103 / 106
第9章 霧雨家
第43話 能力
しおりを挟む
「霧雨一族には代々、『神がかりな力』が宿った。時代が時代なら支配者として君臨したが、その力を恐れた人々に迫害された時もあった。『魔女狩り』のようにな」
いやいやいや、そんな陰謀論なんかどうでもいいから、『レインフォール』なる家名について詳しく教えてよ! なんで、『ファラウェイ・ワールド・オンライン』のユニークウェポンの名前と同じなの? 偶然?
などと言い出す雰囲気ではないので、大人しく話の続きを聞く。
「自己紹介がまだだったな。私の名前は霧雨浩人。これでも、霧雨一族の宗家当主だ。ちなみに、お前をさらってきた男達も、やはり一族の血筋だ」
「じゃあ、親戚? 親戚が、なぜこんなことを?」
「それは、お前の…お前達の今の両親が、一族に敵対し始めたからだ。その強力な力を用いてな」
え、ウチの両親、人外だったの!? 私もこんなだし、拓也くんだけが家族で仲間はずれだよ! 普通のVRゲーマーで良かったね! うん、ちょっと混乱している。
「強力な…力?」
「一族の力にはいろいろあるが、お前達の両親は共に『暗示』、すなわち、精神に干渉する力。それは、多くの人間を思い通りに操れる」
「思い、通りに…」
「ひとつの都市くらいなら、週に一度の干渉で、議員選挙の結果を決定づけることも可能だ」
なにそれ、世論操作ができるってこと!? うわあ、現代でそれはとんでもないよ!
「ひとりでもそれが可能であるのに、ふたり共に同レベルの能力だ。従兄弟同士だったこともあって小さい頃から気が合い、その能力を一族のためにふんだんに発揮してきた」
従兄弟同士だったことも初耳だけど、昔から一族のためにって…。
「宇宙開発促進の世論操作は効果的だった。一族が所有している企業群は、月や小惑星帯の資源を欲していたからな。工場と労働者の移転を進めたい国々にもな。だが、ここ数年は…」
そう、『仮想世界へのフルダイブ』が流行っている。その影響か、宇宙旅行どころか、国内外を問わず普通の旅行や移住までもが減少しているのだ。私達は、その昔どの学校でも実施されていたという『修学旅行』を経験していない。
「それもこれも、お前達の両親が世論操作をやめるどころか、仮想世界の促進を進めるような操作をしているからだ」
「じゃあ、今、あなた達が待ち構えているのは」
「お前達の今の両親、霧雨大志と霧雨由良だ。無理矢理にでも、理由を聞く。これまで、その力でずっと接触さえできない状況だ」
うーん、どういう感じなんだろう、お父さんとお母さんの力って。もしかして、私や拓也くんも今まで精神操作されていた? でも、こうして聞いた後も、さっぱり心当たりが…。
ガチャ
「あらー、美奈子に全部話しちゃったわよ、この宗家のぼっちゃま」
「昔から本当に変わらんな、この子は」
「若くして当主となるよう、言い聞かされてきたからかしらねえ」
…えっと、お父さんとお母さんが、ふつーに部屋に入ってきたんですけど。しかも、立ち聞きしてた? さっきの人達はどうしたの?
「ふたりとも、いつここに?」
「ああ、美奈子、やっぱりあなたには効いてないのね」
「素性がわからず、能力の無効も原因不明のまま、一族のことを知られてしまうとはな」
「はあ」
「…なんだ? 急に扉を見て、喋り出して」
え、もしかして、その『力』とかいうの使ってるの? この、霧雨浩人って人に。
「そうだな、VRゲーム風に言えば『認識阻害』というやつかな? 浩人くんには、私達の姿や声どころか、存在自体が認識できない」
「『盲点』の応用? 特定のものを見たり聞いたりすること自体、できなくしてるの」
「だから、お前が私達と話していても、彼は不審に思うことはあれど、私達がここに存在すること自体、思い至らないのだよ」
いえ、ゲームの認識阻害は、そんな凶悪なものではありません。せいぜい、存在をあいまいにするとか、ステータス偽装とか。『コナミ・サキ』だって、存在自体を変えてるわけじゃないし。確かに、これは『神がかり』だわ。
「はあ…。とにかく、その力を使うのをやめて…あ、それはまずい。すぐに機動隊が来るんだっけ」
「そうなのよ…って、美奈子、なぜそれを!?」
「機動隊だと!? おい、どういうことだ!」
「暗号化された警察無線の傍受は、我々『隠密派』でも厳しいのに、なぜ…!?」
ああ、いろいろこんがらがった。さて、一番簡単なのは…。
『…あー、姉さん、今、いいか?』
『なに? 拓也くんにも、私が見聞きしていたイメージが伝わっているよね?』
『ああうん、それはありがたかった。それでだな、ユリシーズさんから「緊急クエスト」が入ってんだよ』
『こんな状況で!?』
『いや、この状況を解決するための指示なんだわ、これが』
ということは…『NPC制御システム』が?
いやいやいや、そんな陰謀論なんかどうでもいいから、『レインフォール』なる家名について詳しく教えてよ! なんで、『ファラウェイ・ワールド・オンライン』のユニークウェポンの名前と同じなの? 偶然?
などと言い出す雰囲気ではないので、大人しく話の続きを聞く。
「自己紹介がまだだったな。私の名前は霧雨浩人。これでも、霧雨一族の宗家当主だ。ちなみに、お前をさらってきた男達も、やはり一族の血筋だ」
「じゃあ、親戚? 親戚が、なぜこんなことを?」
「それは、お前の…お前達の今の両親が、一族に敵対し始めたからだ。その強力な力を用いてな」
え、ウチの両親、人外だったの!? 私もこんなだし、拓也くんだけが家族で仲間はずれだよ! 普通のVRゲーマーで良かったね! うん、ちょっと混乱している。
「強力な…力?」
「一族の力にはいろいろあるが、お前達の両親は共に『暗示』、すなわち、精神に干渉する力。それは、多くの人間を思い通りに操れる」
「思い、通りに…」
「ひとつの都市くらいなら、週に一度の干渉で、議員選挙の結果を決定づけることも可能だ」
なにそれ、世論操作ができるってこと!? うわあ、現代でそれはとんでもないよ!
「ひとりでもそれが可能であるのに、ふたり共に同レベルの能力だ。従兄弟同士だったこともあって小さい頃から気が合い、その能力を一族のためにふんだんに発揮してきた」
従兄弟同士だったことも初耳だけど、昔から一族のためにって…。
「宇宙開発促進の世論操作は効果的だった。一族が所有している企業群は、月や小惑星帯の資源を欲していたからな。工場と労働者の移転を進めたい国々にもな。だが、ここ数年は…」
そう、『仮想世界へのフルダイブ』が流行っている。その影響か、宇宙旅行どころか、国内外を問わず普通の旅行や移住までもが減少しているのだ。私達は、その昔どの学校でも実施されていたという『修学旅行』を経験していない。
「それもこれも、お前達の両親が世論操作をやめるどころか、仮想世界の促進を進めるような操作をしているからだ」
「じゃあ、今、あなた達が待ち構えているのは」
「お前達の今の両親、霧雨大志と霧雨由良だ。無理矢理にでも、理由を聞く。これまで、その力でずっと接触さえできない状況だ」
うーん、どういう感じなんだろう、お父さんとお母さんの力って。もしかして、私や拓也くんも今まで精神操作されていた? でも、こうして聞いた後も、さっぱり心当たりが…。
ガチャ
「あらー、美奈子に全部話しちゃったわよ、この宗家のぼっちゃま」
「昔から本当に変わらんな、この子は」
「若くして当主となるよう、言い聞かされてきたからかしらねえ」
…えっと、お父さんとお母さんが、ふつーに部屋に入ってきたんですけど。しかも、立ち聞きしてた? さっきの人達はどうしたの?
「ふたりとも、いつここに?」
「ああ、美奈子、やっぱりあなたには効いてないのね」
「素性がわからず、能力の無効も原因不明のまま、一族のことを知られてしまうとはな」
「はあ」
「…なんだ? 急に扉を見て、喋り出して」
え、もしかして、その『力』とかいうの使ってるの? この、霧雨浩人って人に。
「そうだな、VRゲーム風に言えば『認識阻害』というやつかな? 浩人くんには、私達の姿や声どころか、存在自体が認識できない」
「『盲点』の応用? 特定のものを見たり聞いたりすること自体、できなくしてるの」
「だから、お前が私達と話していても、彼は不審に思うことはあれど、私達がここに存在すること自体、思い至らないのだよ」
いえ、ゲームの認識阻害は、そんな凶悪なものではありません。せいぜい、存在をあいまいにするとか、ステータス偽装とか。『コナミ・サキ』だって、存在自体を変えてるわけじゃないし。確かに、これは『神がかり』だわ。
「はあ…。とにかく、その力を使うのをやめて…あ、それはまずい。すぐに機動隊が来るんだっけ」
「そうなのよ…って、美奈子、なぜそれを!?」
「機動隊だと!? おい、どういうことだ!」
「暗号化された警察無線の傍受は、我々『隠密派』でも厳しいのに、なぜ…!?」
ああ、いろいろこんがらがった。さて、一番簡単なのは…。
『…あー、姉さん、今、いいか?』
『なに? 拓也くんにも、私が見聞きしていたイメージが伝わっているよね?』
『ああうん、それはありがたかった。それでだな、ユリシーズさんから「緊急クエスト」が入ってんだよ』
『こんな状況で!?』
『いや、この状況を解決するための指示なんだわ、これが』
ということは…『NPC制御システム』が?
0
お気に入りに追加
363
あなたにおすすめの小説
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!
夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ)
安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると
めちゃめちゃ強かった!
気軽に読めるので、暇つぶしに是非!
涙あり、笑いあり
シリアスなおとぼけ冒険譚!
異世界ラブ冒険ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる