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助ける方法
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カーソンさんが駆け込んできたのはそれからしばらくしてのことだった。ベッドの上で抱き合う僕たちを見てギョッとしたように目を見張った。
「申し訳ありません。お邪魔でしたか」
カチャリと眼鏡を直したカーソンさんが視線を逸らす。その反応に慌てて首を横に振った。
「いえっ、全くもってそんなことはありません! これはあのっ、殿下が目を覚ましたので、嬉しくてついっ」
「そうですか。それは何よりです」
カーソンさんはそう言った後、少し考えるように黙ってから再び口を開いた。
「殿下のご容体を確認させていただきたいのですが、よろしいですか?」
「あっ、はい、もちろんです! すみません、すぐどきますので」
「……どこに行く」
慌ててベッドから下りようとした僕に、ムッとしたように殿下が胸板から顔を上げた。
目の冴えるような美青年に上目遣いで見つめられて、ドキッと心臓が跳ねた。じわじわと顔中に熱が集まっていくのがわかる。情けない顔を見られたくなくて、ぎゅっと殿下の頭を腕に抱き込んだ。
「大丈夫です! カーソンさんに診てもらったら、またすぐに戻ってきますので」
「……俺を謀るなよ」
「はい、約束します!」
「わかった」
僕の熱意が伝わったのか、フェリクス殿下は渋々といった様子で頷いてくれた。その隙に僕は殿下のベッドから転がり落ちるように抜け出して、診察の邪魔にならないように廊下に出た。
しばらくして、カーソンさんが扉から顔を覗かせた。
何かを確認するように辺りをキョロキョロと見回して、慎重な足取りで廊下に出た。
「あの……」
「ああ、すみません。近くに人がいないか確認していました」
「少し前までユルゲンさんがいてくれましたけど、今はもう宿舎に戻られたと思います」
「それは良かった。彼もこの数日寝ずに立ち番をしていましたからね。私が何度休息を取るように言っても聞く耳を持ちませんでしたが、やはり聖女様の言うことならば素直に聞くと言うことでしょうか」
「あ、いえ、僕だけでは難しかったので、近衛騎士団の方に協力していただいてなんとか……」
半ば強引に宿舎に連れて行かれたユルゲンさんの姿を思い出すとちょっと胸が痛む。
苦笑いする僕に事情を察してくれたのか、カーソンさんは何も言わずに頷いた。
二人きりの廊下にしんとした沈黙が流れる。先に口を開いたのはカーソンさんの方だった。
「殿下のご容体は安定しています。この分であれば、数日以内に体力は全快するでしょう」
「そうですか。はぁ、良かったぁ……」
「問題は魔力です。一度に多くの魔力を消費したことで、一時的に魔力回路に異常をきたしているようです。本来であれば自己回復するはずの魔力が、なんらかの要因によって回復を妨げられているようですね」
「このままだと、殿下の魔力は回復しないってことですか?」
「魔力回路を修復すれば問題はないかと。とはいえ、魔法に関してはその希少さゆえに不明瞭な部分が多いのです。修復にはかなりの時間を要するでしょう」
「そんな……それまでフェリクス殿下はずっと寝たきりの状態になってしまうんですか?」
「いえ、体力が戻れば日常生活は問題なく送れるでしょう。ですが、魔力が枯渇した状態ではいつまた倒れられてもおかしくはありません」
カーソンさんが難しい顔をして目を閉じた。頭痛がするのか、眼鏡をとって眉間を揉んでいる。
しばらくそうして何かを考えあぐねている様子だったカーソンさんが、意を決したように僕を見た。
「一つだけ、確実かつ最短で魔力を回復する方法があります」
「本当ですか!?」
「はい。ただ、この方法は聖女様にもご負担をお掛けすることになるかと。精神的にも身体的にも、相当な覚悟がなければ耐えられないでしょう」
「僕は大丈夫です。フェリクス殿下のためならなんでもします」
迷いはなかった。即答した僕に、難しい顔をしていたカーソンさんがわずかに目を見張った。
「よろしいのですね?」
「はい。教えてください。僕は何をすればいいんですか?」
「……性交渉です」
「へ?」
聞き間違いだろうか。思わずポカンと口を開けてしまった僕を見て、カーソンさんは淡々と説明を続けた。
「より正確に言うのなら、性交による魔力の譲渡です」
カーソンさんの冷静さに、聞き間違いではないのだと察した。
「魔法を扱える人間はごく一部ですが、魔力自体は誰もが持っています。それは誰もが生まれながらにして魔力回路と呼ばれる器官を持っているからです。この器官は、臓器のように外部からの干渉で機能を左右されることがありません。常に働き続けているのです」
「えっと、つまり?」
「魔力を回復させる方法は二通りあります。一つは安静にしていること。これはフェリクス殿下がされていたことですが、今の殿下では自然回復は臨めないでしょう。二つ目として、魔力を含んだ体液を摂取することです」
「体液……」
「唾液や血液など、種類は問わず魔力を摂取することができます。最も効率的な方法としては、精液による摂取です。他の体液に比べ、精液に含まれる魔力は純度が高く、かつ摂取効率が良いとされています」
まるでどこぞのエッチなゲームのような設定だ。
カーソンさんの生々しい説明に、頰が熱くなっていくのを感じた。
「ですが、これには大きな問題があります」
ごくりと唾を飲む音がやけに大きく聞こえた。
「申し訳ありません。お邪魔でしたか」
カチャリと眼鏡を直したカーソンさんが視線を逸らす。その反応に慌てて首を横に振った。
「いえっ、全くもってそんなことはありません! これはあのっ、殿下が目を覚ましたので、嬉しくてついっ」
「そうですか。それは何よりです」
カーソンさんはそう言った後、少し考えるように黙ってから再び口を開いた。
「殿下のご容体を確認させていただきたいのですが、よろしいですか?」
「あっ、はい、もちろんです! すみません、すぐどきますので」
「……どこに行く」
慌ててベッドから下りようとした僕に、ムッとしたように殿下が胸板から顔を上げた。
目の冴えるような美青年に上目遣いで見つめられて、ドキッと心臓が跳ねた。じわじわと顔中に熱が集まっていくのがわかる。情けない顔を見られたくなくて、ぎゅっと殿下の頭を腕に抱き込んだ。
「大丈夫です! カーソンさんに診てもらったら、またすぐに戻ってきますので」
「……俺を謀るなよ」
「はい、約束します!」
「わかった」
僕の熱意が伝わったのか、フェリクス殿下は渋々といった様子で頷いてくれた。その隙に僕は殿下のベッドから転がり落ちるように抜け出して、診察の邪魔にならないように廊下に出た。
しばらくして、カーソンさんが扉から顔を覗かせた。
何かを確認するように辺りをキョロキョロと見回して、慎重な足取りで廊下に出た。
「あの……」
「ああ、すみません。近くに人がいないか確認していました」
「少し前までユルゲンさんがいてくれましたけど、今はもう宿舎に戻られたと思います」
「それは良かった。彼もこの数日寝ずに立ち番をしていましたからね。私が何度休息を取るように言っても聞く耳を持ちませんでしたが、やはり聖女様の言うことならば素直に聞くと言うことでしょうか」
「あ、いえ、僕だけでは難しかったので、近衛騎士団の方に協力していただいてなんとか……」
半ば強引に宿舎に連れて行かれたユルゲンさんの姿を思い出すとちょっと胸が痛む。
苦笑いする僕に事情を察してくれたのか、カーソンさんは何も言わずに頷いた。
二人きりの廊下にしんとした沈黙が流れる。先に口を開いたのはカーソンさんの方だった。
「殿下のご容体は安定しています。この分であれば、数日以内に体力は全快するでしょう」
「そうですか。はぁ、良かったぁ……」
「問題は魔力です。一度に多くの魔力を消費したことで、一時的に魔力回路に異常をきたしているようです。本来であれば自己回復するはずの魔力が、なんらかの要因によって回復を妨げられているようですね」
「このままだと、殿下の魔力は回復しないってことですか?」
「魔力回路を修復すれば問題はないかと。とはいえ、魔法に関してはその希少さゆえに不明瞭な部分が多いのです。修復にはかなりの時間を要するでしょう」
「そんな……それまでフェリクス殿下はずっと寝たきりの状態になってしまうんですか?」
「いえ、体力が戻れば日常生活は問題なく送れるでしょう。ですが、魔力が枯渇した状態ではいつまた倒れられてもおかしくはありません」
カーソンさんが難しい顔をして目を閉じた。頭痛がするのか、眼鏡をとって眉間を揉んでいる。
しばらくそうして何かを考えあぐねている様子だったカーソンさんが、意を決したように僕を見た。
「一つだけ、確実かつ最短で魔力を回復する方法があります」
「本当ですか!?」
「はい。ただ、この方法は聖女様にもご負担をお掛けすることになるかと。精神的にも身体的にも、相当な覚悟がなければ耐えられないでしょう」
「僕は大丈夫です。フェリクス殿下のためならなんでもします」
迷いはなかった。即答した僕に、難しい顔をしていたカーソンさんがわずかに目を見張った。
「よろしいのですね?」
「はい。教えてください。僕は何をすればいいんですか?」
「……性交渉です」
「へ?」
聞き間違いだろうか。思わずポカンと口を開けてしまった僕を見て、カーソンさんは淡々と説明を続けた。
「より正確に言うのなら、性交による魔力の譲渡です」
カーソンさんの冷静さに、聞き間違いではないのだと察した。
「魔法を扱える人間はごく一部ですが、魔力自体は誰もが持っています。それは誰もが生まれながらにして魔力回路と呼ばれる器官を持っているからです。この器官は、臓器のように外部からの干渉で機能を左右されることがありません。常に働き続けているのです」
「えっと、つまり?」
「魔力を回復させる方法は二通りあります。一つは安静にしていること。これはフェリクス殿下がされていたことですが、今の殿下では自然回復は臨めないでしょう。二つ目として、魔力を含んだ体液を摂取することです」
「体液……」
「唾液や血液など、種類は問わず魔力を摂取することができます。最も効率的な方法としては、精液による摂取です。他の体液に比べ、精液に含まれる魔力は純度が高く、かつ摂取効率が良いとされています」
まるでどこぞのエッチなゲームのような設定だ。
カーソンさんの生々しい説明に、頰が熱くなっていくのを感じた。
「ですが、これには大きな問題があります」
ごくりと唾を飲む音がやけに大きく聞こえた。
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