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過ぎたるは及ばざるが如し1

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 店はマンションの一階のテナントにあった。そこから上階の亮の部屋へ移った。ベッドとソファと壁掛けの液晶テレビくらいしかない、やけに生活感のない部屋だった。
 冴子の住む1Kの部屋には、ベッドと、化粧台と食卓とサイドテーブルを兼ねたローテーブル、備付けのクローゼットに入りきれなかった衣装が掛かったパイプハンガー。物は増やさないようにして慎ましく暮らしているが、キッチン周り(調味料や調理器具)やベランダの洗濯機だったりという、そんな生活感が、この部屋には全くない。
 薄ら嫌な想像が胸によぎる。ここはそういう部屋なのかも、と少し冷めつつ、久しぶりの他人の熱に、身体はすっかりその気になっている。
 なにより、ずっと想ってきた相手というのが、かなりのウエイトを占めている。今、亮の眼差しは冴子だけに注がれている。彼女に触れる指や掌からは壊れ物を扱うかのような注意深さすら感じられる。
 穿った思考はこの際、隅にしまってしまおう。冴子の戸惑いや不安さえも亮の勢いに押されていく。
 もう、大人だし。
 そんな脈絡のない言い訳を頭の中で自身にしながら、亮に服を脱がされ、口づけを受ける。互いに服を脱がせ、浴室に入った。
 シャワーで濡れた亮の身体は想像以上に筋肉質で、反り立った自身は冴子に衝撃を与えた。遠い記憶が閃光を焚いたように蘇る。人は生命の危機を感じると、過去の記憶から生存方法を手繰り寄せると聞いた事がある。冴子の理性がこれは無理なのでは、と警鐘を鳴らしている。
「冴子ちゃん……、好きだよ」
 亮は冴子の首すじから鎖骨へと唇を這わせていく。与えられる感覚が嫌ではない。だが、へその辺に押しつけられた昂りは、ほぼ凶器だ。
「亮さん、あの……」
「ん? どうした?」
「あの、その……、」
 もじもじしている間に冴子の身体は泡だらけにされている。
「えっと、あの……」
 乳房を持ちあげられ、やわやわと揉まれる。泡のすべりと乳首へのフェザータッチに神経が持っていかれる。
「あっ……、んッ、」
 ぴくんと体が跳ねる。丹田の辺りを亮の固いもので押されていると、中がきゅんと窄まるのがわかった。摘んだりせずに、泡と手のひらで乳首を転がされる。片手は太ももからおしりを撫でまわし、抱き込み、肌と肌を擦り合わせるようにして全身を洗いながら、確実に冴子の性感を刺激してくる。
「んん……っ、んう。り、亮さん……、まって」
「どうした? おしっこ?」
 子供に訊ねるようなおおらかさで言われ、再び衝撃を受けた。性感帯への刺激で蕩けていた頭がサッと起動した。
「いやっ、違う、そうじゃないの」
「そう? おしっこならここでしちゃってもいいよ」
「す、する訳ないじゃない!! お風呂場でおしっこなんか!」
「おしっこくらいでそんなムキにならなくても……」
「普通に繰り返すのやめて!」
「ごめんごめん。あ、誤解しないでね。おれ別に愛好家とかじゃないから。放尿くらいなら大丈夫ってだけで」
「変態……!」
「うそ!? 飲ませてとかかけてとか言ったわけじゃないのに?!」
「変なこと言わないで!」
「変なこと言うつもりなくて、おれはたださえちゃんに心置きなく気持ちよくなってもらおうと思って」
「でも、だからって……」
「そうか。おれの力不足だった。まずはちゃんと気持ちよくさせてからじゃないと説得力ないよね」
「いや、そうじゃなくて。私はただ、その、亮さんのソレが大きすぎてムリって言おうと……」
「そんな、大きすぎるだなんて照れるじゃん。つーか、これも人の範囲内だから」
「私の範囲内じゃない」
「じゃ今から範囲内にしていこ」
 と、冴子を抱き込み、軽いキスをする。この男を本気で嫌になれない自分が悔しい。
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