23 / 50
23
しおりを挟む
小野塚くんが途中でコンビニに寄ると言うので一緒に行き、ついでにトイレを借りて戻ると、カゴいっぱいにお酒やペットボトルのお茶、スナック菓子や惣菜が入っていた。
「そんなに買うの?」
「言うほどなくない? 井上さんも夕飯まだでしょ?」
「まだだけど……」
コンビニ価格を気にしないのか。激安スーパーに慣れきった私には衝撃だ。
「支払いしてくるから雑誌コーナーにでもいっててよ」
「私も払う」
「いいから、あっち」
と手の甲を払われた。
「あとでいくらか教えてよ」
「そういうのいいって」
とうるさそうに言われて軽く傷ついた。
雑誌はどれも店にある。漫画雑誌の表紙を眺めて、視線を移していくと、セクシーな水着姿の女の子のグラビアやそれっぽい漫画コーナーになったので目をそらす。立ち読みは気が引けるので、ブランドのオマケがついた雑誌を見比べたりしていたら、小野塚くんがやってきた。
コンビニを出て再び私の部屋を目指す。あれ? なんか、目的変わってきてない? 私の部屋を見たら帰りたくなるはずって思うんだけど。これ、普通に遊びに来てる感じじゃない? あれ? こんな趣旨だったっけ? と私が首をひねっていると、どうしたの? と不思議そうにのぞき込まれた。
「私の部屋を見たら帰りたくなるはずだって思ってる」
「そうなの? 友達と家飲みした事ないの?」
「誰かがうちにくるなんて小学校以来だもん」
「じゃあ、家飲みは初めて?」
「うちに人が来ること自体初めて」
「前もそうだったけど、井上さんは色んな初めてをおれにくれるね」
「いや、たまたまだよ」
「たまたまか」
「うん」
「おれってやっぱもってるな。幸運の星のもとに生まれてる」
「それは、なにより」
そもそも私に構おうとする人なんて、小野塚くんと、少しだけだけど、吉沢さんくらいだし。吉沢さんだって、あのアパートを見てちょっと引いていた。同情されるレベルのぼろアパートに住んでいる女。来月までに立ち退き勧告されてるし。あっ。コンビニで住宅情報誌みればよかった。
「なんか元気ないね」
「まあちょっと色々あってね」
「職場?」
「ううん。違う」
「じゃあどうしたの? なにに悩んでるの?」
「ま。色々とね」
小野塚くんは不服そうに私をみるけど、久しぶりに再会した相手に打ち明けるような内容じゃない。しばらく歩いていると見慣れた我が家が近づいきた。夜の闇が更に濃くなるような佇まい。左側にひっそりとひそんでいる。
「百年の恋も覚めるぼろアパートへようこそ」
私は冗談めかしていう。さあ、ドン引け。華麗なる一族のサラブレッドくん。
と、小野塚くんをみる。
「そんなに買うの?」
「言うほどなくない? 井上さんも夕飯まだでしょ?」
「まだだけど……」
コンビニ価格を気にしないのか。激安スーパーに慣れきった私には衝撃だ。
「支払いしてくるから雑誌コーナーにでもいっててよ」
「私も払う」
「いいから、あっち」
と手の甲を払われた。
「あとでいくらか教えてよ」
「そういうのいいって」
とうるさそうに言われて軽く傷ついた。
雑誌はどれも店にある。漫画雑誌の表紙を眺めて、視線を移していくと、セクシーな水着姿の女の子のグラビアやそれっぽい漫画コーナーになったので目をそらす。立ち読みは気が引けるので、ブランドのオマケがついた雑誌を見比べたりしていたら、小野塚くんがやってきた。
コンビニを出て再び私の部屋を目指す。あれ? なんか、目的変わってきてない? 私の部屋を見たら帰りたくなるはずって思うんだけど。これ、普通に遊びに来てる感じじゃない? あれ? こんな趣旨だったっけ? と私が首をひねっていると、どうしたの? と不思議そうにのぞき込まれた。
「私の部屋を見たら帰りたくなるはずだって思ってる」
「そうなの? 友達と家飲みした事ないの?」
「誰かがうちにくるなんて小学校以来だもん」
「じゃあ、家飲みは初めて?」
「うちに人が来ること自体初めて」
「前もそうだったけど、井上さんは色んな初めてをおれにくれるね」
「いや、たまたまだよ」
「たまたまか」
「うん」
「おれってやっぱもってるな。幸運の星のもとに生まれてる」
「それは、なにより」
そもそも私に構おうとする人なんて、小野塚くんと、少しだけだけど、吉沢さんくらいだし。吉沢さんだって、あのアパートを見てちょっと引いていた。同情されるレベルのぼろアパートに住んでいる女。来月までに立ち退き勧告されてるし。あっ。コンビニで住宅情報誌みればよかった。
「なんか元気ないね」
「まあちょっと色々あってね」
「職場?」
「ううん。違う」
「じゃあどうしたの? なにに悩んでるの?」
「ま。色々とね」
小野塚くんは不服そうに私をみるけど、久しぶりに再会した相手に打ち明けるような内容じゃない。しばらく歩いていると見慣れた我が家が近づいきた。夜の闇が更に濃くなるような佇まい。左側にひっそりとひそんでいる。
「百年の恋も覚めるぼろアパートへようこそ」
私は冗談めかしていう。さあ、ドン引け。華麗なる一族のサラブレッドくん。
と、小野塚くんをみる。
5
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる