5 / 28
凍える月と熱い夜5
しおりを挟む
「え。まさかとは思いますが、私、口説かれてます?」
本気にしないように笑って見せる。が、真っ赤に染まった亮の顔を見て、冗談混じりの笑いが失せた。
「実は……、ちょっと色々あって、店をたたまなきゃなんないかも知れなくて……。いや、それより、常連の冴子ちゃんにこんな事言うべきじゃないのはわかってるんだけど、その、おれ、君のことが……」
亮はそこまで言うと手のひらで口元を押さえた。
冴子は全身が心臓になってしまったような感覚で、意識が半ば宇宙に投げ出されたように遠くなっていた。
え。嘘。亮さんが、私を口説いてる? そして、なんか、私のことが……? え、私のことが何?
「……ごめん。キモいよね。聞かなかったことに――、」
「嫌です! 今の、聞かなかったことになんかできません!」
空きっ腹でジンとリキュールはまずかったかもしれない。いつもよりずっと大胆な気分だ。亮の傍に歩み寄る。
「私だって、亮さんのこと……!」
ふと、差し込まれる理性。好きって言っていいのか、二十八歳。きっと亮もアラサーの理性が差したに違いない。好きって言う歳か? と。
「え、えーっと、じゃあ、その、まあ、なんだ……」
ンンッと亮が咳払いをする。
「おれが冴子ちゃんに触れても、問題ない?」
「む、むしろ、全然ウエルカムというか……」
思わず俯いた冴子の頬に、亮が四指を当てる。指先で耳の下のラインから顎を撫でられ、軽く持ち上げられる。されるがまま上をむくと、軽く唇を奪われた。
仕事が早い!! と内心叫んだが、同時に心のガッツポーズも決めている。
「ごめん、我慢できなくて。もっとしていい?」
返事の代わりに今度は冴子からキスをすると、強く抱き寄せられた。冴子も亮の太い首に抱きつく。
彼の我慢はどれほどのものだったのだろうか。激しさを増した口づけに、冴子の本能が掻き立てられる。舌を絡ませ合いながら、爆ぜた想いをぶつけ合う。
「わたしずっと、亮さんと、こうしてみたかった」
口づけの合間にそう零せば、蕩けていたような亮の目つきが変わった。鋭く光る眼は獲物を捕らんとする捕食者のそれだ。
「おれ、冴子ちゃんにもっと違うことしたいけど、いい?」
互いの熱い吐息がバイオレットリキュールを醸す。
本気にしないように笑って見せる。が、真っ赤に染まった亮の顔を見て、冗談混じりの笑いが失せた。
「実は……、ちょっと色々あって、店をたたまなきゃなんないかも知れなくて……。いや、それより、常連の冴子ちゃんにこんな事言うべきじゃないのはわかってるんだけど、その、おれ、君のことが……」
亮はそこまで言うと手のひらで口元を押さえた。
冴子は全身が心臓になってしまったような感覚で、意識が半ば宇宙に投げ出されたように遠くなっていた。
え。嘘。亮さんが、私を口説いてる? そして、なんか、私のことが……? え、私のことが何?
「……ごめん。キモいよね。聞かなかったことに――、」
「嫌です! 今の、聞かなかったことになんかできません!」
空きっ腹でジンとリキュールはまずかったかもしれない。いつもよりずっと大胆な気分だ。亮の傍に歩み寄る。
「私だって、亮さんのこと……!」
ふと、差し込まれる理性。好きって言っていいのか、二十八歳。きっと亮もアラサーの理性が差したに違いない。好きって言う歳か? と。
「え、えーっと、じゃあ、その、まあ、なんだ……」
ンンッと亮が咳払いをする。
「おれが冴子ちゃんに触れても、問題ない?」
「む、むしろ、全然ウエルカムというか……」
思わず俯いた冴子の頬に、亮が四指を当てる。指先で耳の下のラインから顎を撫でられ、軽く持ち上げられる。されるがまま上をむくと、軽く唇を奪われた。
仕事が早い!! と内心叫んだが、同時に心のガッツポーズも決めている。
「ごめん、我慢できなくて。もっとしていい?」
返事の代わりに今度は冴子からキスをすると、強く抱き寄せられた。冴子も亮の太い首に抱きつく。
彼の我慢はどれほどのものだったのだろうか。激しさを増した口づけに、冴子の本能が掻き立てられる。舌を絡ませ合いながら、爆ぜた想いをぶつけ合う。
「わたしずっと、亮さんと、こうしてみたかった」
口づけの合間にそう零せば、蕩けていたような亮の目つきが変わった。鋭く光る眼は獲物を捕らんとする捕食者のそれだ。
「おれ、冴子ちゃんにもっと違うことしたいけど、いい?」
互いの熱い吐息がバイオレットリキュールを醸す。
0
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
寡黙な彼は欲望を我慢している
山吹花月
恋愛
近頃態度がそっけない彼。
夜の触れ合いも淡白になった。
彼の態度の変化に浮気を疑うが、原因は真逆だったことを打ち明けられる。
「お前が可愛すぎて、抑えられないんだ」
すれ違い破局危機からの仲直りいちゃ甘らぶえっち。
◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。
【R18】寡黙で大人しいと思っていた夫の本性は獣
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
侯爵令嬢セイラの家が借金でいよいよ没落しかけた時、支援してくれたのは学生時代に好きだった寡黙で理知的な青年エドガーだった。いまや国の経済界をゆるがすほどの大富豪になっていたエドガーの見返りは、セイラとの結婚。
だけど、周囲からは爵位目当てだと言われ、それを裏付けるかのように夜の営みも淡白なものだった。しかも、彼の秘書のサラからは、エドガーと身体の関係があると告げられる。
二度目の結婚記念日、ついに業を煮やしたセイラはエドガーに離縁したいと言い放ち――?
※ムーンライト様で、日間総合1位、週間総合1位、月間短編1位をいただいた作品になります。
異常性癖者たちー三人で交わる愛のカタチー
フジトサクラ
恋愛
「あぁぁッ…しゃちょ、おねがっ、まって…」
特注サイズの大きなベッドに四つん這いになった女は、息も絶え絶えに後ろを振り返り、目に涙を浮かべて懇願する。
「ほら、自分ばかり感じていないで、ちゃんと松本のことも気持ちよくしなさい」
凛の泣き顔に己の昂りを感じながらも、律動を少し緩め、凛が先程からしがみついている男への奉仕を命じる。
ーーーーーーーーーーーーーーー
バイセクシャルの東條を慕い身をも捧げる松本と凛だが、次第に惹かれあっていく二人。
異常な三角関係だと自覚しつつも、三人で交わる快楽から誰も抜け出すことはできない。
複雑な想いを抱えながらも、それぞれの愛のカタチを築いていく…
ーーーーーーーーーーーーーーー
強引で俺様気質の東條立城(38歳)
紳士で優しい松本隼輝(35歳)
天真爛漫で甘えんぼな堂坂凛(27歳)
ドSなオトナの男2人にひたすら愛されるエロキュン要素多めです♡
孤独なメイドは、夜ごと元国王陛下に愛される 〜治験と言う名の淫らなヒメゴト〜
当麻月菜
恋愛
「さっそくだけれど、ここに座ってスカートをめくりあげて」
「はい!?」
諸般の事情で寄る辺の無い身の上になったファルナは、街で見かけた求人広告を頼りに面接を受け、とある医師のメイドになった。
ただこの医者──グリジットは、顔は良いけれど夜のお薬を開発するいかがわしい医者だった。しかも元国王陛下だった。
ファルナに与えられたお仕事は、昼はメイド(でもお仕事はほとんどナシ)で夜は治験(こっちがメイン)。
治験と言う名の大義名分の下、淫らなアレコレをしちゃう元国王陛下とメイドの、すれ違ったり、じれじれしたりする一線を越えるか超えないか微妙な夜のおはなし。
※ 2021/04/08 タイトル変更しました。
※ ただただ私(作者)がえっちい話を書きたかっただけなので、設定はふわっふわです。お許しください。
※ R18シーンには☆があります。ご注意ください。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【R18】さよなら、婚約者様
mokumoku
恋愛
婚約者ディオス様は私といるのが嫌な様子。いつもしかめっ面をしています。
ある時気付いてしまったの…私ってもしかして嫌われてる!?
それなのに会いに行ったりして…私ってなんてキモいのでしょう…!
もう自分から会いに行くのはやめよう…!
そんなこんなで悩んでいたら職場の先輩にディオス様が美しい女性兵士と恋人同士なのでは?と笑われちゃった!
なんだ!私は隠れ蓑なのね!
このなんだか身に覚えも、釣り合いも取れていない婚約は隠れ蓑に使われてるからだったんだ!と盛大に勘違いした主人公ハルヴァとディオスのすれ違いラブコメディです。
ハッピーエンド♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる