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映えチンと魔性の子
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入学式。クラスも決まり、その自己紹介でのこと。真島劉誠は言った。
「えーっと。真島劉誠です。西三中から来ました。自分で言うのもなんですが、ちんぽがデカくて形もいいので、将来の夢はAV男優です」
それは、冗談というには、あまりにも自然だった。そして、下ネタという体では語られていなかった。ただあるべき事柄を紹介したまでだった。誰も男子の身体的ステータスを堂々と自慢されたことにも気づかなかった、ワケはないが、一瞬理解が追いつかなかった。
西三中といえば、荒れ狂った中学と有名であり、進学できるのは極わずか。しかも、ここはそこそこいい公立高校。共学で普通に彼が進学できたのは奇跡といっても過言ではない。そしてこの自己紹介である。クラス中が引いた。静まり返った空気も我関せず、真島は続けた。
「試してみたい人は気軽に声かけてくださ~い」
と、飄々と続けた。これが西三中のノリなのか……!? と噂だけ知っている生徒たちは愕然とした。担任の教師はまだ若い女性で対応に困っていた。しかし、凍りついた空気は次で一新された。
「美沢雪緒です。県外から来ました。よろしくお願いします」
入学式、以前に登校中から人目を惹いていた絵画から抜け出してきたかのような美貌の少年が、短い自己紹介をしたのだ。それで女子たちの記憶から真島の映えチンは消えた。
――――それから四年と少しが過ぎた。
おかしいだろ。真島劉誠は思った。高校三年間、ついぞ己の映えチンに女子からのオファーはこなかった。
しかし、だ。美沢雪緒は学校の王子様だった。廊下を歩いているだけで、女子たちの歓声があがった。そして、それは大学生になった今も変わらない。
なんの因果か、劉誠と美沢雪緒は同じ地元の大学に進学した。高校時代、あいつは俺よりはるかに頭がよかったはずだ、と劉誠は記憶している。
「なんであいつばっか」
校庭を横切り、昇降口へ向かってくる美沢と女子の群れを二階の廊下から眺めながら、劉誠は呟く。
「そりゃ、顔だろ」
斜め後ろから友人の桐谷祐樹が口を出す。
「俺だって悪くねぇし、ぜってぇ俺の方がチンポでけえ」
「お前、厳ついからな。あと、そのオッサンみたいなオールバックやめたがいい」
「なんでだよ、俺の自慢の額と鼻梁を見ろよ。横顔チャームポイントだろうがよ」
「お前って何気にナルシストだよな。キメェ」
「うるせぇ。つーか、あいつマジなに? 母ちゃんエステサロンの経営者ですげぇ金持ちらしいぜ。美形で金持ちとかチートすぎんだろ。だりぃ」
「僻むなよ……。ダセェ」
「同じ日本人のはずなのにこうも違うのかよ……」
「なんつーか、人種も違ぇよ。オレたちとあいつ」
「あーあ。あの群れの中の一人や二人回してくんねぇかな」
「劉誠、それでいいのかよ」
「よくねーけど、めぼしい女子全部あっちじゃね」
「女はどこにでもいるんだぜ……」
「俺はすでに彼女持ちアピールか? おん?」
「外に目を向けろよってこと」
「向けたところでバイト先のキャバ嬢くらいしかいねーよ」
「いいじゃん、キャバ嬢。見た目も中身も劉誠にピッタリじゃん」
「うるせぇ! 俺はな、踊り場で隠れてキスしたり、彼女の部屋に訪問セックスしてぇんだよ! 彼女持ちに俺の渇望がわかってたまるか! あっち行け!」
「はいはい。じゃあまた明日な~」
「おう! バイバイ! どっか行け彼女持ち!!」
劉誠は祐樹を追いやり、一人廊下を歩く。今日は朝からよく頑張った。帰ろう。
「あ。真島くん」
下から上がってきた美沢と鉢合わせる。先に声を出したのは、美沢の方だ。
「ンだよ? ゆきちゃん。俺になんか用か?」
妬みと嫉みを添え、馬鹿にしたように下の名前を呼ぶ。
「帰るの?」
「そうだよ。文句あんのか?」
「じゃあ一緒に帰っていい?」
「は?」
劉誠以上に女子の群れからブーイングが上がった。
「真島くんに相談があるんだ。いいかな?」
下からのななめ45°がクリティカルヒットし、顔面の強さを思い知らされた。
「いいよ!」
妬み嫉みフィルターさえ至近距離では耐えきれなかった。音を立てて割れた気がした。真っ向から臨んだ美沢の顔面は美の暴力だった。妬み嫉みフィルターがサングラスのような役割を果たしていたことを知った。眩しすぎて目が痛い。美は全てを凌駕する。
「真島くん、俺んちこない?」
「えっ!? なんで!?」
カノジョに言われたかったセリフを同級生(♂)に言われたにも関わらず、劉誠はドギマギした。
「ほら……、その……、相談があるって……」
頬を赤らめ伏せ目がちに言われて、とっさに叫んだ。
「いいよ!」
間抜けな『いいよ!』botが誕生した。
駅前のマンションのペントハウスに、思わずたじろいだ。
「大丈夫だよ。俺、一人暮らしなんだ。気にしないで。母や妹が東京から来るのは稀なんだ」
「えっ」
「どうぞ」
と、中に招き入れられ、変に緊張してきた。
「なにか飲む? オレンジジュース、牛乳、コーヒー、紅茶」
コーラがないのか。そう思いつつ、少し迷ってコーヒーを頼んだ。すると、雪緒はスマホで電話を始めた。
「やっぱコーラ」
劉誠がそういうと、雪緒は頷いて、コーラ二つとピザのLを二枚頼んだ。プルコギと照り焼きマヨだったので黙っていた。サイドメニューのフライドチキンとフライドポテトも文句はない。
「冷蔵庫から出てくるのかと思った」
「今、冷蔵庫になにもない」
吹き抜けのだだっ広いリビングの先にある、これまた広いキッチンに鎮座する大きな銀色の冷蔵庫を見やる。四人家族の劉誠の家の物よりふた回りくらい大きい。テレビもソファも洋画に出てくる金持ちの家のようにでかくて、毎晩ホームパーティやってます。と言われても、でしょうね。と思うような仕様だ。大きな窓ガラスの向こうは町が一望できる。しかし、地方都市なので東京のような夜景は期待できない。ただ、日の出、朝焼け、夕暮れ、マジックアワーなら最高の眺めだろう。
「ところで相談って?」
こんな所に一人暮らししていて寂しいから友達になってくれ、とか、そういうのだろう。そう言われたら、もちろん、答えは、『いいよ!』一択だ。
「うん。あのさ、オナニーするじゃん」
少年と青年の中間の絶妙なバランスの神話級の美貌から発せられる言葉とは思えないが、そういえばオナニーも神話から派生したものだ。と劉誠は半ば無理やり自らを丸め込む。
「うん?」
だが納得はいってない。理解が追いつかない。
「真島くんオナニーしない?」
「いや、する。するけど」
「それでね、俺、アナニーにハマっちゃって」
「うん? なに?」
「アナニー。知らない?」
「知らんけど」
「アナルを使ったオナニーだよ」
「え。そんな軽い調子で言う?」
「どんなトーンでいうのが正しいの?」
「なんか、もっとこう、恥ずかしくない?」
「友達とかとオナニーの話しないの?」
「いや、俺と美沢くんそんな仲深くねーだろ」
「さっきはゆきちゃんって呼んだくせに」
「いや、あれは。つーか、え、で? アナニーがなに?」
「ハマってるの。高一くらいから」
「え。歴長くない? まあ、いいや。で?」
「一度本物を挿れてみたくて。それで、真島くん、高一の時にチンポがすごいって自己紹介で言ってたじゃん」
「え。やめて。やめてやめて。言わなくていい」
「試してみたい人は気軽に声かけてくださいって」
「いや、言ったけど。女子に向けてね?」
「人って言ったじゃん」
「いや、言ったけど、男子は想定外すぎる」
「アナルセックスって気持ちいいんだって。フェラもしてあげるよ? 目ぇ瞑って女の子のこと考えてていいよ?」
雪緒がべろりと舌を出し、先を尖らせ、いやらしく動かした。艶かしい美貌に、知的好奇心ならぬ性的好奇心がむくむくと股間の辺りで湧いてきた。今の表情が焼きついて瞼の裏で反芻してしまいそうだ。
「もちろん、タダでとは言わないよ? いくら欲しい?」
「いやっ……、金とか、は、ちょっと。うーん。ちょ、ちょっと待って? ちょっと考えさせて? うーん……。うーん…………、勃ったらいいよ!」
高純度の性的好奇心と半ば自棄で答える。
「えへへ……。やった。実は三日前から準備してたんだ。まあ、ダメだったらマッチングアプリでもしようかなって思ってたんだ」
「もっと自分のアナル大事にしてあげて!? アナルは大事だぞ? ギャザーがよく締まらないと紙オムツだからな!?」
「うん。善処します」
と、言いながら劉誠の制服のスラックスに手をかけ、ベルトを解く。
「あっ、もう始まる感じ? チンポ洗ってきていい?」
「とか言って帰ったりしない?」
雪緒が冗談めかして、少しだけ震えた声で言った。
「ピザ食いてぇし、やっぱほら、フェラってどんなもんか気になるし、俺はお前で勃つのかも気になるじゃん」
と劉誠が正直に応えると、
「予想外のやる気。バスルームはこっちだよ」
と、雪緒は笑って案内した。
「―――で、どうよ? 俺のチンポ」
広いバスルームで、互いに全裸でびしょ濡れで、雪緒は膝をついて、劉誠の腰の位置に顔を近づけていた。色白の美しい顏の前に赤黒い男根。劉誠のチンポはいきり立っている。張りのある亀頭が雪緒の頬に当てられた。
「ん……。予想以上。ディルドより大っきくてかっこいい……。ンっ……」
唇に鈴口を押し当てる。雪緒はゆっくり口を開いて頬張ると、ねっとりと舌を絡めた。
「うをっ!?」
童貞には会心の一撃だった。先走りが噴射する。
「んっ……なんか出てきたよ」
うっとりとした目つきで、上目遣いに劉誠を見上げる。
「あー……悪ぃ……。想像を絶する気持ちよさで、つい」
「ふふふ。よかった」
雪緒はそう言って、再び劉誠のチンポを口に含んだ。
「ううっ……!」
劉誠は思わず雪緒の頭を両手で押さえ、わしゃわしゃと、長めの猫っ毛を撫で回した。雪緒は顔を前後させ、少し激しめのストロークを繰り返す。
「あっ、やべぇ! やべっ! イきそう! ちょっ、ちょっと待て」
雪緒の口からチンポを引き抜き、竿を握って、荒い息を繰り返す。
「やべぇ。気持ちよすぎんだろ。なんだこれ」
「気持ちよかった?」
「ああ、クソやばい。ほら、ケツ向けろ」
「え、でもまだ……」
「気持ちよくなりてーんだろ?」
「う、うん……」
「ピザ屋来たらやべぇし、挿れちまおう」
シャンプーやトリートメント置き場にローションとXLのコンドームが準備してある。
「付けてあげる」
雪緒はそういうとコンドームを開封して上手に付けた。やけに手慣れていると思うと、なんだか面白くない。しかし、これは見当違いのモヤモヤだとわかっている。わかっているが、雑に扱い、後ろを向かせて、尻をつきださせる。ローションを垂らした場所にそって指を滑らせ、アナルを探り当てる。
「いいよそんなことしなく……っ」
雪緒が拒む前に、劉誠は中指の第一関節を捩じ込んだ。
「んんっ……」
「次は雪緒が気持ちよくなる番だよなぁ?」
「俺はいいから……んぁッ……」
中指を小刻みに揺らし、なるべくほぐそうと試みるが、いかんせんこれでいいのかわからない。ぐにぐにと肉壁を探り、中指と薬指を増やす。片手で乳首も摘んでみると雪緒は背を反らしてビクンと跳ねた。
「あ”あ”ッ」
思った以上の反応にちょっとビビりながら指で中をかき混ぜる。
「あっ、ダメっ、そんなの、したことない、からぁ……」
だいぶほぐれたような気もして、次は先端を押し当て、腰を突き上げた。
「ひぅっ!」
あっさりと先端が飲み込まれて半分まで入った。柔らかく温かい。グニグニと圧迫され、負けそうだ。すでにいかされそうなのは悔しいので、腰を突き上げ打ちつける。
「あぅっあぅぅ!あっあっあっ……すごっ、真島くんのチンポすごっ、くっ、……想像よりも、ディルドよりも良すぎる……!」
動きに合わせて雪緒が声を漏らす。ん? 想像って言った? と一瞬引っかかりを感じたが、それも即座に消え失せた。劉誠は、激しく動かせば動かすほど気持ちよくなってしまい、腰が動いてしまう。学校で一番の美形が、恍惚としてチンポをしゃぶり、アナルを突き上げられて嬉しそうに喘いでいる。自己肯定感なのか、仄暗い支配欲なのか、はたまた征服欲なのか、そういったものがまとめて爆上がりする。もっと犯したい。もっとめちゃくちゃにしたい。もっとよがらせたい。しかし、実践が足りないため、今回は惨敗だ。
「あー……雪緒ごめん、いく……」
「うん。いいよ。いって」
腰を抱き込みいっそう激しく揺らし、ほどなくして動きが止まった。
「……ありがとう……」
雪緒がいうと、劉誠は顔を上げ、息も絶え絶え雪緒を見返す。
「……お前、いってねーだろ……」
「でも……」
「お前がいくまでやろうな」
「え……? い、いいの?」
「当たり前だろ! 俺だけいって情けねーだろ! 絶対俺のチンポでいかす!!」
「え、あ、ありがとう……」
来客を告げる電子音が鳴り、二人は体を離す。
「大丈夫か? 俺出ようか?」
「エントランスの開け方わかる?」
「わかんねえ」
雪緒は苦笑する。
「俺出るから大丈夫だよ」
バスルームから出て、急いで衣服を身につける。本当は拒まれて嫌悪されておしまいだと思っていた雪緒は思わず笑みを零す。
まだどうなるかわからない。それでも、リベンジ予定らしい。
「やった……!」
口の中で呟いて小さく拳を握った。
(俺は、クラスメイト相手になにを……?)
賢者タイムが訪れ、劉誠は青くなる。
(しかも、俺、早漏じゃん……。このチンポはハリボテか?)
冷たいシャワーを浴びながら冷静になろうと努める。
(てゆーか、可愛かったな……?? あれ?? てか、マジなにした俺??)
萎びたチンポからコンドームを抜く。
「ピザ来たよー」
雪緒の声がして、(ま、いっか)とチンポをすすいで劉誠もバスルームを出た。
「えーっと。真島劉誠です。西三中から来ました。自分で言うのもなんですが、ちんぽがデカくて形もいいので、将来の夢はAV男優です」
それは、冗談というには、あまりにも自然だった。そして、下ネタという体では語られていなかった。ただあるべき事柄を紹介したまでだった。誰も男子の身体的ステータスを堂々と自慢されたことにも気づかなかった、ワケはないが、一瞬理解が追いつかなかった。
西三中といえば、荒れ狂った中学と有名であり、進学できるのは極わずか。しかも、ここはそこそこいい公立高校。共学で普通に彼が進学できたのは奇跡といっても過言ではない。そしてこの自己紹介である。クラス中が引いた。静まり返った空気も我関せず、真島は続けた。
「試してみたい人は気軽に声かけてくださ~い」
と、飄々と続けた。これが西三中のノリなのか……!? と噂だけ知っている生徒たちは愕然とした。担任の教師はまだ若い女性で対応に困っていた。しかし、凍りついた空気は次で一新された。
「美沢雪緒です。県外から来ました。よろしくお願いします」
入学式、以前に登校中から人目を惹いていた絵画から抜け出してきたかのような美貌の少年が、短い自己紹介をしたのだ。それで女子たちの記憶から真島の映えチンは消えた。
――――それから四年と少しが過ぎた。
おかしいだろ。真島劉誠は思った。高校三年間、ついぞ己の映えチンに女子からのオファーはこなかった。
しかし、だ。美沢雪緒は学校の王子様だった。廊下を歩いているだけで、女子たちの歓声があがった。そして、それは大学生になった今も変わらない。
なんの因果か、劉誠と美沢雪緒は同じ地元の大学に進学した。高校時代、あいつは俺よりはるかに頭がよかったはずだ、と劉誠は記憶している。
「なんであいつばっか」
校庭を横切り、昇降口へ向かってくる美沢と女子の群れを二階の廊下から眺めながら、劉誠は呟く。
「そりゃ、顔だろ」
斜め後ろから友人の桐谷祐樹が口を出す。
「俺だって悪くねぇし、ぜってぇ俺の方がチンポでけえ」
「お前、厳ついからな。あと、そのオッサンみたいなオールバックやめたがいい」
「なんでだよ、俺の自慢の額と鼻梁を見ろよ。横顔チャームポイントだろうがよ」
「お前って何気にナルシストだよな。キメェ」
「うるせぇ。つーか、あいつマジなに? 母ちゃんエステサロンの経営者ですげぇ金持ちらしいぜ。美形で金持ちとかチートすぎんだろ。だりぃ」
「僻むなよ……。ダセェ」
「同じ日本人のはずなのにこうも違うのかよ……」
「なんつーか、人種も違ぇよ。オレたちとあいつ」
「あーあ。あの群れの中の一人や二人回してくんねぇかな」
「劉誠、それでいいのかよ」
「よくねーけど、めぼしい女子全部あっちじゃね」
「女はどこにでもいるんだぜ……」
「俺はすでに彼女持ちアピールか? おん?」
「外に目を向けろよってこと」
「向けたところでバイト先のキャバ嬢くらいしかいねーよ」
「いいじゃん、キャバ嬢。見た目も中身も劉誠にピッタリじゃん」
「うるせぇ! 俺はな、踊り場で隠れてキスしたり、彼女の部屋に訪問セックスしてぇんだよ! 彼女持ちに俺の渇望がわかってたまるか! あっち行け!」
「はいはい。じゃあまた明日な~」
「おう! バイバイ! どっか行け彼女持ち!!」
劉誠は祐樹を追いやり、一人廊下を歩く。今日は朝からよく頑張った。帰ろう。
「あ。真島くん」
下から上がってきた美沢と鉢合わせる。先に声を出したのは、美沢の方だ。
「ンだよ? ゆきちゃん。俺になんか用か?」
妬みと嫉みを添え、馬鹿にしたように下の名前を呼ぶ。
「帰るの?」
「そうだよ。文句あんのか?」
「じゃあ一緒に帰っていい?」
「は?」
劉誠以上に女子の群れからブーイングが上がった。
「真島くんに相談があるんだ。いいかな?」
下からのななめ45°がクリティカルヒットし、顔面の強さを思い知らされた。
「いいよ!」
妬み嫉みフィルターさえ至近距離では耐えきれなかった。音を立てて割れた気がした。真っ向から臨んだ美沢の顔面は美の暴力だった。妬み嫉みフィルターがサングラスのような役割を果たしていたことを知った。眩しすぎて目が痛い。美は全てを凌駕する。
「真島くん、俺んちこない?」
「えっ!? なんで!?」
カノジョに言われたかったセリフを同級生(♂)に言われたにも関わらず、劉誠はドギマギした。
「ほら……、その……、相談があるって……」
頬を赤らめ伏せ目がちに言われて、とっさに叫んだ。
「いいよ!」
間抜けな『いいよ!』botが誕生した。
駅前のマンションのペントハウスに、思わずたじろいだ。
「大丈夫だよ。俺、一人暮らしなんだ。気にしないで。母や妹が東京から来るのは稀なんだ」
「えっ」
「どうぞ」
と、中に招き入れられ、変に緊張してきた。
「なにか飲む? オレンジジュース、牛乳、コーヒー、紅茶」
コーラがないのか。そう思いつつ、少し迷ってコーヒーを頼んだ。すると、雪緒はスマホで電話を始めた。
「やっぱコーラ」
劉誠がそういうと、雪緒は頷いて、コーラ二つとピザのLを二枚頼んだ。プルコギと照り焼きマヨだったので黙っていた。サイドメニューのフライドチキンとフライドポテトも文句はない。
「冷蔵庫から出てくるのかと思った」
「今、冷蔵庫になにもない」
吹き抜けのだだっ広いリビングの先にある、これまた広いキッチンに鎮座する大きな銀色の冷蔵庫を見やる。四人家族の劉誠の家の物よりふた回りくらい大きい。テレビもソファも洋画に出てくる金持ちの家のようにでかくて、毎晩ホームパーティやってます。と言われても、でしょうね。と思うような仕様だ。大きな窓ガラスの向こうは町が一望できる。しかし、地方都市なので東京のような夜景は期待できない。ただ、日の出、朝焼け、夕暮れ、マジックアワーなら最高の眺めだろう。
「ところで相談って?」
こんな所に一人暮らししていて寂しいから友達になってくれ、とか、そういうのだろう。そう言われたら、もちろん、答えは、『いいよ!』一択だ。
「うん。あのさ、オナニーするじゃん」
少年と青年の中間の絶妙なバランスの神話級の美貌から発せられる言葉とは思えないが、そういえばオナニーも神話から派生したものだ。と劉誠は半ば無理やり自らを丸め込む。
「うん?」
だが納得はいってない。理解が追いつかない。
「真島くんオナニーしない?」
「いや、する。するけど」
「それでね、俺、アナニーにハマっちゃって」
「うん? なに?」
「アナニー。知らない?」
「知らんけど」
「アナルを使ったオナニーだよ」
「え。そんな軽い調子で言う?」
「どんなトーンでいうのが正しいの?」
「なんか、もっとこう、恥ずかしくない?」
「友達とかとオナニーの話しないの?」
「いや、俺と美沢くんそんな仲深くねーだろ」
「さっきはゆきちゃんって呼んだくせに」
「いや、あれは。つーか、え、で? アナニーがなに?」
「ハマってるの。高一くらいから」
「え。歴長くない? まあ、いいや。で?」
「一度本物を挿れてみたくて。それで、真島くん、高一の時にチンポがすごいって自己紹介で言ってたじゃん」
「え。やめて。やめてやめて。言わなくていい」
「試してみたい人は気軽に声かけてくださいって」
「いや、言ったけど。女子に向けてね?」
「人って言ったじゃん」
「いや、言ったけど、男子は想定外すぎる」
「アナルセックスって気持ちいいんだって。フェラもしてあげるよ? 目ぇ瞑って女の子のこと考えてていいよ?」
雪緒がべろりと舌を出し、先を尖らせ、いやらしく動かした。艶かしい美貌に、知的好奇心ならぬ性的好奇心がむくむくと股間の辺りで湧いてきた。今の表情が焼きついて瞼の裏で反芻してしまいそうだ。
「もちろん、タダでとは言わないよ? いくら欲しい?」
「いやっ……、金とか、は、ちょっと。うーん。ちょ、ちょっと待って? ちょっと考えさせて? うーん……。うーん…………、勃ったらいいよ!」
高純度の性的好奇心と半ば自棄で答える。
「えへへ……。やった。実は三日前から準備してたんだ。まあ、ダメだったらマッチングアプリでもしようかなって思ってたんだ」
「もっと自分のアナル大事にしてあげて!? アナルは大事だぞ? ギャザーがよく締まらないと紙オムツだからな!?」
「うん。善処します」
と、言いながら劉誠の制服のスラックスに手をかけ、ベルトを解く。
「あっ、もう始まる感じ? チンポ洗ってきていい?」
「とか言って帰ったりしない?」
雪緒が冗談めかして、少しだけ震えた声で言った。
「ピザ食いてぇし、やっぱほら、フェラってどんなもんか気になるし、俺はお前で勃つのかも気になるじゃん」
と劉誠が正直に応えると、
「予想外のやる気。バスルームはこっちだよ」
と、雪緒は笑って案内した。
「―――で、どうよ? 俺のチンポ」
広いバスルームで、互いに全裸でびしょ濡れで、雪緒は膝をついて、劉誠の腰の位置に顔を近づけていた。色白の美しい顏の前に赤黒い男根。劉誠のチンポはいきり立っている。張りのある亀頭が雪緒の頬に当てられた。
「ん……。予想以上。ディルドより大っきくてかっこいい……。ンっ……」
唇に鈴口を押し当てる。雪緒はゆっくり口を開いて頬張ると、ねっとりと舌を絡めた。
「うをっ!?」
童貞には会心の一撃だった。先走りが噴射する。
「んっ……なんか出てきたよ」
うっとりとした目つきで、上目遣いに劉誠を見上げる。
「あー……悪ぃ……。想像を絶する気持ちよさで、つい」
「ふふふ。よかった」
雪緒はそう言って、再び劉誠のチンポを口に含んだ。
「ううっ……!」
劉誠は思わず雪緒の頭を両手で押さえ、わしゃわしゃと、長めの猫っ毛を撫で回した。雪緒は顔を前後させ、少し激しめのストロークを繰り返す。
「あっ、やべぇ! やべっ! イきそう! ちょっ、ちょっと待て」
雪緒の口からチンポを引き抜き、竿を握って、荒い息を繰り返す。
「やべぇ。気持ちよすぎんだろ。なんだこれ」
「気持ちよかった?」
「ああ、クソやばい。ほら、ケツ向けろ」
「え、でもまだ……」
「気持ちよくなりてーんだろ?」
「う、うん……」
「ピザ屋来たらやべぇし、挿れちまおう」
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「付けてあげる」
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「いいよそんなことしなく……っ」
雪緒が拒む前に、劉誠は中指の第一関節を捩じ込んだ。
「んんっ……」
「次は雪緒が気持ちよくなる番だよなぁ?」
「俺はいいから……んぁッ……」
中指を小刻みに揺らし、なるべくほぐそうと試みるが、いかんせんこれでいいのかわからない。ぐにぐにと肉壁を探り、中指と薬指を増やす。片手で乳首も摘んでみると雪緒は背を反らしてビクンと跳ねた。
「あ”あ”ッ」
思った以上の反応にちょっとビビりながら指で中をかき混ぜる。
「あっ、ダメっ、そんなの、したことない、からぁ……」
だいぶほぐれたような気もして、次は先端を押し当て、腰を突き上げた。
「ひぅっ!」
あっさりと先端が飲み込まれて半分まで入った。柔らかく温かい。グニグニと圧迫され、負けそうだ。すでにいかされそうなのは悔しいので、腰を突き上げ打ちつける。
「あぅっあぅぅ!あっあっあっ……すごっ、真島くんのチンポすごっ、くっ、……想像よりも、ディルドよりも良すぎる……!」
動きに合わせて雪緒が声を漏らす。ん? 想像って言った? と一瞬引っかかりを感じたが、それも即座に消え失せた。劉誠は、激しく動かせば動かすほど気持ちよくなってしまい、腰が動いてしまう。学校で一番の美形が、恍惚としてチンポをしゃぶり、アナルを突き上げられて嬉しそうに喘いでいる。自己肯定感なのか、仄暗い支配欲なのか、はたまた征服欲なのか、そういったものがまとめて爆上がりする。もっと犯したい。もっとめちゃくちゃにしたい。もっとよがらせたい。しかし、実践が足りないため、今回は惨敗だ。
「あー……雪緒ごめん、いく……」
「うん。いいよ。いって」
腰を抱き込みいっそう激しく揺らし、ほどなくして動きが止まった。
「……ありがとう……」
雪緒がいうと、劉誠は顔を上げ、息も絶え絶え雪緒を見返す。
「……お前、いってねーだろ……」
「でも……」
「お前がいくまでやろうな」
「え……? い、いいの?」
「当たり前だろ! 俺だけいって情けねーだろ! 絶対俺のチンポでいかす!!」
「え、あ、ありがとう……」
来客を告げる電子音が鳴り、二人は体を離す。
「大丈夫か? 俺出ようか?」
「エントランスの開け方わかる?」
「わかんねえ」
雪緒は苦笑する。
「俺出るから大丈夫だよ」
バスルームから出て、急いで衣服を身につける。本当は拒まれて嫌悪されておしまいだと思っていた雪緒は思わず笑みを零す。
まだどうなるかわからない。それでも、リベンジ予定らしい。
「やった……!」
口の中で呟いて小さく拳を握った。
(俺は、クラスメイト相手になにを……?)
賢者タイムが訪れ、劉誠は青くなる。
(しかも、俺、早漏じゃん……。このチンポはハリボテか?)
冷たいシャワーを浴びながら冷静になろうと努める。
(てゆーか、可愛かったな……?? あれ?? てか、マジなにした俺??)
萎びたチンポからコンドームを抜く。
「ピザ来たよー」
雪緒の声がして、(ま、いっか)とチンポをすすいで劉誠もバスルームを出た。
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