど、冴子さんのお気に入りのえっちな漫画教えてもらっていいですかね」
「お断りします。あ、お気に入りの女優さんと比べないでくださーい」
「好きな女が一番だっつうの。エロ漫画なんかよりおれがさえちゃんのこと気持ちよくするから、いいとことか好きなプレイとか教えてよ」
「え、でも、よくなったことないから説明できない」
「まじか。燃えんな。わかった。これから探していこ。あと、このまま先に進みたいのは山々なんだけど、ゴムがないから買ってきていい?」
「え、あ! もちろん」
「ごめん。もしかしてさっきシャワーの時、それが言いたかった?」
 ぶっちゃけここは『ヤリ部屋』で、コンドームは常備しているもんだと無意識に思い込んでいた。なんて言えない。曖昧に頷くと亮は笑って冴子の髪を撫でた。
「言いづらいなんてことないから、ちゃんと言ってくれて大丈夫だよ」
 と、布団から出ていく。
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